あぁ、ハエトリグモとハエトリグサよ
2019年9月29日(日) 緑茶カウント:0杯
こはいかなる凶事ぞ。あぁ、本来であれば彼らは志を同じくする仲間だったに違いない。それなのに何故、こんな悲劇が生まれてしまったのか。その凶行が行われた、いや、起こってしまった現場を見たとき、己は元気に暮らしていたあの姿を思い出して、そして変わり果てた姿を見て、茫然としながらその遺骸をただただ眺めるしかできなかった。
我が家には己以外に二つの生き物が生息している。一つはハエトリグモで、もう一つはハエトリグサ。前者は気付いたら棲みついていて、代替わりをしながら我が家の水辺を中心にあちらこちら闊歩している。後者はこの夏に花屋の軒先で売られているのを見て、嬉しくなって買ってきたもの。筋少のアルバム「Future!」をこよなく愛する自分にとって、その象徴とも言える植物は特別な存在で、我が家で一番日の当たる風呂場に置いて毎日水を欠かさずやり、その愛らしいトラバサミのような葉をにょきにょきと増やしていく様をそれは楽しく眺めている。
ところが悲劇は起きた。
どうしてか台所や洗面台や風呂場、我が家の水辺を好んで意気揚々と闊歩するハエトリグモが。うっかりそのトラバサミのような葉に触れてしまったのだろう、愛しい彼は愛しい食虫植物の餌食になってしまったのだ。
日課の水やりを行い、ふと一つの葉が閉じていることに気付いて凝視すれば葉の裏に見える黒い影。ガッチリと閉じた口からはみ出る足の生々しいことと言ったら。あぁ、ハエトリグモとハエトリグサ。たった一字しか違わず、ハエを捕え食すという同じ志を持った者同士でどうしてこんな悲劇が起きたのか。凄惨な事件が起きた現場で己は鉢を抱えながら、ただ茫然とするしか他に術はなく、在りし日の姿を思い浮かべ何とも言えない寂しさを噛みしめた。
せめてしっかり、消化してほしい。