平沢が白かった。
いや、違う。いや、違わないが。本日参戦したライブ「HYBRID PHONON」。平沢進と核P-MODEL、同一人物による別名義のコラボライブというもので、シンフォニックで壮大なソロと、破壊的で刺激的なテクノサウンド、二つを一日で楽しめる非常にお得なライブだが、とにかく、何だ、平沢が白かった。
髪が真っ白なのである。
自分の整理番号は千番以降。開演当初、今日はゲストが二人いるのかと思っていた。下手が白髪。上手がスキンヘッド。そして後々平沢が中央に登場するのだろうと。しかしあにはからんや、下手の白髪が歌い出し、その声はまさにあの黒尽くめの印象が強い、平沢進その人の声だったのである!
遠目ゆえ、白髪のかつらを被っていたのか、地毛なのかは見極めることが出来なかったが、髪はふんわりとしていて、普段より長かったように見えた。恐らくかつらだろうと思うが、何でまたかつらを被ったのか。還暦記念にイメージチェンジか。単に度肝を抜きたかったのか。それともかつらではなく地毛で、真っ白なのが本来で今までは黒く染めていたのか。わからない。
白髪に白衣の真っ白な出で立ちがあまりに衝撃的すぎて、前回のライブ「パラレル・コザック」で聴けなかった「暗黒πドゥアイ」をついに聴けて嬉しいとか、「ナース・カフェ」の掛け声が「SWITCHED-ON LOTUS」バージョンで珍しく感じたとか、まさかの「Black in White」に興奮したとか、「Parallel Kozak」から「フ・ル・ヘッ・ヘッ・へッ」への流れがたまらなかったとか、いろいろあるにも関わらず、白髪に全てを持っていかれた。それほど衝撃的だったのである。
魔導物語・ぷよぷよのキャラクターであるシェゾ・ウィグィィが還暦を迎えたらこんな感じなのだろうか…。などと、ライブと全く関係のないことを思い浮かべもした。
以下はセットリストである。
アンチ・ビストロン
Rocket Shoot
гипноза (Gipnoza)
暗黒πドゥアイ
それ行け!Halycon
ナース・カフェ
ナーシサス次元から来た人
王道楽土
アンチモネシア
庭師KING
現象の花の秘密
聖馬蹄形惑星の大詐欺師
Big Brother
Parallel Kozak
フ・ル・ヘッ・ヘッ・ヘッ
Black in White
パレード
KINGDOM
救済の技法
~アンコール~
白虎野
Timelineの東
聴けて嬉しかったのは「暗黒πドゥアイ」「庭師KING」「現象の花の秘密」「フ・ル・ヘッ・ヘッ・へッ」「パレード」「救済の技法」「白虎野」「Timelineの東」である。特に「暗黒πドゥアイ」は嬉しかった。前回本当に聴きたくて聴きたくて、聴けずにがっかりしたのである。ついに満願成就の夜が来た! と言っても過言では無いだろう。
ステージの中央にはテスラコイルがあり、その両脇に掛け軸のような形状の縦長のスクリーンがあった。下から上へ文字や歌詞が流れたり、Halyconが踊り狂ったり、白虎野の風景が映されたりと凝った映像演出がされていた。
そして掛け軸の手前にはレーザーハープが設置され、上手と下手のステージを繋ぐレーザーが一本と、スタンディングエリアに向けて数本のレーザーが放たれていた。太い緑色の光線はド迫力で、スクリーンとあわせて視覚的な演出が非常に凝っており、ヒラサワワールドが全開に繰り広げられている。
下世話な話だが、ステージ演出のための予算が確保出来ているんだな、と思った。自分自身も例の「唯じゃない」発言がきっかけでヒラサワを知り、気付けばどっぷりはまっていたクチである。思いがけずとはいえ新規の流入が発生した結果なのだろう。年々、少しずつステージセットが壮大になっていくのが実に嬉しい。
で、ヒラサワである。白い。とにかく白い。
まぁ白いのは置いておいて。「アンチ・ビストロン」から始まり「гипноза (Gipnoza)」に至るまでもたまらなかったが、やはり目玉は「暗黒πドゥアイ」。どんだけ好きなんだ、と言われるかもわからないが、とにかくこれが聴けたのが嬉しくてたまらなかった。これに関しては特に特別なアレンジはされていなかったように思う。
そして「それ行け!Halycon」で、スクリーンで踊り狂うコミカルでキュートなHalyconさんを堪能した。今回、キーボードソロの箇所はギターに置き換えられていたように記憶しているが間違っていたら申し訳無い。
「ナース・カフェ」からしばらくはソロのターン。「王道楽土」のシャウトは実に格好良かった。自分はシャウトがどうしても好きでたまらないらしい。
さて。「アンチモネシア」でヒラサワとゲストのPEVO1号が、巨大な紙の筒のようなものを持ち、それで足元を突いたり、メガホンを構えるかのように口元に持ってきたりといった動作を繰り返していたが、あれがどういうパフォーマンスなのかはよく理解出来なかった。ヒラサワの上半身しか見えなかったゆえ足元に何があったのか確認出来なかっただけに気になる。しかしそれ以上に白髪が気になる。何で真っ白なんだ。何なんだいったい。
「現象の花の秘密」はわりと最近の曲のわりに随分久しぶりのように感じられたのは、「ノモノスとイミューム」のDVDを待ちわびているせいかもしれない。今日もあの、エンディングでの素晴らしいパフォーマンスが脳裏に浮かんだ。早くDVDを販売して欲しいものである。
「Big Brother」は前回のパラレル・コザックと同じアレンジ。次はギターを思う存分堪能できる「Parallel Kozak」。これが今回すごかった。
曲の最中でどこかで聴いたこのあるフレーズが入り、しかし正体を掴めず、何だろうと次を待っていると挟み込まれる音。あ、これはとついに気付き、期待値が高まる中で始まる「フ・ル・ヘッ・ヘッ・へッ」!
持ってくるか! ここで!!
六十歳、還暦のヒラサワによる「フ・ル・ヘッ・ヘッ・へッ」! これをこのタイミングで突っ込んでくるヒラサワの格好良さったら! 老いも疲れも知ったことかと我が道をひた走るヒラサワの姿が見えた気がした。まさかこれを生で観られるとは思わなかっただけに興奮した。
本編最後は「救済の技法」。これもライブで聴くのは初めてだ。一番最初に手にとったヒラサワのアルバムが「救済に技法」なだけに嬉しい。これがきっかけでどっぷりはまり、ここまで来てしまったのだ、自分は。
大歓声のアンコールの中現れたヒラサワはちょっとだけ喋ってくれ、さりげなく物販の宣伝をし、ギターのチューニングをし、とサービスしつつ、白髪の理由は全く語らないのが実にらしい。アンコールの二曲「白虎野」と「Timelineの東」はどちらも大好きな曲で、特に「Timelineの東」は己の中で鮮度の高い曲なので、終わりの寂しさを噛み締めつつ、多幸感に浸ったのだった。
とはいえやはり白髪の理由が気になって仕方がないので、どうか三日目には触れて欲しいと願っている。あぁ、思う壺だ!