パラレル・コザック (2014年1月11日)

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正直なところ夢にも思わなかったよ。まさか数年前にファンになった自分が核P-MODELのライブをこの目で観られるなんて。まさか、核P-MODELの曲ばかりをたっぷりライブで聴くことが出来るなんて!

四日間の公演のうち自分は初日と三日目を観に行く。無論、全ての日程に参戦したい気持ちは山々だが金銭的な都合と時間的な都合でこの二日間を選択した。そして思った。初日を選んで正解だった、と!

これまでに参戦したヒラサワのライブは「東京異次弦空洞」と「ノモノスとイミューム」の二つ。どちらも初日は抜かして二日目、最終日を選んだ。するとどうしても、どちらもネタバレを見てからの参戦となってしまったのだった。何故なら、ユーストリームで中継されるライブを自宅で見ないという選択肢を持つことが出来なかったからである。

どうしてもユーストリームも見たいなら初日に参戦した方が得策だな、とようやく気付き、その通りにチケットをとって、本日非常に満足した。あの、いつも全身黒尽くめの平沢進が真っ白な衣装で登場し、ヒラサワのトレードマークであるヘッドセットマイクもレーザーハープも無い! 「嫌い」と言い放つギターを常時弾き倒し、スタンドマイクをまるでロックミュージシャンのように引き倒す! さらに、一度引っ込んだかと思ったら脚立を抱えてやってきてそれに上り、中央の培養炉をグラインダーで研削し火花を散らしながら歌うパフォーマンス!

本当にこの人はいつだって人の度肝を抜いてくれるから面白い。白い服を着てギターを弾いたまま歌い続けるヒラサワは、そりゃあ過去の映像では見たことがあるし、スタンドマイクだって東京異次弦空洞で使うのを一度見てはいるが、それでもベースとしての「平沢進」像が確立されているため、意外性が損なわれないのだ。

この日は二百五十番台と、自分にとってはかなり良い番号で、随分と前の方に並ぶことが出来た。まぁ中央に並んでおけば間違いなかろう、と思い、上手と下手を隔てる柵の上手側の中央寄り、即ち柵の真横あたりに立った。しかし、あにはからんや、これが大間違いだったのだ。

入場から開演までの間は、いかにもヒラサワらしい音楽が流れており、これもなかなか気分が盛り上がり、聴いていて楽しかった。隣の人などまだ始まる前だと言うのに既にノリノリで踊っている。あぁ、今日は何が聴けるだろう。前回の核P-MODELのライブでは核P-MODELとP-MODELの曲をやっていたが、今回はどうせなら、核P-MODELをたっぷり聴きたいなぁ、などと考えながら待っていたら落ちる照明。沸き立つ観客。現れる平沢進。何と下手に。

下手に平沢進、上手にPEVO1号が立ち、中央には培養炉。流石に、流石に予想しなかった。中央に誰もいないとは!

さて、ここで曲者なのが柵である。前方スペースには、上手と下手を分ける柵がど真ん中に設置されている。結果、下手に人が殺到することにより、上手側の柵付近が大変な圧縮状態になったのであった。たった一メートル、柵の向こうの下手側は思い切り腕を振り上げられる程度にはスペースの余裕があったようだが、こちらはほとんど身動き出来ない。予想出来なかったとはいえ、こればかりは失敗したと思った。

が、ヒラサワをどうにか見ようとしたせいで首は若干痛かったものの、結構まったり観ることが出来たので良しとしよう。窮屈だったが、常時飛び跳ねたり折りたたみがあったりすることは無かったので比較的楽だったのだ。

以下はセットリストである。



崇めよ我はTVなり
Big Brother
アンチ・ビストロン
гипноза (Gipnoza)
109号区の氾濫
Parallel Kozak
ビストロン
Dμ34不死
Dr.древние (Dr.Drevniye)
巡航プラクシオン
白く巨大で
それ行け!Halycon
排時光
Alarm
ENOLA
Timelineの東

~アンコール~

パラ・ユニフス

途中にMCと言う名のお喋りが入らないため、サクッと終わった印象だった。一曲目は「崇めよ我はTVなり」。TBSが運営するライブハウス「赤坂BLITZ」でこれを一曲目に持ってくるところにヒラサワらしさを感じた。ああ、もう、大好きだ!

「Big Brother」はアレンジされていて、特にイントロのところは、どこか音が可愛くなったような印象を受けた。

「гипноза (Gipnoza)」は意外と早く出てきたな、という印象。ここまではまだ声が本調子でないように感じられた。「109号区の氾濫」から急に乗ってきて、そこからライブらしい声になってきたように感じられた。

今回一番驚いたのは「白く巨大で」のパフォーマンス。「巡航プラクシオン」が終わった後、ヒラサワとPEVO1号が一度奥に引っ込んだ。本編終了にはまだ早い、きっと何かあるだろう、と思いつつステージを見守っていると二人が持ってきたのは脚立。二つの脚立が中央の培養炉を挟むようにセットされ、それに上り、培養炉を中心に向かい合うようにして脚立に座り、透明のゴーグルのような眼鏡をつけ、取り出したのがグラインダー。何と、グラインダーで培養炉をリズミカルに削ることで、「白く巨大で」の「ギュイーン」という音を再現したのである。オレンジの火花が飛び散る演出に、観客からは興奮の声と笑いが漏れた。

このとき、PEVO1号は火花が自分の方に飛ぶようにグラインダーを操っていたのだが、ヒラサワは思いっきりPEVO1号の方に火花を飛ばしまくっていたのが何やら何というか面白かった。PEVO1号は熱くなかったのだろうか……。

歌うだけでなく、脚立の上でギターの演奏も披露し、演奏が終わったらピックをその場にひらっと落とし、またグラインダーで培養炉を削り出す。いったいいつこんなパフォーマンスを思いついたのだろう。

二人が脚立から降りて定位置に戻ると脚立はスタッフにより回収された。だが、ヒラサワはゴーグルをかけたままで次の曲「それ行け!Halycon」へ。もしやこのままずっとゴーグルをかけたまま歌うのだろうかと思っていたら、単に外すのを忘れていたらしい。曲の途中で歌いながら外していた。

よく見えなかったので間違っているかもしれないが、「それ行け!Halycon」のピコピコ音のところは録音したものを流しているようだった。しかし、ソロの部分はどうだろう。ヒラサワが弾くのか、音源を流すのか、本当に誰も来ないのか。誰か登場しないのか。

と思っていたら。毛糸帽を被り、マスクで顔を隠し、黒い服を着た見るからに怪しい男がキーボードを抱えてステージ中央に乱入! 目の前で、きょろっとした目だけを見せながらキーボードソロを弾き、ぴょんと跳ね、弾き終わるとキーボードを抱えて疾風の如く去っていった。

田中さんか!? 田中さんか……? 正直よくわからない。田中さんが来て欲しいという願望があったため、田中さんのような気がしたが、どこか、それにしては若いような気もした。最終日に明らかになるのだろうか。もしあれが元メンバーでも何でもない会場のスタッフだったりしたら面白い。

「排時光」「Alarm」は大好きな曲で聴けて嬉しかったのだが、ちょうどこの曲のとき人の頭の影にヒラサワがすっぽり隠れてしまい、全く見えなかったのが残念だった。

「ENOLA」は意外の一曲。始まった途端会場がわっと盛り上がり、一斉に手を振り出したのが見えた。自分も可能な限りは振りたかったがぎゅうぎゅう詰めで手を上げるのも一苦労。苦しかった。

「Timelineの東」は特に楽しみにしていた曲の一つ。これを聴きたくて聴きたくてたまらなかったのだ。嬉しかったなぁ。

歌い終わるとさくっと退場するヒラサワとPEVO1号。ここで本編が終了し、アンコールへ。最初は「ヒラサワー!」という普通のコールだったのに、いつの間にか「ひっらさわー!ひっらさわー!」という変なコールに変わっていた。あれは何というか、間抜けだった。

アンコールは「パラ・ユニフス」一曲で、その後にまたさくっと退場。ひっらさわコールで呼び出されたヒラサワの最初の一言が「平沢じゃなくて核P-MODELです」だった。大変失礼しました。

そのままMCに入り、PEVO1号の紹介。それと核P-MODELということで、アシュオンと培養炉の話も少しされ、アシュオンを盗んだ毛糸帽の男について触れ、「あの怪しい男を街中で見つけたら通報してくれ」という内容のことを語っていた。また、核P-MODELは九年ぶりとはいえまだ新人という話も。最後は「えーじゃない」「回れ、右。解散」「じゃ!」のフルコースで終了。

楽しかったなぁ。スタンドマイクはマイクの部分が青色に光っており、スタンドの部分は金属の板を二枚並べたような形状をしていて、その板に丸い穴が等間隔で空いていた。すると正面のライトによりスタンドマイクの影が衣装に落ちるも、穴の部分だけ影が作られないため、独特の模様を衣装に描くのだ。PEVO1号と連携した息の合ったパフォーマンスも見事だった。培養炉を中心に線対称に動く姿はコミカルでいて格好良かった。

気になるのは、今日演奏されなかった「暗黒πドゥアイ」がどこかでセットリスト入りするかどうかと言うこと。出来たら三日目に入って欲しいが、どうだろう。どうか!



未分類5杯, 核P-MODEL, 非日常