未分類0杯, 筋肉少女帯, 非日常

思いがけずもこの日は普段の五倍はストレスがかかる日で、「すらすら漢字が書けるなんてすごいですね。パソコン使えないんですか?」という脳が腐ったような問いかけを連発され精神が疲弊していたのだが、ライブ後、蓄積された疲労とストレスは全て霧散し、ただただ楽しかった多幸感を胸に抱きしめ、終演後会場にかけられた「気もそぞろ」を聴きながらふわふわと歩いたのだった。

開演前に物販に並び、欲しかったグッズを手に入れてドリンクカウンターに行き、ホットドッグとビールを両手に持っていそいそとベンチに腰を下ろした。ホットドッグは生地がもちもちしていて思いのほか美味しく、ビールがシュワシュワと咽喉をくすぐり徐々に疲労を溶かしていく。鞄の中には買ったばかりのディオネア模様のTシャツとタオルに、缶バッヂ、そしてオーケン弾き語りCDにオーケン物販のディオネアシャツ。今日は嫌なことがあったがこうして会場に来ることができたし物販も買えたしビールも美味い。よっしゃ。気を取り直してライブを楽しもう!

しかし、気を取り直そうと努力をする必要もなく、最高に楽しいエンターテイメントによって己の笑顔は満開になったのであった。

発売日から毎日毎日、飽くことなく聴き続けた新譜の発売記念ライブ。どのアルバムも大好きだが、とりわけこの「Future!」は自分にとって特別なものに感じていた。それは偏に「告白」の存在が大きいだろう。自分は決して「告白」で描かれる人物そのものではないが、何とも言えない居心地の悪さ、努力して擬態した結果完璧に仲間と勘違いされる自業自得のしんどさに苛まれることが少なくない。この歌は決して救いを提供するものではないが、「あ、オーケンの視界にはいるんだ、こういう人が」と感じさせられることこそが救いそのものなのである。

EXシアター六本木のやわらかな椅子に腰を沈め、開演のときを待つ。そして照明が落とされたかと思うと会場に響き渡るのは歓声と「週替わりの奇跡の神話」! 喜び勇んで席を立てばステージにメンバーが現れ、始まったのはアルバム一曲目の「オーケントレイン」!

ライブで初めて聴いていることが嘘のように自然と合いの手の拳が入るのは、何度も何度も聴き続けたからだ。「ガッタン!」「ゴットン!」「シュポシュポ~」って、なんて可愛らしい合いの手なんだろう! 最後の語りもがっつり語ってくれて嬉しかった。

二曲目の「ディオネア・フューチャー」では何と! マイクを片手に黒尽くめのエディが上手から現れ「無意識! 電波! メッセージ!! 脳! Wi-Fi!!」と低いシャウトを響かせながらステージを横断するサプライズ!! あまりの格好良さに思わず悲鳴が出てしまった。エディに心臓を撃ち抜かれた……。

人から箱男まではアルバム順で、ここから急に「ハニートラップの恋」へ! そして次が意外な一曲「新興宗教オレ教」! 腕を前に出し、両肘を触るあの「UFO」のポーズをとるオーケン。この曲、もしかしたらライブで聴くのは初めてかもしれないなぁ……と思っていたらすごいことが起こった。

オーディエンスに対し、この曲を覚えているかい? と問いかけ一緒に歌うことを促すオーケンだが、思いっきりズレたのである。「あれ? 今日はこういうアレンジ……なのかな?」と疑問に思うもやはり何かがおかしい。しかし流石の筋肉少女帯。ズレたまま完走しきったのである! これ、楽器隊は焦っただろうなぁ……。

「これでいいのだ」でタオルを振り回し、「わけあり物件」「エニグマ」へ! 妖しさと格好良さが共存する素晴らしいステージで、楽器隊に見入りつつ、ドラム台の上でシャウトを続けるオーケンにゾワゾワし、本当にもう、目が足りない! 生の迫力にただただ圧倒された。

「告白」「奇術師」「サイコキラーズ・ラブ」は着席して聴いた。「告白」で無限に繰り返される「テレテレテレテレ」は録音で、さもありなんと思いつつこれも生でやってほしかったなーと思った。

「奇術師」はじっくりと橘高さんのギターが堪能できて幸せだった。以前「家なき子と打点王」をライブでやるときに、冒頭で橘高さんのギターソロがあってあれが最高に好きで、またやってくれないかなぁ、と願っていただけに嬉しい。ミラーボールがくるくる回り、鱗のような白い光が会場をくるくる泳ぎ、その中でしっとりともの悲しい、胸を締め付けられる音色が響きわたる。ほう、と自然ため息が出た。

ついにバンドバージョンで聴けた「サイコキラーズ・ラブ」。聴きながらこれはサイコキラーに向けた曲ではなく、サイコキラーではないけれど、居心地の悪さを感じている人々のための曲なのだろうなぁ、と思った。

「イワンのばか」で立ち上がって大いに盛り上がり、久しぶりの「心の折れたエンジェル」! 「釈迦」でシャララシャカシャカ大暴れし、本編最後は「T2」! 「異議なし!!」と思いっきり拳を振りぬく気持ちよさよ。濁流を泳ぎきったような清清しさがあった。

アンコール一曲目は「3歳の花嫁」で、やはり涙腺が刺激された。「いくら3歳とはいえ人生における大事なイベントを父親とってどうなんだ、大丈夫か」と父親と娘に対し不安になる物語で、最後まで聴いたところで父親の印象が好転することも特にないのに、「空に向かって手を振るちっちゃな手の愛らしさ」で感動させられてしまうこの曲はすごい。

「人間嫌いの歌」が始まったときはニヤッとした。「告白」をやったその日にこの歌をうたう、そんなオーケンが大好きだ。

最後は「サンフランシスコ」で思いっきり飛び上がって締め。座席ありのライブだと前後左右に空間があるので思いっきり飛べて嬉しい。

MCではオーケンが仮面ライダーに出演する話と、ラジオで一番受けるのはパンの話、ということで繰り広げられるパントークにおいちゃんが「物パン」とうまいことを言ってオーケンを驚かせる、などなど盛りだくさんで、毎度のことながら大いに笑い、叫んで、飛んで、そりゃあもうストレスなんかどこかに吹っ飛んでしまうよなぁ。

開演前にドリンクチケットを引き換えたがどうしても余韻に浸りたくてビールを一杯買い、ふわふわしながら呑んだ。咽喉の奥で炭酸がシュワシュワ弾けた。美味しかった。何もかもが心地良かった。


オーケントレイン
ディオネア・フューチャー

人から箱男
ハニートラップの恋
新興宗教オレ教

これでいいのだ
わけあり物件
エニグマ

告白
奇術師
サイコキラーズ・ラブ

イワンのばか
心の折れたエンジェル
釈迦
T2

~アンコール~
3歳の花嫁
人間嫌いの歌
サンフランシスコ


未分類4杯, 日常

2017年11月5日(日) 緑茶カウント:4杯

連日筋肉少女帯の新譜「Future!」を聴き続けている。特典のライブ映像も観たいと思いつつ、筋少においては今現在「Future!」しか聴きたくない、とにかく「Future!」を聴き続けたい状態なので未だ手を付けられない。普段は作業中にライブ映像を流しっぱなしにしてBGM代わりにするのが常であるが、どうにも食指が動かず久しぶりに手に取ったのが「4半世紀」のオーディオコメンタリー。メンバーのトークを聴きつつ作業に没頭した。

あぁ、またオーディオコメンタリーを特典につけて欲しいな。もしも過去のライブ映像作品のオーディオコメンタリー集なんて作ってくれたら即座に予約するだろうなぁ、と夢を見つつサカサカと筆を動かす。「Future!」の感想をしたためたい衝動を抱えながら今描いているのは「Future!」から想起されたイラスト一枚。B4の紙に線を引き、透明水彩を塗り重ねている。楽しい。あぁ、だが感想も早く書きたい。

やりたいことがたくさんあるとは幸せなことだ。己は今も新譜の発売日の延長線上に生きている。楽しい。



未分類

■10月25日1時のアッテンボローさんへ

お久しぶりです、こちらは元気です。発売からずっと見事に「Future!」を聴き続ける日々を過ごし、今もずっと聴き続けております。あまりにも夢中になりすぎて「猫のテブクロ」再現ライブも観たい観たいと思いつつ、「Future!」を聴きたいあまりに未だ手を出せない状態です。

「Future!」の感想はもうちょっと咀嚼できたら書きたいです。自分にとってありがたいアルバムだな、と感じています。特に「告白」に心臓を掴まれました。今度の六本木のライブ、楽しみですね。早くこの日が来て欲しいです。



未分類0杯, のほほん学校, 筋肉少女帯, 非日常

最高に楽しかった。最初から最後までゲラッゲラ笑った。

台風の吹き荒れる中どうしたものかと思ったが、幸運にも己が外に出たときは雨風が弱まり、普段の雨の日と同じ調子で外に出ることができた。長靴を履いて水溜りも気にせずカポカポ歩く。電車も遅れることなく通常どおり運行し、何一つ不自由することなく目的地に着いた。

今回の会場「座・高円寺2」。一度来たことがあったおかげで、さらっと地図を見るだけで辿り着くことができた。己の席は真ん中寄りのそれなりに前の方で、うわあこんなに広々観られるなんて! と喜びを抱きつつやわらかな椅子に腰を下ろす。十二分に近い。嬉しい。

開演まで、まずは今回のゲストの氣志團・綾小路翔にまつわる映像が流され、次にオーケンが参加しているROOTS66が手がけるエンディング「おそ松さん」の映像、そして新譜「Future!」のMV「エニグマ」が大きなスクリーンに映された。「おそ松さん」は音が先に流れ、映像がスクリーンに出るのが遅れたため、肝腎のオーケンの声が目立つ部分ではスクリーンが白紙だった。このゆるい感じがのほほん学校らしい。

会場が暗くなり、まずオーケン一人が登場。先日のタワレコでのインストアイベントと同じように、「香菜、頭をよくしてあげよう」を弾き語ってくれた。筋少の大ファンで音楽なしでは生きられない人間でありつつ、音楽の技巧については全く詳しくない人間なのだが、それでもオーケンのギターはたまに聴くと上達しているなぁ、すごいなぁ、と感じさせられる。愛あってのものだろう。

そして筋少メンバーが呼び込まれ、楽しいトークタイムに。皆、筋少のライブとは違うゆるっとした格好で、普段着とライブの中間をイメージさせる出で立ちだ。まずは高円寺フェスということで各々の高円寺の思い出や印象が語られる。大阪出身の橘高さんにとって高円寺は「日本らしさ」の象徴に近いイメージがあるらしく、怖い印象もあったそうだ。曰く、都会であれば渋谷もどこも大差ないが、高円寺にはその色が出ていると。故に中央線より南側にしか住んだことがないらしい。そこにオーケン、「そうだよ高円寺は怖いんだよ!」と色々なエピソードを披露してくれた。

ツイートできない危ない話を交えつつ爆笑トークは続く。昔々、インベーダーゲームの大きな筐体を購入したオーケンのために、おいちゃん達がその筐体を自転車に乗せて、えっちらおっちらオーケンの家に運んだことがあったそうだ。また、有頂天の芝居の練習をどこどこでしていたとおいちゃんが高円寺の思い出を語り、空手バカボンでは単純なコントをケラさんを差し置いてオーケンが書いていたが、ある日ケラさんが書いてきた台本があまりにもシュールだった話などが長々と語られ、こんなにケラさんの話ばっかりしてケラさん大好きかよ! と笑いが起こった。

今回せっかく筋少メンバーが揃ったので、とアコースティックで演奏されたのは「3歳の花嫁」と「サイコキラーズ・ラブ」。ケラさんの話題が出たのは「3歳の花嫁」の後だったかな? オーケンがこれを映画にしたいと語りだし、キャストは誰が良いかとメンバーに問う。困惑するメンバー。その中で演出はケラさんかな? と名前が上り、ケラさんだとシュールになっちゃうからなぁ、という話から有頂天や空バカの思い出になったのだ。

ちなみに「3歳の花嫁」での神父のセリフは今回内田さんが担当。橘高さんがちらっと内田さんを見て、セリフへと促している姿が印象的だった。この曲は本当に美しく、今日この場で聴けないかな聴きたいな、と期待していただけに嬉しい。

「サイコキラーズ・ラブ」は新譜発売前から披露されていただけに歌い慣れた印象があった。コーラスが重なっていく気持ちよさと、内田さんにより導かれるハンズクラップの美しさがたまらない。

盛り上がるトークの中、氣志團のボーカル・翔やんこと綾小路翔さんが拍手に迎えられ登場! 己はこの方をきちんと存じ上げないのだが、あえて翔やんと呼ばせていただこう。翔やんはこの日ハーフマラソンを終えてステージまで来てくれたそうで、脚が棒のようになっているそうだ。この雨の中ハーフマラソンを完走するとは……何て根性のある方なんだ……。

あえて言うと、己は氣志團についてほとんど知らない。ただ、筋少ファンであると同時に氣志團ファンである方は少なくないので、その方々の声により、真面目な好青年のイメージを抱いている。また、氣志團が開催するフェス「氣志團万博」のおもてなしは素晴らしく、ケータリングはどれも美味しいらしいことも聞いていた。故に良い人なんだろうなーという漠然としたイメージを抱いていた。

そしてこのステージに登場した翔やんのイメージといえば、当初のものと変わらない好青年そのものであった。

印象的だったのはハーフマラソンを走る中でのエピソード。翔やんは走り続ける中で、完走したもののずっと追い越され続けたという。そして走りながら走馬灯のように巡ったのは自分の過去。真面目で勉強ができたお子さんで、氣志團でデビューしてからはとんとん拍子に進み、早い段階から大きなステージに立つことが出来た。ところが近年、同じ時期にデビューしたバンドがようやく大きなステージに立てるようになったとき、そこにようやく至ったという熱意に敗北感を抱いたという。自分はこれから追い越される人生なのではないかと不安を抱いたそうだ。

その中で語られたのは、自分は千葉出身で東京をまるで敵のように、何が東京かという思いをエネルギーにしてきた。しかし今良い調子の人々は東京の育ちの良い人々で、それこそ「明日食べられるのか」と不安を抱いたことのないような、冷蔵庫を開ければ必ず食べ物が入っていて、一人暮らしをしていても仕送りをもらえるような、そんな安心の中で生きてきた人。そういった人と自分は違うとハーフマラソンを走る中で思ったと言う。

ハングリー精神を持つ地方出身者による東京を敵役としてみなす歌に対し、東京出身のうちださんが「しょうがないじゃん! 東京に住んでいるんだから、他にどこに行けばいいの?」と語ったエピソードも披露された。そんな中でオーケンは、東京のおぼっちゃんの僕と千葉出身の翔やんには他にない共通点がある、仮面ライダーに出演したことだ! と綺麗にまとめた。

ちなみにこの日、仮面ライダーの予告篇もスクリーンに出され、オーケンが仮面ライダーに出演するに至った経緯も語られた。芝居が出来ないことを自覚しているオーケンは断りに断り、「朝早くなんて起きられないですから」とまで言ったが、スタッフに「今はそんなこと全然ないですよ!」と押し切られたものの、撮影のため朝七時四十五分にダム集合、と指定され「ブラック企業か!」と突っ込みが入った。記念にと撮影されたオーケンの自撮りも公開されたが、見事にまぶたがむくんで眠そうだった。

最後オーケンと翔やんが二人で語るコーナーに入る前、筋少メンバーと翔やんが一対一で語る姿を見たいというオーケンによる無茶振りがあり、橘高さん、内田さん、おいちゃんの順でトークが行われた。橘高さんは翔やんの格好にシンパシーを感じる話で、それに対し翔やんは「中学生のときから見ているけど橘高さんは全然変わらない!」と褒めちぎった。

内田さんは「空手バカボンを聴いてくれてたんだね」と話を振り、内田さんの作ったソロの話へ移行しつつ、翔やんから「オーケンさんと内田さんはどこに引かれ合ったのか、どうして長く続いているのか」という質問が発せられる。オーケンと内田さんは「火事」「バッドマン」と答えるもさらに深堀りを要求され、二人して首を傾げるも答えは出ない。そこから翔やんのちょっと切ない話になり、オーケンが翔やんと橘高さんはバンドをファミリーと捉えるタイプ、うっちーとおいちゃんもそれに近い、僕は全然違う、死ぬときは別! と語った。

意外だったのがおいちゃんと翔やんで、SNSで繋がっていること、おいちゃんが韓国に行きたいなと思っていたところで翔やんが韓国に旅行に行ったエピソードが語られた。翔やんは今まで全く映画を観ず、スターウォーズも観たことがないほどだったが、映画を観ようと思い立ち、映画を観続ける中で韓国映画にはまったそうだ。それからおいちゃんと翔やんで韓国の話で盛り上がる盛り上がる。おいちゃんはこの日一番楽しそうで、笑顔がキラキラしていて眩かった。

メンバーが退場してからオーケンと翔やんで前述のハーフマラソンの話になり、最後に「オンリー・ユー」を二人で演奏して締め。ここに記した以外にもたくさんの面白トークがあり、特に氣志團万博運営の裏話、芸能人にオファーするうえでの難しさ、スポンサーとのいろいろな兼ね合いなど、聞き応えのある話が盛りだくさんだった。

帰り道は雨も弱まっていて平和そのもの。あぁ、楽しかったとニコニコしながら帰路に着いた。それにしても、あんなに成功していて、華やかに見える人でも大きな不安を抱えているのだなぁ。そうして当初、自分がイメージしていた以上に「こちら側」に近しい人のように感じる。だからこそ筋少ファンであると同時に氣志團ファンである人も多いのだろう、と思った。

意外なところに意外さを感じた一夜である。どっとはらい。



未分類8杯, インストアイベント, 筋肉少女帯, 非日常

「Future!」の発売記念インストアイベントがタワーレコード新宿店にて開催された。幸運なことに整理番号がかなり良く、前から二列目に立てたおかげで充分な視界を得ることが叶った。嬉しい。とても嬉しい。

今日はいつもの徳間のお姉さんではなく、男性のスタッフがイベント開始前の注意事項をアナウンスしていた。会場は人でいっぱいで、少しずつ前に詰めるように促される。時間は二十一時。さぁ、もう間もなくだ。

そして拍手に呼び込まれ、ふらりとステージに現れたのがオーケンだ。もう何度もこういったイベントに参加する機会には恵まれているが、やはりこうして間近でオーケンを観るとドキドキする。血行が促進され毛細血管の隅々まで栄養が行き届き全身が健康になってしまう。ありがたい。

オーケンは四つ並べられた椅子のうち向かって左から二番目に腰を下ろすと、壁に立てかけられていたアコースティックギターをごく自然な仕草で手にとって、ゆるりと「香菜、頭をよくしてあげよう」を弾き語ってくれた。思わぬサプライズである。曰く、今日は演奏をする予定がないけどせっかく集まってくれたのだから、というオーケンの優しさとのことで、タワーレコードにほわりと広がるオーケンの歌声に聴きいりつつ、全く、素敵な人だなぁとしみじみした。

ちゃんとメンバーも来るから安心してくださいね、とオーケンが釘を刺すとドッと笑いが起こる。オーケンによるミニライブが終わるとおいちゃん、うっちー、ふーみんの三人がステージに現れ、いつもの立ち位置と同じ順で椅子に腰掛けた。

今日はせっかくなので、これまで受けた取材やニコ生ではまだ話していない、「Future!」の楽曲それぞれにまつわるエピソードや裏話を肩っていこう、ということで収録順に一つずつ丁寧に話してくれた。発売されてからずっと、それこそ寝る間も惜しんで「Future!」を聴き続けているので本当に嬉しい。聴けると思って期待して来たわけだが、やはりこう、希望が叶えられるとたまらないものがある。さぁ、どんな話が聴けるだろう!

■オーケントレイン
おいちゃんはこの曲を「オーケンに普通に歌わせない」ことをテーマに作っていたとのことで、語りやシャウトだけで構成される曲にするつもりだったそうだ。ところが、ここはオーディエンスでオイオイ盛り上がるだろう、と思っていたところで「オ~ケントレイ~ン」と歌われてしまったそうだ。

「フューチャー!」のところや、高い声のコーラスにブースカ声のオーケンが混じっている。このブースカ声のオーケンと今回コーラスに参加してくれた扇愛奈さんの高さが同じくらいで、ブースカボイスを扇さんの声でコーティングしていると橘高さんは語っていた。また、オーケンはブースカ声の方が何故かピッチが良いとのことで、それを聞いたオーケンがたははとなっていた。個人的には、あの声がブースカとして認識されていることが面白かった。

■ディオネア・フューチャー
筋少コーラスの「無意識 電波 メッセージ 脳Wi-Fi」を録音するとき、橘高さんは「無意識 電波 メッセージ」までは「これくらいやったらもういいだろう」というノリだったのだが、「脳Wi-Fi」が口が気持ちよく、何度シャウトしても楽しかったらしい。橘高さんが熱く「脳Wi-Fi最高!!」と語っていた。

Wi-fiについて、数年後には新しい技術が開発されて古い言葉になっているかもしれないね、という話に。さながら歌詞に出てくる「ポケベル」に時代性を感じるような。「若いコとドライブの歌詞にあるTwitterもそろそろ古くなっているかもしれないね」という言葉も。いやいやいやいや、Twitterはまだ大丈夫。これからもしばらく大丈夫であってほしい、とTwitterヘビーユーザーは思った。

また、オーケンがWi-Fiという言葉を知っていたことで得意がっていたが、「Wi-Fiが流通している」と口を滑らしてしまい、すかさずそこに橘高さんのツッコミが入り、会場が笑いの渦に飲み込まれた。わっはっはっ。

しかし己はオーケンを笑えない。己はあれを「うぃーふぃー」と読んでいた。

■人から箱男
このイベントの前日にあったニコ生での放送で、内田さんは初めて完成版の「人から箱男」のMVを観たとのこと。完成前に何度もチェックをするので、意外と完成版を見ていないことはあるそうだ。おいちゃんと「知らないカットがあったね」と盛り上がっていた。

■サイコキラーズ・ラブ
何故か曲の終わりに拍手がわーっと起こってわいわいひゅーひゅー盛り上がる声を入れる予定になっていたそうで、そういう盛り上がる音を録音していたが、結局使わなかったとのこと。それを聞いたオーケンが「曲に合わないでしょ!?」と困惑しつつ、「でもエヴァンゲリオンの最終回みたいだね」「あれはエヴァだ、って言われていたかもしれない」と言っていた。

■ハニートラップの恋
「サイコキラーズ・ラブ」で入らなかったわいわいひゅーひゅーが「ハニートラップの恋」に入ったとのこと。とはいえ使いまわしではなく、きちんとこの曲のために撮り直したそうだ。

オーケンが内田さんに「内田くんはわーとかひゅーとか入れるの好きだよね」と話したところから内田さんはパリピということになり、内田さんとパリピという言葉の組み合わせの破壊力により会場で爆笑が起きた。

■3歳の花嫁
歌詞の「フラッシュ・ゴードン」についての解説があった。「フラッシュ・ゴードン」はあのクイーンが音楽を担当した映画で、それはもう壮大なスペース・オペラになるはずだったが……とのこと。その仕上がりがトラウマになった者も多いそうで、映画「テッド」でもパロディにされているそうだ。また、「フラッシュ・ゴードン」は公開当時にも既にネタにされていて、「フレッシュ・ゴードン」なる映画が作られたそうだ。「観たことある人~」とオーケンが挙手を募ると内田さんが手を挙げる。見えなかったが観客もちらほら手を挙げていたようだ。ちなみにこちらはポルノだそうである。

■エニグマ
一発録りで作られているとのことで、それぞれ1チャンネルしか使っていないそうだ。

トコイトコイのところを仮歌では内田さんが「See Emily Play」と歌っていたのだが、内田さん以外の全員が「死にたい」と聴き取っていて、おいちゃんは「死にたい死にたい」という仮歌を聴きながら俺は死にたくない、と死にそうな気持ちで真面目にギターを弾き、オーケンは呪い返しのため呪いの言葉「トコイ」を歌って対抗したそうだ。ちなみに「See Emily Play」はピンク・フロイドの楽曲の名称である。

「アイアイアイアイ」の後の箇所はきちんと元ネタを調べてきっちり同じ綴りにしたそうで、意味は「これから殴りにいく」とのこと。また、それ以外の暗号部分も、今後「あ、これかあ!」とわかる展開があるそうだ。いったいどんな種明かしがあるのか実に楽しみである。

■告白
内田さんにとってのテクノであるYMOやクラフトワークの影響が強い曲。ここでオーケンより内田さんに、どんなテクノのイメージなのか具体的に教えてあげてほしいと要請があり、そこからテクノとテクノポップの違いなどが語られたが、最終的には「内田さんが作ったアルバムを聴いたら理解できる」という結論に至った。というわけで皆、内田さんの「SWITCHED ON KING-SHOW」を聴こう!

「ボクの告白は以上さ~」のところは最初無かったが、オーケンのリクエストによりこの部分が追加されたそうである。ちなみにここは喫茶店で話しているシーンだそうだ。

■奇術師
「太陽にほえろ!」をイメージしているのかと問うオーケンに、違うと答える橘高さん。強いて言うなら夕方のイメージとのこと。また、当初はエディのピアノソロはなく、ギターのみの構成だったそうだ。

橘高さんはもっと長くても良いと思っていたがこの長さにしたとのこと。ライブではもっと長くなる可能性もあるそうだ。聴きたい! ぜひ聴きたい!
また、ライブの構成を考えるうえでは、長くできる曲があると便利という話もあった。

■わけあり物件
クライアントの依頼を受けて作った曲で、「この曲のイメージで」とピックアップされた曲が「球体関節人形の夜」「踊る赤ちゃん人間」「くるくる少女」「再殺部隊」などなど。しかしクラシックを聴かない人にとってクラシックが全て同じに聴こえるがそれぞれ違いがあるように、橘高さんにとってはそれらは全て別の種類の曲なので、イメージを固めるのに苦労したそうだ。タイアップする作品のショートアニメを何時間も観続けてイメージを練り上げたそうだ。

■T2
プロレスラー入江茂弘選手の入場テーマ曲、ということでプロレスと縁の深い新木場や両国、入江選手が遠征したウィスコンシン州やサウス・ミルウォーキーといった地名が入っている。……これはもう、入江選手はたまらなく嬉しいだろうなぁ!

そうしてアルバム全曲にまつわるトークが終了し、いそいそとメンバーが椅子を立つ。今回は演奏はないけど……と断りが入りつつ全員マイクを持って始まったのは……「じーさんはいい塩梅」! 歌って歌って、と合唱を促され、朗らかな歌詞を歌い上げる楽しさ。橘高さんは「脳! Wi-Fi!!」とシャウトを挟み大サービス。最後にぺこんとお辞儀をして楽しい時間は終了した。あー、大満足。楽しかった。

ちなみに会場に貼られていたポスターはなかなかレアなものだそうで、なんと、アルバムにディオネアが印刷されていないバージョンとのことだ。これから配布されるものはきちんとディオネアが印刷されているそうで、ディオネアなしバージョンはここでしか見られないらしい。「貴重だから写真撮っといた方が良いよ!」「保存しといてなんでも鑑定団に出そうかな!」と盛り上がるメンバーは実に楽しげだった。

そのポスターがこちら。せっかくなのでイベント終了後に撮影した。うん、確かにディオネアが無い。

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