未分類0杯, 電車, 非日常

行きたいな、と思いつつも、年末だしな、と自重していたのだが、直前になってスケジュール的には問題なく行けることに気が付いた。そしてそのとき己は非常に疲れ切っていた。脳が爆発しそうだった。そこで己を鼓舞するため急遽チケットを購入した。何とか、眼前に人参をぶら下げることで乗り切ろうとしたのである。

そういった経緯で、今年最後のライブは「電車」となったのだった。

電車のセッションに行ったのは2011年の1月3日。正月に死体洗いのアルバイトの歌や自爆テロの歌、鳥葬の歌、男女の別れの歌を聴き、今年は年の瀬にそれを聴く。場所は同じ吉祥寺のSTAR PINE’S CAFE。ただし今回はセッションではなく、電車という「バンド」の演奏だ。ついに今日、本物の電車による、電車の曲を聴けたのである。

電車はゆる~い雰囲気で、のんびりだらだら進行しつつ、曲に入ると途端に空気が切り替わるのが実に面白い。この点、筋少より顕著である。筋少はMCでゆるゆるだらだらしていても、「ステージ上」であり、「見せるための姿を演じる」気構えが多少はあるように見えるのだが、電車はそれが少なく見えた。より素に近く、肩の力が抜けているように感じられた。

さて、曲のそれぞれにも語りたいが、まずはセットリストの方を。


電車の猛勉強
夢見るショック!仏小僧

OUTSIDERS
死体のこもれび(新東京正義乃士のカバー)

テロルおじさん
ほうろう(小坂忠のカバー)
人間のバラード(筋肉少女帯のカバー)

生まれてビックリ団
パーマのブルース

星屑と赤い闇のブルース
とん平のヘイ・ユウ・ブルース(左とん平のカバー)

喰らわれた女の歌
アタイばっか
包丁とマンジュウ(スターリンのカバー)

~アンコール~

お別れの背景


「テロルおじさん」「ほうろう」「人間のバラード」のあたりの並びはやや記憶が曖昧で、正直自信が無いのだが、他は合っているはず、である。

ステージでは下手からサトケンさん、オーケン、ベラさんが並び、オーケンの前には譜面台が置かれ、背後にはドラムの小畑ポンプさん。さらにその後ろがステージへの出入り口になっているようだった。ステージ前には客席用の椅子が並べられているが、全員分は無く、客の半数は立ち見となる。また、二階もあり、上からステージを見下ろすことも出来る構造となっていた。己は一回の椅子席のやや後ろに並んで立ち、開演前には缶のエビスビールを呑んでいた。天井にはミラーボール。何故かミラーボールを囲むように羽飾りが飾られていた。

客電が落とされ、メンバーが登場すると同時に始まる「電車の猛勉強」。ヘビィなサウンドの上で「べーんきょっ」と平仮名で歌うオーケンがキュートである。今回のライブでは譜面台があるおかげか、歌詞間違いが少ないようだった。とはいえ、たまに舌が回っていない場面もあったが。それはそれでご愛嬌である。

二曲目でいきなり「夢見るショック!仏小僧」と暗黒ナンバーへ。あぁ、電車のライブに来ているのだなぁと実感する場面だった。続いて大好きな「OUTSIDERS」に、死体洗いのアルバイトの歌「死体のこもれび」。「死体のこもれび」を聴いているとき、胸が締め付けられるような思いがした。電車セッションのときにこの曲を聴いたときはこんなに苦しくならなかったのになぁ、と寂しく感じた。

ちなみに今回のライブにおける自分の中でのハイライトは「生まれてビックリ団」「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」「お別れの背景」である。中でもすごかったのが「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」だ。

何故ならこの曲、自分は飽きているのである。オーケンのお気に入りだが、お気に入りと知っているが、自分はそこまで思い入れが無いだけに、悪いとは思うが「またか」と思ってしまうのである。どちらかと言うとオーケンのオリジナル歌詞を聴きたいなぁ、と思ってしまうのである。しかし、今日はすごかった。

この曲をやる前のMCで、サトケンさんがベースだけのCDを今日の物販で販売していて、それがついに九枚目、毎年作っているから今年で九年目になるという話が出ていた。ベースだけのCDとはいったいどんなものだろうと興味を覚えつつ、頭に浮かんだのは「はなわ」であった。いや、無論ベースだけと言うことは歌も無いことはわかっているのだが、ついつい連想してしまったのである。

そのMCの後のヘイ・ユウ・ブルース。「ヘイユウワッチュアネーム!」と叫ぶオーケンの一声から始まり進行していく。序盤は通常通りである。しかし中盤で変化が起こった。

いつの間にか。オーケンとベラさんがいなくなり、ステージ前方にはサトケンさんだけ。そしてサトケンさんが一人、延々とベースソロを奏で続けるのである。自分はあまり、ベースソロを聴いたことが無い。音楽が好きというもののひたすら筋少を聴いている人間で、その筋少はベースソロがほとんど無い。サンフランシスコに少しある程度である。だから知らなかったのだ。ベースがこんなにも多彩な音色を奏でられるということを。

呆気にとられながら聴き入っていた。そしてベースを奏で切ったサトケンさんがステージを去る。すると次は小畑さんのターンになり、怒涛のドラムソロが始まった。これもまた格好良かった。一つ一つの音が重く、何て言えば良いのだろう。パンチというよりも、厚い平手を喰らうような、そんな音なのだ。ベシンと体に張り付くような衝撃があった。

ヘイ・ユウ・ブルースの演奏中であることを忘れそうになったとき、オーケンとベラさんが戻ってきて、終局へと向かっていった。飽きを感じていただけに、今回のヘイ・ユウ・ブルースは素晴らしかったなぁ。

「生まれてビックリ団」は、筋少で言えば「ゾロ目」の序盤のように、ゆったりと歌い上げるように始まり、しばらくそのまま続いたので、アレンジバージョンかと思った。これも良いが、あのスピード感のある「生まれてビックリ団」も聴きたかったなぁ、と思っていると。「恋してビックリだ、キスしてビックリだ、ふられてビックリだ、切なくてビックリだ」まで歌いきってから曲調が変わり、怒涛のように駆け抜けていくのである。オーケンの声も歌い上げるものから叫ぶものに変わり、そのギャップがまた非常に格好良かった。

「お別れの背景」はとりわけ良かった。そもそも思い入れのある大好きな曲なのでやってくれるだけで嬉しいのだが、オーケンの歌声が素晴らしく良かったのだ。序盤のMCで、いろいろあって疲れているので最後の二曲目あたりで目覚める、と冗談を言っていて、本編ラストの「包丁とマンジュウ」で「目が覚めたぜー!」と叫んでいた。無論冗談だろうとは思うが、その後の「お別れの背景」で、最後にも関わらず、この日一番声が出ていたのである。今日は最初から咽喉の調子が良いようだったが、最後が一番すごかったのだ。

そして嬉しかったのが。CDでは声を張り上げる箇所を、ライブでは声を落として歌う、というのはオーケンに限らず少なくないことだろう。それを否定する気は無い。だが、やっぱりCDと同じように歌ってくれると嬉しくて、「お別れの背景」は、限りなくオリジナルに近い歌い方だったのである。ちょっと歌詞は間違えていたけれども。

最後の最後にこれだからたまらない。嬉しかったなぁ。

時間の割りに曲数が少ないのはトークが長かったから。ちょこちょことトークが挟まれ、そのたびにオーケンがちょこちょこ椅子に座って休み、小畑さん、ベラさん、サトケンさんによる電車ツアーの振り返りがあったり、今後の予定について語られたりと皆が楽しそうにしているのが微笑ましかった。

面白かったのは今度、THUNDER YOU POISON VIPERと対バンする告知がなされたくだりで、小畑さんから「サンダーユーはインストなんでしょ?」と聞かれたオーケンが、「インスト」を「いいひと」と聞き間違え、どのように答えるべきか、極悪人と言うわけにも行かないし、と悩んでいた場面。それとオーケンのおじいちゃん化現象が進んでいること。物の名前が出てこなくなったり、ツアー先のホテルで部屋の鍵を開けられず「開け~開け~」と唱えながら鍵をガチャガチャやっている姿がベラさんにより目撃されたという。

それに対しオーケンは、2015年はいきなり若返る、プラセンタ打ったりなんかして、と冗談を飛ばし、未来の最終形オーケンがアンドロイドならぬロボットに成り果てていたり。ロボット化やプラセンタは流石に困るが、たまに鍛えたりダイエットしたりしつつ、のほほんとライブを続けてくれると嬉しい。今日のライブの余韻に浸りつつ、来年を楽しみに待ちながら帰路についた。

楽しかった。これが己のライブ納めである。



未分類0杯, インストアイベント, 電車, 非日常

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タワーレコード渋谷店で開催された、電車のサインお渡し会に行ってきた。電車の新譜を対象店舗で購入するとイベント参加券がもらえるが、観覧自体は誰でも自由に出来て、整理番号も特になく、ゆる~い雰囲気だった。自分は十一月の中旬に電車のCDを購入したため、まさか参加券が手に入るとは思っていなかったが、イベント当日も参加券は配布されているようだった。

タワーレコードの入り口正面のモニターには電車のイベント告知がドーンとなされていて、おじさん四人がちょこんとベンチに並んで座っている姿が大映しになっているのは妙に味わい深い。イベントスペースに入ると既に人が並んでいたので、自分は左端の前から三列目あたりに立った。店内には電車の新譜「そうだ、電車聞こう」がエンドレスで流れている。電車の音楽をこうして外で聴くのは何だか不思議な感じだ。

イベント開始前には壇上に椅子が用意されていたが、開始直前に椅子が回収され、マイクが調節された。これはもしかして背の高い椅子を用意してくれるのだろうか、後ろの観客にも見えるように気を遣ってくれるなんてありがたいなぁと思っていたら、何と! 代わりの椅子は用意されないまま電車のメンバーが入場! ずっと立ったままでトークライブを行ってくれた。これはありがたい。おかげでメンバー全員の姿をしっかり観ることが出来た。サービス精神に感謝である。

そうそう、三人と書いたが、今回残念なことにポンプさんはのっぴきならない事情で来られなくなってしまったそうだ。よってメンバーは大槻ケンヂ、石塚BERA伯広、佐藤研二の三人。立ち位置は上手からベラさん、オーケン、サトケンさんの順である。開始直後もオーケンから「ポンプさんはのっぴきならない事情で来られなくなりましたが、脱線したわけではありません」とフォローが入った。なるほど、電車の場合脱退ではなく脱線になるのか…。

トークライブでは、電車の結成に至る経緯や名前の変遷について。ちょうどオーケンがソロ活動をしていた頃に電車が結成されたが、当時は「大槻ケンヂと野球」だったが、いつの間にか「電車」になっていたそうだ。何故「野球」が「電車」になってしまったのかと言うと、ベラさん曰く、ポンプさんが間違えてそのままになってしまったとのことだ。

しかし! サトケンさんからここで歴史の修正が入る。間違えたのはポンプさんではなくサトケンさんで、何故かサトケンさんがいつからか「野球」を「電車」と思いこんでしまい、「すごく電車感が出てるよ!」などと何度も言ってしまったため、他のメンバーが指摘出来なくなってしまい、そのまま「電車」で定着してしまったのではないか、ということだった。そうなのか。バンド名とはこんな調子で決まってしまうこともあるのか…。

そういえば自分の位置からは見えなかったのだが、開始早々オーケンが何かを倒すか落とすかして、「やると思ったんだよね~」と言いながら回収していたが、あれは何だったのだろう。進行表か歌詞カードだろうか。

面白かったのが電車復活の経緯。ベラさんとポンプさんはイベント「ベラポンプアワー」でたびたび電車の曲をやっていて、ベラさんは電車を復活させたいと思っていた。そこでオーケンのマネージャーと連絡を取り、電車復活の話を進めたという。そしてオーケンはマネージャーから「電車復活するよ」と聞かされ、当事者にも関わらず「そうなんだ」と思い、レコーディングが始まったとのことである。オーケン、二日で十曲歌わされたそうだ。

これから開催されるツアーの話では、電車のライブではどのように盛り上がれば良いか、椅子は用意するのか立つのか、など。オーケンが冗談で、椅子を前方にだけ用意して、お客さんが変わりばんこで座っていくのはどうだろう、といった話をし、「でもこういうことをしたら馬鹿にしてるって、Twitterが炎上するんだよ」と笑っていた。

そこからだっただろうか? Twitterと携帯電話の話になって、オーケンは自身がガラケー所有者であることを話し、いかに最近のガラケーの機能が削ぎ落とされているか熱弁していた。Twitterも出来ないし自撮り機能も付いていないとのこと。

ここでサトケンさん、「自撮り」を「地鶏」と勘違いし、何故携帯電話にニワトリが…と不思議に思ったそうで、オーケンに「携帯電話が卵を産むの?」なることを言われて突っ込まれていた。ちなみにオーケンサトケンさんがガラケーで、ベラさんはスマートフォンユーザーとのことである。

あとそうだ。過去に行った電車のライブの話で、水木しげるとイベントか何かで共演した、という話もあった。そのイベントには京極夏彦も出ていたという。いったいどんな組み合わせなんだ。

歌詞についてオーケンが、自分で言うのも何だけどこの頃の歌詞はすごく良く出来ていると絶賛していて、ベラさんとポンプさんが嬉しそうにしていたのが印象的だった。そうだよなぁ。自分のバンドの歌詞を作詞者本人が気に入っていたら嬉しいよな。

今後のレコーディングについての話も少しされた。一応、念の為書いておくが、レコーディングをして新譜を作ります、という告知では無い。サトケンさんが、次にレコーディングをするときはオーケンもギターを弾きなよ、ギター大好きでしょと言い、オーケンが断りつつも、どこか嬉しそうで、冗談かもしれないが「じゃあそうしましょう」と答えていたのが微笑ましかった。

ライブは「OUTSIDERS」と「お別れの背景」が演奏された。どちらもとても聴きたかった曲なので嬉しかった。特に「お別れの背景」は筋少以外のオーケンの歌詞で、もしかしたら一番好きかもしれない曲なのだ。いつかのベラポンプアワーで聴けたときも歓喜したが、今日も思わず大喜びしてしまって、ノリノリになって聴いてしまった。

トークライブの後はサインお渡し会で、いったんメンバーが壇上から去っていった。そしてスタッフが現れ、お渡し会用のセッティングを進めていく。壇上に長机と椅子が用意されるのを眺めているとアナウンス。何とびっくり。メンバーと順番に握手が出来て、尚且つサイン色紙を手渡ししてもらえるとのこと。てっきり、サインはスタッフから渡されるものと思っていただけにこれには驚いた。無論心の準備など何もしていない。

たった五日前の日曜日に筋少メンバーと握手して、その直後に電車メンバーと握手。何だこれ。己の人生に何が起こったんだと思わざるを得ない。

面白いのは筋少握手会は金属探知機で身体検査を受け、メンバー一人一人に「剥がし役」が付き、ちょっとでも流れが滞ると肩を押されて次の人に回される厳しさだったのに、電車は剥がす人もおらず、ゆる~く会話をしながら握手をしてサインをもらって、ゆる~く流れていったこと。わりとゆっくりと会話をすることが出来て感無量だった。

まずベラさんと握手をして電車復活の喜びを伝えた。このとき、念願の「お別れの背景」が聴けたうえ、サインお渡し会で握手も出来るとわかり、自分はかなり喜びまくっていたらしく、気付かぬうちに体がルンルンと左右に揺れていたのだが、サトケンさんがニコニコしながら同じリズムで体を揺らしてくれ、そのとき初めて自分が浮かれまくっていたことに気付き、喜びまくりながらサトケンさんと握手をしたのだった。サトケンさん、良い人だなぁ。

サインを渡してくれるのはオーケンで、握手をした手はやはり筋少握手会のときと同じように冷たかった。オーケンにも電車が復活してくれて嬉しいという気持ちを伝え、会話を交わし、サイン色紙を受け取って列から離れた。夢のような気分だった。

サイン色紙を胸に抱え、他の方々が握手をしている姿を眺めた。ゆるやかに握手の列が進行していく様は微笑ましく、歓喜しながら列を離れていく人々の間を、ただCDを買いに来たタワーレコードのお客が通り過ぎていく温度差が面白い。最後の握手が終わった後には壇上で電車メンバーの写真が撮影され、挨拶の後終了。浮かれまくった自分はその足でビックカメラに行き、ハイテンションのままウォークマンの新型とスピーカーを購入して、幸福な気持ちで帰路についたのだった。所有のウォークマンとスピーカーは使い倒した挙句電池は持たなくなるわボリュームコントロールは壊れるわと散々な様子だったので、せっかくなので新しいものに買い替え、ストレスなく大好きな音楽を楽しもうと思ったのである。

ウォークマンには早速、所有の音楽を全部突っ込んだ。またこのウォークマンと付き合いながら、四六時中大好きな音楽を楽しんでいこうと思う。電車復活、嬉しいな。



未分類電車, 非日常

初詣にも行っていないのに初ライブに行ってきた。昨日幼馴染と遊んだとき、そいつは明日御祓いに行くと言っていたので、ついでにこちらの分も祓っといてもらえないかと頼んであっさりと却下されてしまったのだが、そうして御祓いもせず辿り着いた先が吉祥寺のSTAR PINE’S CAFE、ライブタイトルは「小畑ポンプ芸歴20周年記念興行第弐弾【電車セッション おかわりの回 フューチャリングただすけ】」だ。そして内容はと言うと、年の初めから死体に鳥葬に失恋に植物人間、御祓いどころか穢れも倍増な大変素晴らしい曲目であった。

以下、やや曖昧なセットリストである。

クレイジーケンバンドの「オレの話を聴け~」という歌
アタイばっか

あのこが遊びにくる前に
喰らわれた女の歌
死体のこもれび

パティー・サワディー

(ぽんすけ曲一曲目/空と雲と君と(?))
(ぽんすけ曲二曲目)

ヨロコビとカラスミ
夢見るショック!仏小僧

お別れの背景
OUTSIDERS

人間のバラード

~アンコール~

電車のヘイ・ユウ・ブルース
アザナエル

ところで今回、己は夜から予定があるため十八時にはライブハウスを出なければならなかった。しかし開場は十四時。開演は十五時。タイムリミットは十八時だが、三時間もあれば何とかなるだろう。せいぜい二時間半といったところではなかろうか、と読んでいた。読んでいたのだが、甘かった。

大変名残惜しかったがアンコール一曲目のヘイ・ユウ・ブルース途中で己は退場し、ライブハウスを後にした。最後までいたかったが仕方が無い。だが致し方の無いことだ。さしもの己もMCがこんなにたっぷりあるなんて予測することは不可能だ!

小畑ポンプさんがメインのイベントでこのようなことを言うのもいかがなことかと思うが、それでもあえて言うならば、MCならぬトークタイムはゲストが盛りだくさんののほほん学校を見ているようでもあった。今回セッションメンバーが五人だったのだが、うち三人が喋る喋る。そして二人も振られれば喋る喋る。演奏そのものよりもMCの時間の方が長かったのではないかと思うほどである。結局、ライブは三時間ちょっと行われたそうだが、その間演奏されたのは十五曲前後である。普段の筋少のライブは長くても二十曲やって二時間半といったところだ。筋少のMCも決して短くは無い。いかにMCが長かったかおわかりいただけるかと思う。

トークは抜群に面白く、わっはっはっはと笑いながら聴いてはいたが、今回ばかりはタイムリミットがあったので、後半は特に早く曲を! 早く曲を! と願いながら時計を見つつハラハラしていた。これでアンコールラストの曲がお別れの背景だったら己は涙を流していたかもしれない。

と、言うほどに楽しみにしていて、今日やってくれんかなやってくれんかなと期待して、イントロを聴いて大喜びしたのが「お別れの背景」なのである。お別れの背景が聴きたくてこのライブに来たと言っても過言では無い。筋少以外のオーケンの曲で、一、二を争うほど好きな曲なのだ。これを聴けて本当に良かった。一度生で聴きたいと思っていたのだ。嬉しかった。嬉しかったなぁ。

「お別れの背景」はとある恋人同士の二人組みが街へと出かけ、楽隊が歌い紙吹雪が舞い、ファンファーレが鳴り怒声が飛び交う華やかで騒々しい人ごみの中で、ひっそりと繋いだ手を離してお別れをするという曲だ。これの一番と二番の対比、称えられる英雄と怒声を浴びせられる罪人の描写が悲しい。そして何より切ないのは、英雄が昔人を殺したこと、罪人が昔人を愛したことを知っていながら、「だけどもういいじゃないか」と突き放すように、共に泣いたり笑ったりした恋人も、他人として思い出の中に消えていくことだ。「僕達」が「僕と元恋人」になる瞬間が描かれている曲なのである。

感無量の一曲だった。ここからOUTSIDERSに繋がるのがまた、切なくて良かったなぁ。OUTSIDERSを聴く度に感じるのはオーケンのマイノリティへの優しさだ。それは守ってあげようとしたり、権利をあげようとしたりするのとは違う、ただ存在を認識するという形の優しさだ。力強さは無く、やるせないばかりだが、やるせなさに同調してくれる。だからと言って慰めてはくれない距離感が実にオーケンらしいと思う。

今回初めて聴いたのは「あのこが遊びにくる前に」と「死体のこもれび」である。初めてというのはライブで初めてでは無く、本当に初めてという意味だ。というのも自分は電車のアルバムはライブ盤である電車英雄しか聴いていないからである。では何故二枚のオリジナルアルバム「電車トーマソ」と「勉強」を聴いていないかと言えば、持っていないからである。持っていない理由はと言うと、廃盤になっているからである。

あぁ、思えば筋少が再結成する前のこと。まだ筋少のアルバムを集めきる前で、筋少以外のアルバムにはさして興味が無かった頃。あの頃、タワレコで、棚に刺さった電車のアルバムを手にとって「うーん筋少じゃないんじゃなぁ」とレジに持って行かずにそっと棚に戻した自分の行動を思い返すと、何てもったいないことをしているのだと説教してやりたくもなるが、出会いにはタイミングがあること、悔いたところで仕方が無いことも理解しており、それでも、あぁもったいないことをした、と思わずにはいられない複雑な心境。次の出会いはいつだろうか。

閑話休題。この初めて聴いた二曲だが、特に「死体のこもれび」がすごかった。妖しい迫力のある曲で、キラキラしたキーボードの音が気味の悪さを強調し、それでいて優しく美しいのだ。これを聴いてますますオリジナルアルバムが欲しくなってしまった。中古屋を一所懸命回って探さなければならないな。

電車は筋少とも特撮ともまた一風変わった、オーケンが言うところの「ひねくれた」曲が多い。切なさともの悲しさと、やるせなさと妖しさと、優しさと気味の悪さが渾然一体となり、異様な迫力を持ってふらついている。言うまでもなく正月らしさは微塵も無い。が、紅白や正月特番バラエティの浮ついた華やかさにも少々飽きてきたのも事実。御節も良いけどカレーもね。一月三日に電車のライブを観るのはなかなかちょうど良いタイミングの毒の処方と言えるだろう。

MCの方でも毒の効いた発言があったなぁ。今年の正月、餅を食べて死んだ人間が東京都だけでも六人いるという話になったとき、オーケンが「正月に餅を食べるのは、昔からのそういう、人口の調節というか、正月に老人を殺そうみたいな」というような危ない発言をしていて笑えた。

そして今回、MCで大いに盛り上がったのがアルフィーの話題である。キーボードのただすけさんはアルフィーのキーボードもしており、そういった繋がりでアルフィーの話が出てきたのだが、アルフィーはライブ中に物販の販売を促進するためにコントをやるのだそうである。そうである、と言いつつ自分は妹がアルフィーファンであるため、そういった話は聞いたこともあったのだが、まさか一回のライブで二十分近くもコントの時間があるとは思わず、驚いた。ちなみに台本は高見沢さん作だそうである。

その流れで、アルフィーほどの大御所だってここまで物販に力を入れているんだから筋少も何かしなくてはいけない、筋少も最近ライブ中に物販のためのコーナーを作ったが、メンバー個人の物販を槍玉に挙げてネタにしたらそちらばかりが売れてしまって、筋少物販の売り上げは上がらなかった、なんて話をしていた。

あと、アルフィーがライブ中にコントをやる話を聞いたり、アニメの世界のライブを観たりしたことで、ライブってのは何をやっても良いのだと気付かされた、なんて話もしていたかな。その気付きが今後のライブに反映されることはあるのだろうか。コントが導入されたらどうしよう。

これもまたアルフィー関連で。ライブ中のコントの話から、オーケンが有頂天もライブ中に芝居があり、筋少のおいちゃんも有頂天に在籍していたのだが、いつの間にかギターを弾く時間よりも芝居の稽古をする時間の方が長くなり、それが嫌になって有頂天を辞めたという、一部で有名な話をしていた。そういえば有頂天もまだ聴いたことが無いんだよなぁ。

ライブの始まりはクレイジーケンバンドの「おれのはなしをきけ~」という歌詞の歌を一人ステージに登場したポンプさんが歌い、曲が流れる中で他メンバーが登場、全員揃って配置につき、中央に立ったオーケンがまた「おれのはなしをきけ~」と歌うという、ちょっと変わった演出だった。オーケンが今年最初にステージで歌った歌はクレイジーケンバンドだそうである。おれのはなしをきけ~。

ライブハウスは一階と二階に分かれていて、一階にも二階にも丸いテーブルと椅子が置いてあり、食べたり飲んだりしながらライブを観られるようになっていた。カップに入ったコーヒーなどを飲めるのが普段のライブハウスと違ったところか。とはいえ己はいつものようにハイネケンを呑んでいたのだが。後ろの方の番号だったため、見えるかどうか心配だったが、段差があったおかげで見晴らしも良く、耳も目もしっかり満喫することが出来た。スタンディングも好きだが、こういうまったり楽しめるのも良いものだよな。楽しかった。