パラレル・コザック (2014年1月13日)

楽しかった余韻に浸りつつ、自分にとっての核P-MODELのライブは今日で終わってしまったため、若干の寂しさを味わっている。核P-MODELの新譜の制作決定が告知されたときから、今日に至るまでがまるで一連のお祭りのようだった。新譜を聴いて、そうだよこれだよこういうのも聴きたかったんだよ! と大喜びして毎日毎日繰り返し聴き続け、ライブチケットの抽選に申込み、金額に間違えが無いか数度確認して入金し、入金金額は正しかっただろうか、間違えてなかっただろうかとドキドキしながらチケットの発送を待った。そうそう、キーボードマガジンで核P-MODELの特集が組まれる事件もあったなぁ。あの表紙には度肝を抜かれたものだよ。

今日のチケットは百五十番台。似たような規模のライブでは、今まで参戦した中で一番良い番号である。番号を見たとき、ありがとうケイオスユニオン、と心の底から思った。

会場後、迷わず下手前方に立ち位置を決めた。これで上手と下手が交代したら泣くかもしれん、と思いつつ開場を待つ。まぁ、機材の関係もあるだろうし、そんな面倒くさいことは行わないとは思うが。ローディーが楽器をセッティングするのを見て一応安心を得るものの、本人が出てくるまではやはり心配だった。

しかし心配は杞憂に終わる。立ち位置は初日と変わらず下手であった。良かった! そして一曲目も初日と変わらず「崇めよ我はTVなり」! 重々しいイントロと共に幕が開けることとなった。

以下はセットリストである。


崇めよ我はTVなり
ENOLA
アンチ・ビストロン
排時光
巡航プシクラオン
Dr.древние (Dr.Drevniye)
Dμ34=不死
ビストロン
Parallel Kozak
白く巨大で
それ行け!Halycon
109号区の氾濫
гипноза (Gipnoza)
Alarm
Big Brother
Timelineの東

~アンコール~

パラ・ユニフス

曲の順序に変更はあるものの、入れ替え曲は無い様子。と、いうことは今回のライブDVDにはボーナストラックが無いのだろうか。どの日でも良いから、「暗黒πドゥアイ」を入れて欲しかったなぁ。あのシャウトを、あのシャウトを聴きたかったのだよ!

二曲目がまさかの「ENOLA」。曲が始まると同時に、スイッチが入ったかのように観客が跳ね出した。恐らく本日一番盛り上がったのがここである。天を指差して仰け反るわ、スタンドマイクを斜めに倒して歌うわと、ド派手なヒラサワのパフォーマンスに歓声と悲鳴が上がり前方はなかなかの圧縮状態に。上着やコートを着たままの人も大勢いたが、恐らく暑かっただろうなと思う。ただ圧縮状態とはいえ、自分の汗と他人の汗でぐちゃぐちゃになる、というほどでは無いのでまだ快適ではあった。

「アンチ・ビストロン」のあたりだっただろうか。自分は正面からヒラサワを見ていたのだが、紫の光がヒラサワの顔にくっきり影を落として妙な迫力が醸し出されており、何かの首領に見えて若干怖かった。格好良いを通り越して怖かった。

「排時光」では、人の頭の関係でヒラサワの姿が一時全く見えなくなったのだが、歌声はしっかり聴けた。今回は前回よりもヒラサワの地声がよく聴こえたように思う。立ち位置か調整の違いだろうか。何にせよ、嬉しい。

「Parallel Kozak」ではヒラサワとPEVO1号がマイクスタンドから離れ、二人並んで中央寄りに立ち、無表情でギターを弾くというパフォーマンスを見せてくれた。手はしっかり動き観客はしっかり沸いているのに二人はまるで上の空のような顔をしているのが機械じみていて面白い。よく笑わないものだと思う。

そうそう。初日の最初の四曲あたりはオーバーアクションや振り付けのある曲が入ってなかったため、最初はずーっと淡々と無表情でギターを弾きつつ歌っていたのだ。まるで作業のように。昨今のライブはレーザーハープを操る際に動きが生まれるため、淡々とした印象はあまり無かっただけに、棒立ちで真正面のどこかを凝視しながらギターを弾きつつ歌い続ける姿が異様に見えたのだ。変わったのは中盤から。コミカルな振り付けやグラインダーパフォーマンスが挟まれてからは、その後棒立ちに戻っても人間味が感じられるようになった。

対して、今日は二曲目に「ENOLA」が入ったので、「ずーっと棒立ちで機械的で異様」なイメージは抱かなかった。個人的にはあの異様な雰囲気も面白かったので、曲の並び順的には初日の方が好みだ。

「白く巨大で」では、初日と同じく脚立に乗ってグラインダーで培養炉を削りながら歌うのだが、初日は顔には透明ゴーグルのようなものしかつけていなかったが、今日はマスクもしていた。ヒラサワのツイートを見ると、「培養炉削りで金属粉を吸い込んでいる可能性があるゆえにマスクはご容赦を」とあるので、………あぁ、やっぱりあれは体に悪かったんだな………。

培養炉から伸びるマイクをマスクにぴったりくっつけて歌うヒラサワ。発声にあわせてマスクがへこんだり膨らんだりしていて、よくもまぁあの状態で歌えるものだなぁ、と感心した。しかも手にはグラインダーである。

「それ行け!Halycon」ではまた毛糸帽の男が乱入してキーボードを弾いて去っていった。マスク越しに見える顔は若かった。少なくともヒラサワと同年代では無い様子。

この人の存在が次の物語への伏線にならないかなぁ……とつい期待してしまう。最終日には紹介されるだろうか。

「109号区の氾濫」は聴けば聴くほど好きになる。もともと好きだったがライブで聴いてより一層好きになった。しかし何がここまでガツンと来たのかいまいちわからない。何だろう。

「гипноза (Gipnoza)」「Alarm」「Big Brother」は怒涛のようだった。これでもか! これでもか! と殴られたようだ。)」「Alarm」のシャウトは言うまでもなく、格好良かった……。「Big Brother」はライブで聴くと洗脳されそうになる。迫力に負けて。

「Timelineの東」は清涼剤のようだ。盛り上がりつつ、明るく軽やかな曲調でスッキリ気持ち良く終わるので、本編ラストにもってこいだ。爽やかな気分になれるから嬉しい。

そしてアンコールを呼ぶ声。「ヒラサワー!」「核Pさーん!」「核P-MODELー!」と叫ぶ声の中から、「核Pさん! 核Pさん! 核Pさん! 核Pさん!」というコールが手拍子と共に発生した。これ、結構言いづらい。

しばらくして核P-MODELことヒラサワとPEVO1号が登場! 「パラ・ユニフス」を演奏すると、またさくっと退場し、会場が明るくなる。無論ここでこのまま帰るわけが無い。核P-MODELを呼ぶ声が起こり、まるで餌を待つ雛のように会場全体が叫ぶ叫ぶ。

やっと現れたヒラサワが放った言葉は「今日はさん付けで呼ばれたので気持ち良く出てこられました」で、ドッと笑いが起こる。初日は「ヒラサワではなく核P-MODELです」と叱られ、二日目は見られなかったが、呼び捨てを指摘されたそうだ。その流れを通しての発言である。

MCでは、楽屋で九年前の核P-MODELのMCを見せられ、初日と二日目はそれを再現したことが語られ、今日は少し趣向を変えると言い、観客が喜びの声を上げると「そんなに大したものではない」と制された。そして始まったのが機材の説明。一日一つということで、今日はマイクスタンドについて。このマイクスタンドはアルミで出来ており、今日会場に来ているハリーさんが作ったもので、今までにも舞台装置の制作でお世話になっているとのこと。

このマイクスタンドについた穴にヒラサワが人差し指中指薬指を突っ込んで遊び、自らアーティストイメージを壊すというお茶目を見せていた。あぁ、わかる。確かに穴が空いていたら指を入れたくなるよな。

そうそう。どこだったかな。「えー」という声が上がる前に、先手を打って「えーじゃない!」と言われた場面もあった。あれはおかしかったなぁ。

楽しいMCも終わり、一時間二十分でライブは終了。さっくりあっさりした感じが実にヒラサワらしく、また、それがちょっと寂しくもあった。

そういえば。今日会場に着いたら、物販のビッグカラー・ウールコートを皆が思い思いの形で着こなしているのが面白かった。あの襟は工夫のし甲斐があるようで、なるほど、そのように着れば良いのか、と思わされることもたびたび。しかし自分も含め、あのコートを着ている人々が集結している様はなかなか怪しかった。こういうのもライブの面白さの一つだね。



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