橘高文彦&本城聡章 弾き語りAcoustic Live Tour 2018 (2018年4月8日)

まだ名前のないおいちゃんと橘高さんによるアコースティック・ユニット。筋肉少女帯のデビュー三十周年を記念してか、突如開催が決定されたこのツアー。まさかこんな特別な催しをやってくれるとは夢にも思わず、喜び勇んでチケットの申込みをし、期待で胸をいっぱいにして阿佐ヶ谷ロフトに訪れた。

家を出る直前まで習慣の常備菜作りに奔走し、気付けば味見以外で腹に入れたものは何一つないまま電車に乗ってしまって、目的地に着いてから近くのパン屋で腹ごしらえをした。整理番号は四十番台で、まあまあの数字。わくわくしながら開場を待ち、中に入れば四列目に座ることができた。ステージは高く、視界良好。ステージの奥と袖にはズラリとギターが並べられていて、あぁ、ギタリストのライブなんだなぁと実感してニコニコしてしまう。

そうして始まったライブといえば、カロリー消費過多のエネルギー溢れるライブだった。それはもう、アコースティックというライブを勘違いしてしまいそうになるほどに。

そもそも自分がよく行くアコースティックライブが水戸さんの100曲ライブで、これがもう飛んで跳ねてシャウトして、汗だくになりながら歌うエネルギー消費の激しいライブ。そして今日観たそれはメタルアコースティックというか、アコースティックメタルというか。えっゾロ目ってアコースティックでやる曲か……? と激しくかき鳴らされる手元と歌唱に魅せられながら驚愕したのであった。そろそろ本当に、アコースティックライブを誤解しそうである。

名前のないユニットは今日がデビューライブということで、このツアーを通して名前が決まって、今後も続けていけたらという話もあった。もともと橘高さんのドリームキャッスルというイベントにおいちゃんをお招きしていて、その中の一コーナーでアコースティックライブもやっていて、それをメインにしてみても良いのでは、という思いつきが発端だった模様である。そしてその思いつきが生じたことに、己は深く深く感謝したのであった。

思ったこと。おいちゃんはテンプテーションの使い手なのかい……?

まず「航海の日」のインストゥルメンタルで始まり、基本的においちゃんと橘高さんが交代交代で歌っていく形式で、最初に歌われたのが「機械」。このとき、おいちゃんの囁くような歌声に魅せられながら、機械ってこんな曲だったっけか……? と驚きも感じた。

全体を通して見るとおいちゃんの曲はアコースティックで演奏するにあたりアレンジが利いていて、筋少を何度も何度も聴き続けた身でも、イントロだけでは何の曲か掴めず、歌声と共に聴いてもまるで別の曲のように捉えられることがあった。オーケン以外の人物がオーケンの歌詞を歌う不思議さと、オーケンの声ではないからこそ、改めて感じさせられる歌詞の美しさ。今まで隠れていた筋少の別の側面を見せられたような気がした。

それは独特なボーカルから離れると、もしかしてこれは、合唱曲にもなるんじゃないかと思うような。

「キーが高いから大変なんだ」と前置きの後に橘高さんの歌声によって歌われた「レティクル座の花園」では、「モルヒネの麻酔の幻さ」の箇所をオーディエンスが合唱した。客層は女性が多く、故に透き通った声が幾重にも重なり、それはかつて学生時代の音楽の時間を彷彿とさせながらも歌われるのは痛ましい歌詞。しかし、綺麗だなぁ、美しいなぁ……と声を重ねながら思った。同時に、こうして知らない人々と大好きな筋少の曲を共に歌えることに幸せを感じた。

ソロコーナーではおいちゃんによる「ザジ、あんまり殺しちゃだめだよ」が披露され、あまりの美しさに心臓が握りつぶされる思いがした。今日は筋少のライブではなかなか聴けない曲も多く演奏され、それだけでも嬉しかったが……このザジの美しさは一際素晴らしかった。

おいちゃんは歌いだしのとき、マイクから離れていることが多く、故に頭の歌詞がマイクに乗らないこともあったのだが、その強弱も良いと思わされた。

あとさぁ、当たり前っちゃ当たり前なんだが、ギタリストのユニットなんだから当たり前なんだが、ギターが素晴らしいんだよなぁ……!!

ギターってこんなにいろんな音が鳴るんだな、と改めて思い知らされる。この音がこの二人の指先によって奏でられていると思うと感嘆せざるを得ない。期待していたが、期待していたが、期待の百倍楽しかった。

オーケンがギターを勉強して弾き語りを行い、それから楽器演奏の大変さを知ったと言う。故に今回おいちゃんと橘高さんはボーカルの大変さを体感しようという試みとのことで、咽喉を温存するためMCは控えめにしたい……ようだったが、流れるような爆笑トークで笑わせてくれた。このサービス精神がありがたい。

前半は各自の作曲した曲を責任を持って歌っていたが、他のメンバーの曲も歌いましょうということで内田さん作曲の「蓮華畑」が披露された。

「3歳の花嫁」は当初、オーケン以外のメンバーが歌う曲があっても良いのでは、というオーケンの発想から作られ、キーもメンバーが歌うことを想定して作られたが、詩ができたところで「やっぱり僕が歌う」とオーケンが言い出し、今の形に作り直しになったと言う。そんなエピソードがあったんだなぁ。

「ゾロ目」の迫力に圧倒されつつ、最後は「アデイインザライフ」で多幸感に包まれながら終わりを迎えた。しかし、まだツアーは続く。今日披露した楽曲の二倍の数をおいちゃんと橘高さんは練習したそうで、故に各会場では楽曲の入れ替わりもあるだろうとのこと。わぁ、嬉しいなぁ! と思いつつ、あの曲をまた聴けたら良いなぁと願いつつ。この新たな活動のスタートに喜びを抱くのであった。

こちらはセットリストだが、楽しくて記憶がぐちゃぐちゃになっているので間違っている可能性が高い。こんな曲をやったんだなぁ、と参考程度に見て欲しい。ご容赦を。

航海の日
機械(おいちゃんボーカル)
僕の歌を総て君にやる(ふーみんボーカル)
ドナドナ(おいちゃんボーカル)
レティクル座の花園(ふーみんボーカル)
奇術師

KISSのカバー
~ふーみん退場でおいちゃんソロコーナーへ~
ザジ、あんまり殺しちゃだめだよ
生きてあげようかな

~おいちゃん退場でふーみんソロコーナーへ
傀儡のワルツ
リテイク

青ヒゲの兄弟の店
蓮華畑
世界中のラブソングが君を
3歳の花嫁
LIVE HOUSE
ゾロ目
アデイインザライフ



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