キャラメルをブチ撒けろ
2013年9月27日(金) 緑茶カウント:2杯
夜。アスファルトに散らばった森永ミルクキャラメルをしばし眺めた後、己は腰を屈め、それを黙々と拾った。
時刻にして二十二時。帰宅の道すがら、冷凍うどんを買うために寄ったスーパーでレジに並んでいるそのとき、森永ミルクキャラメルの箱が目に留まった。黄色い小さな箱である。途端、キャラメルの味が恋しくなり、ほぼ何も考えず、それを籠の中に入れた。衝動的だった。
特別懐かしくも無い。子供の頃によく食べたが、大人になってもそこそこ食べている。何もかもが見慣れた菓子だ。うどんとコロッケ、長ネギその他をビニール袋に詰め込んだ後、一番上にキャラメルを乗せた。店を出たらすぐに食べようと思ったからだ。行儀は悪いが、一粒口に放り込んだところで誰も見咎める人などいないだろう。
って思っていたのに袋を破いて箱を開けて一粒放り出したとき、指先の一粒に気をとられ、さらには箱を持つ手にビニール袋を提げていたせいでバランスが崩れやすくなっていて、あ、と気付いたときには遅い。キャラメルは滑空し勢いよく地面に衝突、そして四方八方に元気よく散らばったのだ。
指先に摘んだものと同じ、銀色の四角い包みがあちこち散らばる中心に立つ二十代後半は、恥ずかしい、悲しい、という気持ちよりも先に、「面倒くせえ」という感想を抱いていた。