2019年4月7日(日) 緑茶カウント:0杯
その言葉を聞いた瞬間、己の目は確かに店員の手に釘付けになった。よくあるコンビニエンスストアーのレジにて、時刻は夜中の二十三時を過ぎた頃。疲れたことだしビールでも買って帰るかといくつかの物品をカゴに入れ、順番を待った後に己にかけられた一つの言葉。
「あたためますか?」
「あ、お願いし…………」
思わずお願いしようとして声が止まってしまったのは、店員が手にしていたのは雑誌だったから。しかし気を取り直す。いやいやいや、違う違う違う。雑誌は単にこれから袋に入れようと持ち上げただけで、あたためるか否か聞いているのはカゴの中の食物だ。食べ物だ。何を勘違いしているのか己は。そりゃあ確かに紛らわしいが常識的に考えてそんなはずはないだろう…………と一人慌てつつカゴの中を見返したら、ビールとミンティアしか入っていなかった。
「あ、いいです…………」
「スプーンおつけしますね~」
「え、あ、ありがとうございます」
そうして己は雑誌とビールとミンティアとスプーンを持って帰路についた。店員だけがどこまでも平静だったのが後になって妙におかしかった。