20×5=100 LIVE with 澄田健 (2020年2月29日)

ニコニコしてしまった。それはもう、嬉しくて楽しくて。このタイミングで水戸さんの歌声を聴けたことがありがたくってならなくって。

まるで311のときのようだなぁ、と感じる重い閉塞感。楽しみにしていた予定が延期や中止になり、自粛ムードが漂い、トイレットペーパーやティッシュペーパーがデマで品薄になり、かと思えば突然の休校要請により余波を受けた業者が食材を余らせて困っていて、世の中が混沌としつつも労働だけは普段通りに行わなければならなくて、しんどい中でさらに心の拠り所を奪われるという悲しい事態に陥っているのだ。

そのうえ個人的に大きな事件が直近で発生し、事象そのものは一つなのだが大事なものを一気に失うはめになってしまって、あまりのしんどさ苦しさやるせなさに一晩涙が流れて止まらず、そんな中での自粛ムードに心が折れそうで、折れそうな中でやはり救ってくれるのは、己が愛した人達なのだと改めて感じさせられたのだった。

オーディエンスの健康を慮り、ライブを中止・延期にしたオーケンは本を読んで勉強してインスタライブを配信してくれた。
状況を鑑みつつ、水戸さんはライブを決行する判断をしてくれた。

ありがとう。あなた方のおかげで己の心は救われました。

番号的にどうかな、と思いつつ良い席に座ることができて、全身で水戸さんの歌声を浴びることができた。一曲目は「青空」で、二曲目が「楽」。水戸さんが歌ってくれるとどんなに曇っていても頭上に青空が広がっていく。響き渡る歌声が体内まで振動し、心が揺さぶられる。

あぁ、今一番聴きたかったのはこの歌声だ、と思った。

今度発売する新譜がかなりロックになったことについて水戸さんは言った。敷居を下げても間口は広がらなかったのでその反動だと。また、メジャーなミュージシャンと比較して冗談めかして自身を売れない売れないと言った。それについて己は、あぁあのプロジェクトはそういう意味合いもあったのかと今更思い知らされて、売れないと自嘲することをちょっぴり悲しく思いつつ、でも、己はやはり、ストレートでロックな水戸さんの歌声が何よりも好きで、その歌声に励まされ、支えられ、やっと生きているんですよ、そんな人間もいるんですよ、と言いたくてたまらなくなった。

「青空」「芋虫ロック」「地図」「夜中の3時のロマンチック」「バラ色の人生」。今聴きたかった曲を今日この日に聴けて、涙がこぼれてきて、ぐっと握った拳を突き上げて水戸さんの格好良い横顔を凝視した。「星になるのか」で声が詰まった水戸さんが曲が終わった後のMCで言った。直近で近しい人が亡くなり言葉が出て来なくなってしまったと。あぁ、そんな中でも歌ってくれるのが、たまらなくありがたくて仕方がない。

アンコールの二十面ダイスは今回から新調されてがっしり握れるほどのサイズになった。それを床へと転がし、最前の客が出た数字を確認できるようにして、「俺たちはずっとやらせはしていなかった」「本当に出た数字をアンコールでやっていた」と主張する水戸さん。大丈夫、知っていますよ。例え一センチ×一センチのような小さなサイズで観客に出た目が見えなくたって、我々はあなたとあなたの歌声を信頼しているのですから。でも、そうしてわざわざamazonで新しいダイスを探してくれるのはそれはそれで嬉しいです。

そんでもって今日ライブを決行するに至って、来場者全員にサイン入りマスクを配ろうとドラッグストアを奔走してくれた水戸さんのありがたさったら。結局マスクはどこも品切れで手に入らず、除菌できるファブリーズに目を付けたもののノンアルコールなためコロナには無意味で、なーんてエピソードを話してくれて、その気持ちだけで心がポカポカになりますよ、そしてあなたの歌声によってエネルギーをもらえてきっとコロナにも打ち勝てますよ、なんて思って、感謝の気持ちを込めて己は終演後、ドリンクをさらに一杯注文し、グッと呑んで一気に空にしてサクッと帰った。

ありがとうこの空間を。水戸さんのおかげで生きていけます。






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