20×5=100 LIVE with 内田雄一郎 (2016年4月2日)
れっきとした水戸マニアであるはずなのに、イントロから曲を類推することが出来ず、ひたすら混乱するライブであった。その点において新鮮味があって面白くもあり、同時にノリにくくもあったので、確かに「実験的な」ライブであることを実感したのであった。
前回の吉田一休回において、「実験的」枠組みにあることが示された今回のライブは、水戸さんのレパートリーを全てテクノに作り変えるという驚きの代物だった。いつもであれば水戸さんの隣、ゲストミュージシャンの座る席にはギターやピアノが置かれているが、そこにあるのはシンセサイザーと数々の玩具である。パソコンとUSB接続をすると回転する小型のミラーボールに、ネックの部分が全てボタンになった、大人の教材用エレキギター。そして水戸さんの手にはピストル型のシャボン玉発生装置。ステージにいるのは五十代の大人二人。五十代の大人二人が全力で玩具で遊び楽しんでいる。そんな姿を観ることがこの先いったい何回あるだろう。
一曲目からして、よく知っているはずの曲なのに全然知らないのにとてもよく知っているという驚き。どう聴いたってテクノライディーン、いや、その元の曲であるのに、始まった歌は看護ロック! 水戸さんと内田さんの背後に張られたスクリーンには「看護」という文字が大きく映しだされ、曲に合わせて大きさを変えるという用意周到ぶり。あぁ、どう聴いても「あの曲」なのに看護ロックと言い張るこの図太さ! すっごいもんを持ってきたなぁ!!
水戸さんはいつものテイストの衣装だったが、内田さんは真っ赤なシャツに黒のネクタイという珍しい出で立ち。目元を隠すのはサングラスではなく普通のメガネ。このあたり、何かを意識したのだろうか。
MCではテクノとテクノポックの違いが語られたが、己が知っているテクノ関連のものと言えば平沢進と空手バカボンくらいなので、あまりきちんと理解することが出来なかった。今回、内田さんはこの日のために二ヶ月かけて曲をアレンジしたそうである。水戸さんとしてはそこまでしてもらうつもりではなく、もっとかる~くやってもらうつもりだったそうなのだが、ちょうど内田さんが暇で、尚且つ内田さんがはまってしまった故にここまで本格的になってしまったのだと言う。正直、このライブのためだけ、というのは非常にもったいないと思う。大問題の看護ロックは置いておいて、他の曲はアルバムにしていただけないだろうか、と思うほどであった。
ちなみに水戸さん、100曲ライブの第一回目から、内田さんに参加してほしいと思っていたそうなのだが、ベース弾き語りは五曲程度ならまだしも……ということで時間がかかってしまったらしい。対する内田さんはと言うと、子供の頃ベースよりも先に買ってもらったのがシンセサイザーだったこともあり、ノリノリでこのライブに臨んだそうだ。水戸さんからベース弾き語りがあっても……という提案を退けて、テクノ一辺倒にしたそうである。
印象的な曲としては久しぶりの「ロマンティックがとまらない」。この曲以外でも内田さんはボコーダーを使ってコーラスの声を機械音に変えたりしていたが、これについては女性の声に変声していて、単純な感想だが、機械たぁすごいもんだなぁと思った。
一点、惜しい点と言えば、音がビリビリ肌に突き刺さる点がないということだ。この100曲ライブはいつも、狭い空間で全力の歌唱と演奏を楽しめて、そこに大きな魅力を感じている。つまり、至近距離で生演奏の迫力を体感できるのだ。それが今回、打ち込みということで感じられなかったなぁ、というのがちょっと残念。せめてもうちょっと音量が大きかったらなぁ。
後半では「ジョニーは鼻毛がヒッピースタイル」で立ち上がり、大盛り上がりするという場面も。最後の曲は「偶然にも明るい方へ」で、これは比較的違和感が少なかった。アンコールの曲はサイコロにより二曲目の「トーカラジ」に決まったが、内田さんが一曲目の「看護ロック」で、映像と音楽がうまくマッチしなかったことを悔いていたため、「看護ロック」「トーカラジ」の二曲をやってくれるというサプライズ展開も! これは嬉しかったなぁ!
イントロを聴いても何の曲が始まるかわからないため、戸惑う場面が多かったが、それはそれで。こういうのもアリなんだなぁ、ということを感じたライブであった。面白かった。