ライブが終わってからの数時間が好きだ。心地よい疲れに僅かなアルコールが体にしみて、心はふわふわとライブハウスの世界を引きずっている。現実と非現実の境をたゆたうような気持ちよさ。あぁ、幸せだなぁ。
本日観てきたライブはレピッシュと筋少の対バンライブ、正式名称「MUSUIC DAY 2010 SATURDAY NIGHT R&R SHOW 2010~SPECIAL Vol.2 supported by ぴあ LA-PPISCH / 筋肉少女帯」である。長いな。
筋少と別のバンドが対バンするライブを観るのは初めてだ。いつも筋少のワンマンばっかり観てるからなぁ。対バンだとどんな違いがあるのだろう。やっぱりセットリストは定番曲で行くのかな。レピッシュはどんな曲をやるんだろうなぁ、「レピッシュ」「make」「フラワー」しか聴いてないけど大丈夫だろうか。「COMPLEX」や「ガンジー」「三本辻の少女たち」やらんかな。サイクリングは絶対にやるよなー! 水戸さんゲストで来てくれないかなー。などなどなど考えつつ、思いっきり大胆に阿呆のように道に迷って後、SHIBUYA-AXに到着した。
いや…タカをくくって地図を持たずに来た自分が悪いんだが…。それでも開場一時間十五分前に到着したんだが…。準備が良いのか悪いのかさっぱりわからん。しかもだ。一度C.C.Lemonホール近くまで来た後、ぐねぐね歩いて東急ハンズまで戻り、携帯電話で地図を検索して思いっきり大回りをしてまたC.C.Lemonホールまで歩き、やっと目的地であるSHIBUYA-AXに辿り着いた。自分は頭が悪いのだと思う。
さて、先日ののほほん学校とブログで「早めに来てね」とオーケンが言っていたが何かあるのだろうか、ってだから開場の一時間十五分も前に来たってわけじゃないのだが、結果道の途中で試供品のポテトチップスをもらうことができた。わーい。
特にこれといったサプライズなどは無かったので、多分あれは筋少が先に出ることを言いたかったのだろう、と今になって思う。今回チケットの整理番号は三百番代後半。自分の基準ではかなり良い方だ。これは良いところで観られそうだなとわくわくしつつ、コーラを飲んだりそこらをぶらぶら歩いたりして時間を潰した。
そして筋少では内田さん、レピッシュではMAGUMIさんの正面前から三列目あたりの位置をとることができ、楽しくライブは終了した。……あー楽しかったー!!
やっぱりサイクリングやったー! アンコールでゲストに水戸さん来たー!
平成二十二年にまさかのポコチンロック! 話だけは聴いたことがあったがまさかこの目で見られるとは!
MAGUMIさんすげー! 四十六歳とは思えない動き! ジャンプ! 上半身裸! まさかの客席ダイブ! 初めてダイブ見た! しかもこの手で運んだー!!
つーか歌うたってトランペット吹くってすげぇ! 肺活量すげぇ!
マジック・ブルー・ケイスにCOMPLEXににハーメルンにプレゼント! 嬉しいなー!
橘高さんのピックシャワー、おいちゃんのペットボトルシャワー、MAGUMIさんのダイブを一度のライブで! ピックは取れなかったものの見るだけでも楽しかった!
「第二富士ホテル~♪」聴けたーー!!
とりあえず一番叫びたいところを叫んで満足した。さ、冷静に書くか。
セットリストはおぼろげだ。今回はあまり自信が無い。レピッシュを観ている間に忘れてしまったのだ。
イワンのばか
日本印度化計画
ロシアンルーレット・マイライフ
人間嫌いの歌
新人バンドのテーマ
元祖高木ブー伝説
アウェー イン ザ ライフ
踊るダメ人間
釈迦
レピッシュの方は知らない曲が半分くらいあったから、知ってる曲だけ順不同に。
COMPLEX
パヤパヤ
マジック・ブルー・ケイス
美代ちゃんの×××
ハーメルン
プレゼント
そしてアンコールではゲストに水戸さんを迎えてサイクリング! 十九時開演で終了は二十一時四十分頃。二時間半近くやったかな。
入場してから開演を待つまでの時間をどう過ごすかがいつも問題になるのだが、今回は近くにいた集団が二階席のファンキーさんに手を振ったりしていて面白かったので退屈せずにすんだ。そうかそうか、ファンキーさんも観に来てたのか。
照明が落ちると膨らむ期待感、それを叶えられる歓喜の心。メンバーがステージに現れ送られる声援! 一曲目はいきなりイワンのばか! うっわ最初から飛ばす気かー!?
と思ったら一曲目のイワン終了後いきなりMCが長々と。これが長かった! 十分以上喋ってたのではなかろうか。だが今回のMCはレピッシュと筋少の関係やポコチンロックの名前の由来、バンドブームにあったことなどを面白おかしく説明するという、当時を知らない若者や、片方のバンドだけ知っている人間に対して大変親切なMCだった。
「ゴールデンウィークにこんなところ来ちゃって! 今日以外の連休を持て余してるんでしょ?」「どう道を間違えたのか若い人もこんなところに…」と言って若者に向けたコールをし、コールが返って来た直後「年寄りは返事するなーー!!」と絶叫して笑いをとったり、ここらへんが最初のMCだったかな。
普段の筋少よりも曲と曲の間にちょっとしたMCがちょこちょこ入ったのはレピッシュファンに曲の説明をするためだろう。「良かったら一緒に盛り上がってくださいね」というオーケンのスタンスの表れだと思う。
レピッシュと筋少の関係は似たような時期にデビューして、何かのフェスで一緒になり、レピッシュは移動のバスでずっと「第二富士ホテル~♪」と歌って盛り上がっていて筋少側はげんなりしていたが、レピッシュと言えば「第二富士ホテル~♪」というほど印象に残っていた、しかし後に内田さんが恭一さんと一緒にバンドをやったときにその話をしたら「覚えとらん」と言われてショックだった、という話である。
ポコチンロックは、バンドブームの時代にやたらと「何とかロック」とカテゴライズすることが流行り、それに反発して「俺たちはポコチンロックだ!」と二人のキチガイ(レピッシュのMAGUMIさんとアンジーの水戸さん)が言い出して、それに筋少のキチガイ(オーケン)が乗っかったものであるそうだ。そしてポコチンロックのテーマなるものが手拍子つきであるのだが、オーケンが手拍子をしたことで当時を知っていた観客による手拍子が広がり始めてそのテーマ曲が歌われそうになると、「やめろー! 大人なんだから!」と必死な顔をして止めだした。笑った。
定番の日本印度化計画で盛り上げ、新たな定番曲であるロシアンルーレット・マイライフで。この曲の終わりの方でオーケンが入るところを間違えて「いっくよー!」と言ってしまったのだが、ここがすごかった。何がすごいってオーケンが間違えてもメンバーは全く動じてないのである。特に内田さんの平静さったら無かった。目の前で見てたから尚更印象深かった。「えっ?」と反射的に振り向くことすらしない。すげぇな。これくらいはアクシデントのうちに入らないのか。「いっくよー!」の掛け声に客席も含めて誰もついてこないって。すごいものを見た。
ロシアンのアウトロに入る前、オーケンが退場するふりをして、エディがライライ歌いだすと戻ってくるって構図はお決まりのようだ。そうそう、エディと言えばだ。あのポコチンロックの説明はポコチンロックを知らないエディに向けてしたもので、その会話を客席に見せるという形だったのだが、その時のエディのリアクションがいちいちオーバーで面白かった。ところで全く関係ないが、いったい何回ポコチンって打ってるんだよ今日の自分は。今日だけで今までの人生で使用した回数を突破したんじゃなかろうか。
そのうえさらにまだ打つぞ。ロシアンのお次は人間嫌い。ロシアンの後に曲をやるってのは珍しいなぁ、と思いつつン、タン、ンタタンと手拍子をしていると、一人オーケンだけ手拍子ができていない。タイミングがわからなくなったのか内田さんにやり方を聞いている。手拍子をしつつ様子を眺めているとオーケンが手拍子を再開した。しかし、おや、何かリズムが違うぞ。これは……ポコチンロックのテーマの手拍子だー!
さっきやめろと言ったばかりのくせに!
ポコチンロックのテーマを客に歌わせようとするオーケン。だが自分の周りでは照れていたのか、恥ずかしいのか、あまり声に出している人はいなかった。後ろの方はどうだったろう。
MCに入り、筋少が一度活動休止をした旨をレピッシュファンに説明し、「三分ほどの歌にまとめました」と前置きをして新人バンドのテーマへ。「新曲なんか聴きたくない~♪ 昔の曲をやってくれ~♪」と「パパ、ママどこ行くの~♪ うそ、やだ、若くない~♪」のところでドッと笑いが起きてた。何となく自分のことのように嬉しい。
年齢の話では、オーケンがアラフィフをオーバーフィフティと言い間違えたり、この中では若い方と言ったらあまり変わらないと内田さんに突っ込まれ、学年が違う、学年が違うことは重要だ、と力説していた。あと何か高城剛がキモいとかキモくないとか、話のネタはわからないが、若い女の子と結婚したんだか手を出したんだか、その系統のネタだったように思う。そして「キモいキモい言うアラフィフって」と自虐に走り、客席を煽ったりしていた。
高木ブー伝説は久しぶりに聴いたなー。聞き飽きた気もしていたが、改めてじっくり聴くと間奏が格好良くて好きだ。アウェー イン ザ ライフもだんだんノリ方がわかってきた。インザライフ!!
踊るダメ人間前にダメジャンプの元ネタ、Xの話をし、ガーッと盛り上がってそのまま釈迦へ。定番で固めたセットリストは久しぶりだったが、これはこれでなかなか。曲数は少ないながらもアコースティックも混ぜてきて、構成自体はいつもと変わらない。人間嫌いあたりで楽器を持ってない内田さんがオーケンにいじられてたっけ、そう言えば。
ところで今日の筋少は最前付近にも関わらずいつもより押しが少なく、苦しさを感じない程度に余裕があった。ふむ、対バンだからいつもとノリが違うのかな。ところがだ。
筋少が終了しレピッシュの始まりを待つ間、だんだんと人が前へ前へとつめてきた。あぁ、レピッシュファンが前の方に来たのだなと一人納得していたが、始まった途端すっげぇ押し! いつもの最前付近での雰囲気がいきなり再現され、うわああああああああああ!! 盛り上がりがすげええええ!!
そういや筋少のコーラス部分を合唱する人が自分の周りは少なかったような気がする。しゃららしゃかしゃかー、とか。つまりだ。位置的にややアウェーだったらしいのである。なるほど。
知ってる曲と知らない曲が半々くらいだが、今までのライブで見たことのない楽器、トランペットが演奏されるだけで何やら物珍しく、楽しい気分になれた。そして知ってる曲が間にやってくるとテンションが上がるわけだ! COMPLEXが聴けて嬉しいなー! コンプレックス! コンプレックス! コンプレックスまーみーれーっ!! 拳を振り上げてコーラス部分を合唱できた! 楽しい!
筋少はちょくちょくMCを挟んでいたのに比べ、レピッシュはMCが少なく、激しい曲を続けて演奏するので体感的によりハードに感じられた。また客の盛り上がりがすごい! MAGUMIさんがダイブしてからさらにヒートアップした印象を受ける。そりゃあボーカルがダイブして盛り上がらないわけがないからな! いやー負けないようにするのが大変だった。
MCでは「筋少の後だと普段着に見える」、アンプを指差して「うちのあのちっこいの…」と橘高さんの壁のようなマーシャルと比較して笑いをとって、恭一さんが「俺にとっては大きい方」と話したり、などがあった。普段着と言うか、筋少の後にレピッシュメンバーを見たとき自分は「まともな大人の格好だ…」と、つい、思った。つい。つい、な。
ハーメルン、プレゼントはしっとりと聴いた。この二曲は上田現トリビュートにも収録されている曲で、アルバムの中でも気に入っていただけに今回聴けて本当に嬉しかった。ハーメルンはオリジナルとBUCK-TICK版では歌詞が違うんだよな。子供達を連れて行こうとするMAGUMIさんの手つきが妖しかった。
レピッシュ退場後、アンコールの拍手が鳴り響き、歓声を受けて先にステージに現れたのはレピッシュ、そしてMAGUMIさんのコールにより筋少登場、そして! 前ふりに前ふりを重ねついに! ポコチンロックの一人、アンジーの水戸華之介の登場だー! やったー! 水戸さんだー!!
またオーケンがわざとらしく驚いて、「今までどこにいたんですか!」「ずっと話してたじゃない!」と漫才を繰り広げ、さっきMAGUMIさんがダイブした時、帰ってきたらMAGUMIさんじゃなくて水戸さんだった! なんてことになったら面白かったのにとオーケンが話して受けて、次にやるときはそうしよう、なーんて冗談が飛ばされていた。
この三組が揃って演奏されるのは言わずもがな、サイクリングである。MAGUMIさん曰く、アンコールらしい曲じゃないんだけどとのことだがそれも良し! 曲はレピッシュオリジナル版、ギターソロは橘高さん、って感じかな? オーケンと内田さんは下手の本城さん側に行き、水戸さんは目の前へ! 今日はいろいろな人を満遍なく見られて良いなぁ。
サイクリングの、曲が展開するにつれて、ドロドロというか、混ざっていくというか、混沌としていく怪しさが好きだ。おいちゃんと内田さんは楽器を持たずコーラスに専念。三人のボーカリストがマイクを握って熱唱しつつ歩き回る。迫力だ。
惜しむらくはもう一曲、せっかく水戸さんが来てくれたんだからアンコールでやって欲しかったなぁとも思うが、その「もう一口欲しい」と感じるところも含めて良いライブだったと思う。帰り道、レピッシュファンが高木ブー伝説を聴けて喜んでいる会話が聞こえて、これもまた対バンライブの楽しみの一つだな、なんてことを思ったりした。
そうだそうだ。CDの売れない時代だから、筋少ファンもレピッシュファンも互いのバンドのCDを買うようにしましょう、筋少ファンとレピッシュファンはCDの貸し借り禁止! とオーケンが話していた。ははは。いや、売れない云々は笑えないんだけどね。時代が変わったとはいえ寂しいものだなぁ。