伝説のブラック菩薩が出演するということで、花小金井のライブハウスで催されたHanakoganei Jamに行ってきた。
ブラック菩薩とはブラックサバスのコピーバンドで、橘高さんのMCによると、筋少に遅刻魔(橘高さん)が一人いて、遅刻魔(橘高さん)が来るのを待つ間暇つぶしにベーシストの内田さんがギターでブラックサバスのコピーなどを始め、いつの間にかリフを覚えた内田さんに遅刻魔(橘高さん)が、「俺、歌おうか?」と申し出てブラック菩薩は結成された、らしい。
このブラック菩薩、昔パワーステーションでもお披露目をしたことがあるのだが、本気になってやりすぎてついに「ブラック菩薩」という名のオリジナル曲まで作ってしまい、オーケンに「君達最近(本気になりすぎていて)面白くないよ」なる旨のことを言われて活動は休止したそうである。しかしここらへん記憶が曖昧なのであまり正確ではないと思う。
さて、ガタンゴトンと電車に揺られ、ライブハウスのサイトに載っていた大変親切な地図を片手に歩くと、何と目的のライブハウスは住宅地のど真ん中にあり、そのライブハウスもまるで民家を改造したかのような外観だった。音漏れの心配はないのだろうか。
まぁ自分が心配したところでしょうがないか。しばらく外で待って後にチケットの整理番号順に入場することができた。中に入るとミネラルウォーターかバドワイザーのどちらかを受け取るようにと差し出され、迷わずバドワイザーを受け取って奥へと進み、列に並んだが今開けてもゴミの始末に困るのでビールは鞄の中にしまった。
ところで今回、初めて自分はワンマン以外のライブに参加した。ライブバーX.Y.Z.→Aのライブを除いて、今まで筋肉少女帯のワンマンライブにしか行ったことがないため新鮮な体験である。また、ブラックサバスは一応ベストアルバムを一枚予習してはきたものの、たった一枚なのでまだまだ知らない曲の方が圧倒的に多い。さらに他のバンドも知らないバンドで、いつもの「知ってるバンドが知ってる曲をやるライブ」とは全然違うので、ちゃんと充分楽しめるだろうかといくらか気にかかっていた。
ちなみに今回の出演バンドはこちらである。
うりん坊
藤本組
Purple Rosa
ブラック菩薩
開場から開演までの一時間が長い。ライブは楽しいがこの待ち時間がいつもしんどいなぁ、とライブに行く度思う。だが、今回は隣の方が気さくに話しかけてくださったためいつもより時間が流れるのを早く感じた。その方はヘドバンのしすぎで首が鍛えられて太くなったのだそうだ。ヘドバンで首を痛める話はよく聞くが鍛えられるってのはすげぇ。
最初のバンドはうりん坊というレインボーのコピーバンドだ。幕が取り去られるのと同時に何やら聞き覚えのある音楽が流れ、何だろうと思っていたらディズニーのSomewhere Over The Rainbowだった、と思ったが家に帰って調べてみたらディズニーじゃなくてオズの魔法使いだったぜ! まったく己の脳みその何とあてにならないことよ。
二つ目の藤本組は、「他のバンドはレインボーとか、コンセプトがあるけれど、我々には特にない」といった意味合いのことを語り、いろいろなバンドの曲をやった。このバンドが一番多く演奏していたはずだ。六曲かな?
二つまで終わり、知らないバンドの知らない曲でも演奏がかっこよければ嬉しいし楽しいし愉快な気持ちになれて来て良かったものだと感じたが、しかしだ。一つのバンドが終わり次のバンドに移るまでの待ち時間が長い。いちいち開演前のような状態に戻るのがつらかった。待ってる間もおもしろMCが聞けるわけでもないものなぁ。何か、こう、いっそ落語でも大音量で流したらいーんじゃね? などと馬鹿なことを考えてステージの準備が整うのを待っていた。足もこのライブでは跳んだり跳ねたりするようなことがなく、上半身でリズムをとり、下半身はほぼ棒立ち状態であったためふくらはぎの部分がつっぱって痛かった。ただ立ってるより動いた方が楽だよね。
三つ目のPurple Rosaはディープパープルのコピーバンドで、ボーカルは特撮でサボートベースを務めた高橋竜さんである。名前は知っていたものの特撮のライブには行ったことがなかったので初めて生でその姿を見たのだが、初めて見たのがベースを弾く姿ではなく歌う姿だってんだから面白い。特撮繋がりということでMCでオーケンネタが少し出た。「ボーカルは間奏のとき何をしてればいいんですかと筋肉少女帯のボーカルの人に尋ねたら、ヌンチャクを振り回してればいいよと言われたけど、ヌンチャク持ってきてないし、できないよ!」ってな感じ。面白かった。そういえばこのバンドの開演前に、幕の向こうからSmoke On The Waterの世界一有名なリフが流れたとき、客が「おっぱーい!」と叫んだ。べ、べ、べーべべーべべー、おっぱーい! あぁ懐かしのCCレモン、ルリヲ前でのオーケンギター披露会。オッパイマンの歌も一度きちんと聴いてみたいものである。いや、そこまで本気で聴きたいわけでもないのだが。
ディープパープルはジョジョのスタンドのハイウェイスターのデザインがものすごく好き、という理由でアルバムを一枚借りて聴いたことがあったおかげで、演奏された四曲中三曲は知っている曲で嬉しかった。Highway Star、Smoke On The Water、変な塩梅の女、Black Night。聴いたことがなかったのは「変な塩梅の女」で、英語のタイトルは聞き取れなかったが邦題は面白かったので記憶して帰った。Black Nightは借りたアルバムには入ってなかったがどこかで聴いたことがある。知ってる曲だとどこで盛り上がればいいのかわかるのでノリやすいね。Smoke On The Waterの途中でメンバー紹介に入り、紹介されたギタリストがあのリフを崩したようにアレンジして弾いたのが格好良かった。
最後はお待ちかねのブラック菩薩。そして現われたのはサングラス、茶髪のカーリーヘアー、黒い付けヒゲ、胸元が大きく開いたスーツにでかい十字架のネックレスをつけた謎の人物だ! ………誰だ?
内田さんだった。
いや、正直に言おう。実は彼が話し始めてからもしばらく「誰だろう…」と思っていた。本当にわからなかった。途中のMCで橘高さんが、視界の隅に内田が入っても内田と認識できないというようなことを話していたが、とてもよくわかる。ものすっごい別人っぷりだった。冷静に考えりゃ他に誰がいるんだよって話なんだけどな。
「ボーカルを呼び出すには、腰を低く落として、手を縦にして叩かなければいけない」という内田さんの指示の通りに手を叩き、「ふーみん! ふーみん!」と会場全体でふーみんコール。コールを受けて現われた橘高さんが持っていたものは…何かでかくてちゃちい十字架だー!
何て言ったらいいだろう。アイスの棒を卒塔婆サイズまで巨大化したものを十字に重ねて、縦の棒に「ブラック」、横の棒に「薩菩」と書いたような代物だ。菩薩は右から左に書かれてるので薩菩。その素敵にチープな十字架にドッと笑いが起こった。
他のメンバーはベースはZig+Zagより∀、ドラムはfromフリーランスで河塚篤史、元陰陽座のドラマーである。橘高さん以外全員立派なヒゲをつけていたそうだが、生憎自分の位置からは河塚さんの姿は見えなかった。また、内田さんは今回限り「トニー内田」「トニー・ウチオミ」と名乗っていて、何度かトニーコールが起きて嬉しそうにしていた。
このライブでは内田さんがギターを弾き、橘高さんがボーカルをとるという珍しい姿が見られるのであるが、位置の関係で橘高さんが歌う姿はとてもよく見えたのだが内田さんのギターを弾く姿はほとんど見えなかった。橘高さんのボーカルは力強く、全力で歌っているであろうことがよくよく伝わってきて、一曲目が終わる頃には既に大粒の汗を垂らしていた。
それでMCも気を抜かず喋り続けるのだから休む暇もない。オーケンがいないのにMCが長くなりかけて慌てて曲に移ることもあった。最後の方で、「ブラック菩薩の持ち時間がいつも三十分なのはボーカルの息が切れるから」と橘高さんはハァハァと実際に息を切らせながら説明していて、二時間歌って歌って喋り続けるオーケンは流石ボーカリストだなと感心した。
で、わかったのはIron Manだけである。うーむもう一枚くらいベストでも何でも借りておくべきだったか。ライブ中、橘高さんの煽りで手拍子、メロイックサインと大忙しだった。特にメロイックサインは多かったなー。二曲目あたりで橘高さんが握った拳を客席に向けて見せると、指の付け根のあたりに「FUNY」と書かれているように見えたが、FUNYじゃないかもしれない。オジ・オズボーンの左手に「OZZY」とタトゥーが入れられていることのパロディならFUMYか? FUNNYじゃないしなぁ。わからない。
内田さんのギターソロはいつものベースの歪むような音でもなく、ギャギャギャギィアーといった感じでって言っても伝わらないよなぁ。硬質な音と言えば良いのだろうか。とはいえギターの音色もそれほど聞き分けられるほどわかった耳をしてないし、まぁこんな印象だったってことで。ただ見た目はさっきも書いたように全然内田さんとは別人なので、内田さんじゃない人がギターで内田さんっぽくない音を出しているため全然内田さんのような気がしなかった。まるで知らない人のようだった。いや、本当に。たまに「あの橘高さんの隣で弾いてるヒゲの人は内田さんなんだっけ」と言うような妙な感覚にとらわれていた。
MCで、橘高さんは「邪悪な」という言葉を大層気に入っていて、何かにつけては「邪悪だ!」と言っていて笑い転げそうになった。また、「花小金井」という言葉が叫んで気持ちの良い言葉だったそうで、嬉しそうに「花小金井ー!」と何度も叫んでいた。
内田さんはこのライブのためにギターを新しくしたそうで、その理由は「邪悪な呪いによってギターが折れてしまったから」だそうだ。ブラック菩薩の呪い恐るべし。他にも邪悪関係の楽しいMCがたくさんあったが残念なことにほとんど忘れてしまった。「次が最後の曲です」「えー」というやりとりが笑っていいともみたいで、橘高さんがタモリさんの真似をしたりもしてたっけな。
「ブラック菩薩」と書かれたあのチープな十字架はラストあたりで客席に投げ込まれ、退場後もアンコールの拍手が起こり、一度張られた幕が取り去られてメンバーがステージに戻ってはきたものの、だいぶ時間を押していてもう音を出すことはできない、また、ネタも無いとの説明がなされ、そのまま終演となった。
最寄り駅に着いた頃には日付が変わっていたのでモスバーガーで遅い夕飯をとって帰宅した。いやー楽しかった。珍しいものが見られて良かったなぁ。次にまたいつか地獄からやってきてくれることがあるのなら行きたいものだ。