アルバム「4半世紀」(筋肉少女帯)感想(2013年5月28日)

筋肉少女帯のセルフカバーベストアルバム「4半世紀」を買ってきて、余韻に浸っている。想像を超える格好良さだった。過剰さに過剰を重ねた装飾美。しかし内容はシンプルだ。ライブで演奏することを前提にしているのか、はたまたライブ演奏をコンセプトにしているのか、筋少メンバーとサポートメンバーの楽器と声だけで曲が構成されている。オリジナルの「機械」にあった鐘の音は無く、「日本印度化計画」のシタール演奏はギターで再現されている。コーラスも女性のゲストは無い。そのせいか今までのアルバムではあまり前面に出てくることが無かったベースの音がかなり存在感を放っているのが印象的だ。

オーケンの歌も素晴らしい。正直な話、驚いた。失礼ながらこんなに表現力のあるボーカルだったか、と思わされたほどだ。アルバムを聴く前に読んだ雑誌のインタビューで「4半世紀」にはキーを半音下げた曲もある、とオーケンは語っていた。そのときはやや残念に思ったが、下げたことにより今のオーケンの持つ歌声の魅力が発揮され、当時のオーケンは持っていなかった歌い方によって、その曲の新たな魅力が引き出されている。年を重ねて変化することにより、別の味が生まれている。そうだ、年を重ねることは悪いことでは無いんだ。肉体は徐々に衰えるが、同時に技術と経験は積み重ねられていく。若い頃には持っていなかった色彩を披露することが可能になるのだ。

「自分達はここまで出来るんだぜ?」と見せ付けるようなアルバム。齢五十を目前にしたロックバンドの全力を見た。そのうえで、「まだまだ行けるんだろう?」と思わせてくれるのが嬉しい。きっとライブではさらにあっと驚くようなパフォーマンスを見せてくれるに違いないのだ。