前歯が勝手に死んでいた

2016年12月17日(土) 緑茶カウント:0杯

「前歯の神経死んでますね。喧嘩とかしました?」
「いや……身に覚えがないです……」

前歯が勝手に死んでいた。その死に己は全く気付かなかった。何も異常が感じられなかったので。

曰く。過去の治療がよろしくなく、神経が死んでしまったのではないかとのことで。歯科医師の言うとおり前歯の神経は死んでいたらしく、麻酔無しでゴリゴリ削られても全く痛みはなく、その事実に己は呆然としたのであった。だって何も予兆が無かったので。そしてその予兆が無いままに、綺麗なセラミックの覆いをつけるために十五万円かかると言われたので。

十五万円。

思いを巡らせる。いつか誰かに顔面を殴られた過去はあったかと。しかし若干荒れていて、荒れていても真面目さんと言われていたレベルの可愛らしい中学時代、クラスメイトと放課後に取っ組み合いをしていたが顔面を殴られるレベルではなく、生徒会長を務めていて、荒れるっても可愛いレベルだったよなぁと思い返すとやっぱり心当たりは無く、するとやっぱり過去の治療がよろしくなかったのだろうなぁと思うも、問題を指摘された歯の見た目は何も問題ないだけに遣る瀬無い。

しかし思えばその問題の歯の真上の歯茎は一箇所だけ茶色くなっていて、歯に穴を開けられ、溜まっていたという膿を吸い出されてからは健康なピンク色に戻ったので納得のいく次第である。そして思い返すのが前歯にちょっとしたむし歯が見つかった十年前のことで。あの治療以来歯の神経が死んでいたのか、と思うと何とも言えない気持ちになり、深いため息が出るのである。

十五万円で、歯。健康とは金のかかるものである。



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