日記録0杯, 日常

2018年2月10日(土) 緑茶カウント:0杯

一人で外食をしたことがない、と二十代半ばの女性が言った。その声には自負するものもなければ負い目もなく、ただ事実を淡々と述べているだけで、それを聞いた己は「へー」とこれまた平坦な声で答えたのであった。

話を聞くと、その人にとっての外食は誰かと一緒に行くことがあくまでも前提にあるそうだ。故に一人でも入りやすいラーメン屋やファーストフード店も一人では尻込みすると言う。「ラーメン屋って、むしろ一人の方が入りやすくないですか?」「そんなことない! 無理ですよ!」

ちなみにその人も自分も一人暮らしで、一人の生活には慣れている。なるほど。一人暮らしをしていれば一人での行動が当たり前になるので誰でも一人であちこち行けるものと信じていたが、必ずしもそうとは限らないのだなぁ。

一人でどこへでも行けることは自由を手にすることである。しかし外食を誰かと行くものと捉えれば、自由の代わりに外食に付随するのはレジャー要素で、特別感を得られるとも考えられる。己が当たり前のように一人で行くラーメン屋もその人にとっては特別な一瞬で、それぞれ違う楽しみ方をしながら味わっていると思うと面白い。

ということを、居酒屋のカウンターで一人、ビールを傾け餃子をつまみながら思ったのであった。



未分類0杯, のほほん学校, 大槻ケンヂ, 非日常

大好きな人の誕生日を、同じ空間でお祝いできる幸せを噛み締めた夜である。

今日のオーケンは終始ふにゃふにゃほわほわしていて、仲の良いゲストに囲まれとても楽しそうにトークをしていた。オープニングでは「接吻」「君は薔薇より美しい」をカラオケでニコニコ歌い、エンディングではゲストの増子さんとノブさんと三人で「銃爪」を熱唱、最後はカホンを叩くノブさんとアコースティックギターを抱えるオーケンの二人で「オンリー・ユー」が演奏された。

オーケン曰く、ご機嫌なときでないと歌えない「接吻」「君は薔薇より美しい」を、それはもう楽しそうに歌いきる様子を楽屋で観ていた怒髪天の増子さんが苦笑いをしながらステージに呼ばれるおかしさよ。増子さんからは誕生日プレゼントとして仏具を連想させる素敵な湯呑みと吸水性の良いタオルが、その後に呼ばれた人間椅子のノブさんからは健康を気遣ってフルーティーなお酢の三本セットと入浴剤の大容量セット、そしてマンホールカードにロープウェイカードが贈られた。湯呑みを見て「親父の仏壇にこういうのがあった……」と何とも言えない顔をするオーケンがおかしかった。一番嬉しそうだったのはお酢だったなぁ。マンホールカードとロープウェイカードにも形容しがたい表情をしていた。

今日のトークはとにかく、増子さんがすごかった。回転の速いこと速いこと。ROOTS66の集まりでも増子さんの周りに人が集まってきて、何か面白い話を聞かせてほしいと期待の面持ちで見つめられ、要望に応えてトークをした結果本番前に咽喉が疲れてしまう、というエピソードが披露された直後になるほどこういうことか、とすぐさま納得させられた。オーケンが投げたものにいち早く返し、ツッコミを入れ、話をどんどん展開させていくのである。故に、オーケンと増子さんに挟まれて座るノブさんが「俺が一番得してる!」と高速でラリーが交わされる爆笑トークの渦中で目を輝かせていた。

あまりにも展開が早いので「あぁ、その話もっと詳しく聞きたかった!」と惜しい気持ちになるシーンもあった。例えば仮面ライダーとか、仮面ライダーとか! ちなみに増子さんは友人の子供にオーケンの演じる最上魁星を指して「この人友達なんだよ」と話したら株が上がったそうで、ありがとうとオーケンにお礼を言っていた。

トークは仮想通貨を作る話にエンケンさんの追悼ライブ、ROOTS66の中でオーケンが先輩扱いされる話、未だに学年が重視される話、水際では無敵な吉川晃司や、ダムカードやマンホールカード、カレーの話などなど。これらがすごい勢いで転がり、展開していく迫力のすごさったら。いつも楽しいのほほん学校だが、ここまで終始大笑いし続けたのは初めてかもしれない。

オーケンは完全にリラックスしきっていて、増子さんの鋭いツッコミにたじたじとなりながら、眠い目をこするような仕草で「弱ったなぁ」と言いたげにトホホな表情を見せていた。かと思えば長引くトークをきっちり仕切り、次のコーナーへ移る場面も。イベントは全体で二時間半で、それはもう、最高に楽しい時間だった。

ちなみに今日この日にオーケンが一番食いついた場面は、オーケンがお風呂で愛読している古武術の雑誌「月刊秘伝」を、怒髪天のメンバーも読んでいると増子さんが話した瞬間である。あのとき、本当に文字通り身を乗り出していた。……仲間を求めているのだなぁ。

印象的だったのは最後の「オンリー・ユー」で、「人間っていったい何だろう」の部分を今のオーケンになぞらえて変えていたこと。じーんとするとても良い歌詞だったのに、記憶できなかったのが悔やまれる。

それにしても思うのは、この猫背でやわらかく椅子に座り、足を揃えてほにゃほにゃふわふわしている人と、ドラムセットを背にステージでマイクを握り、眉を吊り上げてシャウトする人が同一人物であることの不思議さである。仮面ライダーの映画で「バイカイザーとなるのだー!!」と悪い顔をして叫んでいた人と同一人物であることの不思議さである。そうなんだよなぁ、同じ人でなんだよなぁ。今日はまたとびきり、滑舌がゆるゆるしていたなぁ。

筋肉少女帯のオーケンも、のほほん学校のオーケンも、アコースティックギターを抱えるオーケンも、原稿用紙に想いや物語を描くオーケンも、「オレにカレーを食わせろ!」とシャウトしているにも関わらずカレーが胃に重くなってしまったオーケンも、細かな文字を読むためにぐっとマンホールカードを目から遠ざけるオーケンも、どのオーケンも大好きだ。その姿を活躍をいつまでも眺め、応援したい。

五十二歳のお誕生日、おめでとうございます。これからもずっと健康で、良いことばかりが起きますように。



日記録0杯, 日常

2018年2月3日(土) 緑茶カウント:0杯

最高に楽しい一日だった。

大学の友人と三人で仮面ライダーの映画を観に行った。一人は仮面ライダーのファンで、もう一人はかつて仮面ライダーを観ていた人。そして自分は根っからのオーケンファン、そんな三人で連れ立って映画館に足を運んだ。

この映画を観るのは七回目だが、何度観ても楽しい。初回は物語を追うので精一杯だったが、雑誌を読み、回を重ね、現在放送中の本編を観ることでだんだんと仮面ライダーの世界への理解が深まり、観るたびに新たな発見があり、また筋を覚えたことで細かい描写を楽しむ余裕もできた。

映画が終わった後は三人で焼肉屋に行き、肉を焼き肉を貪りながら映画の話をする。思えば、映画館に行った後に感想を語り合うなんて何年ぶりだろう。家族でジブリの映画を観に行った子供のときこそあったが、大人になってからはまず映画を観に行く機会がほとんど無く、たまに出かけても一人で行って帰るのが常だったため、非常に新鮮に感じた。

仮面ライダーについて質問をすれば友人が答えてくれ、友人もオーケンの演技への感想を述べてくれ、とても楽しかった。「黒い最上とファンキーな最上は最初別人が演じていると思ったよ、良い悪役だった」「万物創世記のときから大槻ケンヂは全然変わってない、五十代に見えない」「せっかくなら大槻ケンヂに主題歌を作ってもらえば良かったのに」と言ってもらえた嬉しさったら。話は弾み、肉も美味しく、ビールも進んで幸せだった。

生きているとたまにこんなご褒美のような日があるからたまらない。今も楽しさの余韻に浸っている。あぁ、非常に幸せだ。



日記録0杯, 日常

2018年2月2日(金) 緑茶カウント:0杯

きっとその店の主はとても正直で、とても丁寧で、とても真っ直ぐなのだろう。しかし当初は興味を持っていたにも関わらず、一度も暖簾をくぐったことのないその店に行こうという気を己は一切失くしてしまったのである。

半年ほど前にできたその店はとある地方の特産物を扱った居酒屋で、昼はランチも営業している。店頭は細かなメニュー表に看板、貼り紙でデコレーションされていて、よしいつか入ってみるかな、と興味をそそられる内容だった。

ところがある日通りかかると店の扉に貼り紙があった。「今日は研修のために休みます」と書かれている。なるほど研修があるのか、と納得して先へと進んだ。そのときは特にこれといった印象は抱かなかった。

そして別の日に通りかかったときにも貼り紙があった。「会合があるためランチを休みます」。別の日にも貼り紙があった。「大事な仕入れがあるため夜の営業を休みます」。また別の日にも貼り紙があった。「料理の勉強のため休みます」。これまた別の日にも貼り紙があった。「地元仲間とのパーティーがあるので休みます」。

毎回毎回、きっちり休みの理由を書いて大きな文字で店の扉に貼ってあるのだ。

思い返してみるとその頻度は高すぎることもなかったかもしれない。他の店と同じ程度に休んでいたかもしれない。だが、毎回多種多様かつ印象に残りやすい休業の理由が書かれるために、この店といえば休業、というイメージがついてしまったのだ。

きっと「臨時休業」という看板だけ出されていたらここまで印象に残らなかっただろう。しかし貼り紙の威力たるや。「どうせ今日も休みだろう」と外食の選択肢からすっかり外してしまうようになって、一度も暖簾をくぐってもいないのに足が遠のいてしまった。

人入りの少ない様子を眺めると同じように思う人も多いのかもしれない。いつか伝えるべきだろうか。迷いながら通り過ぎている。



未分類0杯, 三柴理, 初参戦, 非日常

毎年、水戸さんの100曲ライブを観るために訪れるライブハウス「七面鳥」。さて、今日この日は高橋竜×三柴理デュオ・ライブが行われる予定だったが……なんと、高橋竜さんがインフルエンザにかかってしまった。よって急遽演目が変更。エディのソロ・ライブになった。

事情を踏まえ予約のキャンセルを受け付ける旨が七面鳥のサイトにも掲載されたが、どうやらキャンセルをした人はほとんどいなかったようだ。開場の三十分前に現地に着くと既に行列が出来ていて、中に入れば満員につき前に詰めてくださいとのアナウンス。こじんまりとした室内にぎっしり椅子が並べられ、左右に気を配りながら外套を脱ぐには苦労した。

畳んだ外套を膝の上に乗せ、ドリンクチケット代わりの貝殻とビールを引き換え、カイロを揉んで開演を待つ。このカイロは「三柴さんからです」と行列に並ぶ一人ひとりにスタッフの方から渡されたものだ。凍えながら耐えいていた身にとって、この優しさはどれだけ心に染みたことだろう! エディの心遣いに感動した。

カイロだけでなく、チラシも一人ひとりに配られた。開くと高橋竜さんからの丁寧なお詫びのメッセージと本日の演奏曲目が書かれていて、高橋竜さんの真摯さと無念さがそれはもうひしひしと伝わってきた。ちなみにこのチラシは高橋さんのメッセージをもとにエディが自宅で作成したそうで、インクを乾かすために紙を広げる必要が生じた結果、家中がチラシだらけになったそうだ。

高橋さんのインフルエンザの件は残念ではあったものの、ライブ自体はとても楽しかった。こじんまりとしたライブハウスの小さなステージにはアップライトのピアノ。普段、コンサートをするときにはピアノにマイクを立てるが、今日は小さな会場であることと、良い音が鳴るピアノなので、ということでマイクは無し。さながらエディの家にお呼ばれしたような、そんな近距離の空間を楽しむことができた。

これがだね、実にすごかったんだ。

ピアノの音だけでなく、指がピアノに触れ、叩く音、靴音、息遣い、振動までが聴こえるのだ。鍵盤を跳ねる指先は優雅で丸く、手首から先が別の生き物のように見えた。思えばいつも、筋肉少女帯のライブで観るエディはステージの奥にいて、こんなにも近くで観たことなど一度もなく、その迫力に圧倒された。

中でも圧巻は「孤島の鬼」と「ヤンガリー」。「孤島の鬼」は「Pianism of King-Show」に収録されているが、「Pianism of King-Show」を発売したときにどうしてか発売記念ライブをやらなかったため、ピアノだけで演奏するのは今日が初とのこと。あの囁くような音と、踏みしめるような力強い音が同じピアノから、そして同じ指先から奏でられるのは何とも不思議な情景に見えた。貴重な現場に出くわしたものだ……。

「ヤンガリー」は本日ラストの曲で、エディより「好きに叫んでね!」と言われたので「ヤンガリー! ヤンガリー!」と叫ぶ気まんまんでいたのだが……叫べなかった。無理だった。目の前で身を削るように奏でられる怒涛のピアノに掛け声を差し挟む勇気を持つ者はどうやら一人もいなかったらしい。ただ息を呑んでピアノに叩かれる指を凝視するより他になかった。

演奏だけでなくトークも盛りだくさんで、こんなにエディの話を聴いたのはきっと今日が初めてだろう。開演すぐ、エディは高橋竜さんがインフルエンザで来られなくなったことを詫びつつ、彼がいかに体調管理に気を遣っていたかを熱く語って聞かせてくれた。そして今日、高橋竜さんが来られないことでお客さんがどんどん減ってしまうに違いない……とエディは思っていたそうで、満員御礼の会場を喜び、「応援してくれてありがとう!」と何度も何度もお礼を言っていた。

曲に入る前には作られた当時の思い出話やエピソードが語られ、合間合間に筋肉少女帯のメンバーやライブの話も挟まれた。聴いていてわかったことは、エディは筋肉少女帯で弾くのが楽しくて、メンバーをとてもリスペクトしているということ。特に長谷川さんや橘高さんのすごさを語る口調の愛に溢れる様子と言ったら! 思わず笑みがこぼれ、ニコニコしてしまった。

真面目で、優しくて、愛に溢れていて、チャーミングな人。それがエディだ。集まった人達を楽しませようと一所懸命喋り、笑わせ、高橋竜さんのことをしきりに残念がりつつ、体調管理を怠っていたわけではないことを強く訴える優しい人。そして、寒空の中ライブハウスの前に並ぶ人々のことまで気にかけてくれる人。カイロは帰り道でもまだ熱を持っていて、まるでエディの優しさを分けてもらったような気分になった。温かな指先がとても嬉しかった。


グリエール「プレリュード」

三柴理「小組曲」
~ペンギン
~大山椒魚
~チンパンジー
~河馬
~鼠

THE 金鶴「Offside」
「Romarin」

三柴理「DOG RAG」
「是政行進曲」

三柴理「AKEBONO Ballad」
「AKEBONO」

筋肉少女帯「孤島の鬼」

~アンコール~
森の妖精(アフロディーテ)
特撮「ヤンガリー」