追跡する姿見
2015年9月27日(日) 緑茶カウント:2杯
親切心とわかっている。わかっているが、どうか放っておいてくれ! と叫びたくなるのである。
その人は己が眼鏡を手に取るたびにタイヤのついた姿見をガラガラと引っ張って顔の前、もしくは真横に持ってきてくれる。場所は眼鏡屋。そして己は眼鏡を新調するためにここに来ている。よって店員の気遣いはありがたいはずなのだが、とにかく、ちょいと試してみようと移動して眼鏡を手にとればガラガラガラガラ、何か違うなと思ってまた移動して眼鏡を手に取ればゴロゴロゴロゴロゴロンゴロン、一挙一動を見守るかのごとく、監視されているかのごとく、姿見を手についてくるのであり、そのプレッシャーたるや相当なものであり、騒がしさもなかなかのものであり、全くもって落ち着かない。
そもそも姿見が無くても己は困らないのである。何故ならその眼鏡屋の店内には至るところに大小の鏡が設置されているのだ。ちょっとかけて様子を見る程度なら事足りるし、事足りるように店舗も設計されているのである。一人の店員につきっきりで姿見を持ってきてもらう必要は無いのである。無いはずなのに、三歩進めばガラガラガラ、十歩移動すればゴロンゴロンゴロンゴロン、良いから! 良いから! お構いなく! どうか放っておいてくださいよ!
最終的にちょうど良い眼鏡を購入することに成功はしたが、眼鏡選びとは別のところで疲れきったのであった。どっとはらい。