平沢進+会人(EJIN)【Streaming+】 (2020年6月20日)
まるでね、全人類が絶滅した後、廃墟となったコンサートホールで朗々と歌うように見えたんだ。
新型コロナウイルスの影響で延期されたものの、結局実施は難しい判断になり、代わりに無観客ライブ配信が発表されたヒラサワのライブを自宅からストリーミングで見つめると、彼は誰一人いないNHKホールで、三百六十度カメラを振り回しながら高らかに歌っていたのであった。
最後にヒラサワのライブを観たのは三月十四日。以来、ずっと自分はヒラサワの歌を聴いていなかった。この状況と心情にぴったりな歌手を己は知っていて、彼の歌でないと救われない日々が続いていたゆえに。だから三ヶ月ぶりだったんだ。ヒラサワの歌を聴いたのは。
そして、やっぱり好きだなぁと思ったし、何て楽しい大人なのだろうと思ったよ。
声はね。だんだん、出にくくなっているなぁと当人の苦悩が感じられるようで。とはいえもしヒラサワ以上に歌える青年が現れたとて、己が聴きたいのはヒラサワの歌声に他ならなく、代替の存在はありえない。年齢を重ねていくことに寂しさを感じつつ共に前に進んでいきたい、そのように感じている。そのうえで、観客を楽しませるための仕掛けに余念がないヒラサワのサービス精神が大好きで、だからこそ笑わせてもらったのさ。随所に挟み込まれる観客席でのヒラサワと会人の様子や、チェーンソーではじまりの幕をぶった切る猟奇的なヒラサワに。
あぁ、楽しかったし嬉しかった。そのうえでやはり、生の声を聴きたい。
その渇望を抱きつつ、今日の日に感謝しながら一日を終える。大好きな「庭師KING」「Switched-on Lotus」を聴けて嬉しかったと。そしてその二曲を、前回のライブで、生きている間に、生身で聴けたことを誇りに思うと。
せっかくNHKホールでやるんだったら核P初期曲も聴きたかったんだぜ、なんてのは野暮の野暮。とはいえやはり、いつかのその日が来ることを、十年後二十年後と待ち続けるのである。仮に彼が、チェーンソーを持つ体力を失ったとしても。