「おでん」の魔力

2016年1月12日(火) 緑茶カウント:2杯

整体で体をほぐしてもらった帰り道。商店街をぽくぽく歩いていると、自家製の練り物屋の前を通りかかった。店の奥では主人が老眼鏡を片手に新聞を読んでいて、軒先にはほこほこと湯気を立てるおでんが良い匂いをさせている。八つに仕切られた四角い風呂の中でごぼう巻き、こんにゃく、卵、牛筋、はんぺん、ちくわがぎゅんぎゅんになって出汁に浸かっている様はとても惹かれるものがあった。

よし。「すみませーん」と声をかけ、食べたいおでんを選んでビニール袋に詰めてもらう。引き上げられた卵も大根もすっかり茶色。これは素敵だ。随分味が染みてそうである。迷いつつ五つほど入れてもらい、最後に出汁をたっぷりビニールに注いでもらって、輪ゴムでぎゅぎゅっと縛られる口。これでお値段たったの二百九十円。紙袋に包まれたたぷたぷのビニール袋を受け取ると指先にじんわりと熱が移る。

あー、こういうのって良いなぁ。
惜しむらくは。自分がさほどおでん好きじゃないってことだなー。

さほど好きじゃないのにおでんを食べたくなるときがある。それが今日である。何故か。雰囲気に負けたのだ。冬の寒い日。商店街の練り物屋。自家製の味が染みたおでん。小銭で買える晩御飯。良いじゃん! 素敵じゃん! 他にも惹かれるシチュエーションはある。例えばさ、寒い日に屋台でさ、熱燗片手におでんをつつくなんてさ、最高だよね。でも熱燗、好きじゃないんだよね。残念なことにね。でも惹かれるよね。だって絶対美味しそうじゃん! 美味しそうなのに、美味しいけど、美味しそうなのに、さほど好きじゃないジレンマ!

おでんは温めなおした後美味しくいただいた。うん、美味しい。美味しかった。美味しいけどいつも、「冬のおでん」という言葉があまりにも美味しそうで魅力的なせいで、イメージに味が負けるのだ。何だろうこれ。何だろうこれ。美味しいのに。己はいつも、納得できない。



日記録2杯, 日常,