蝸牛

2016年9月6日(火) 緑茶カウント:0杯

あぁ! ついに彼は干からびてしまった!!

「彼」と称するのは正確ではない。何故なら彼は雌雄同体だからである。彼の姿を初めて確認したのは果たしていつだっただろうか。梅雨入り前か、その後か。とにかく二ヶ月近く前。小指の先ほどの薄茶色の巻貝が我が家の玄関ドアーにぴったりとくっついていた。そうしてそれから出入りのたびに己は彼の姿を目にしつつ、こんなところにいて耐えられるのだろうか、と気になっていた。

天井があるため、雨が降っても彼に水は届かない。しかし耐えるようにじっと彼はへばりついている。己は毎日ドアーを開け閉めするたび、「まだいる」「まだいる」「生きてる?」と気にしながらも一滴の水さえ彼に運ぶことはしなかった。特に深い意味は無い。彼の存在は確かに気にはなっていたが、それ以上にはなりえなかったのである。

ある夜帰宅するといつもの定位置に彼はおず、視点を下にずらせばカラリと床の上に転がっていた。

殻の中を覗き込む。カサカサだった。ついにここに来て己は水を与えた。彼の体は縮んだままで、触覚が伸びることもなかった。この水はもっと早くやるべきだったよなぁ、と思いつつじっとりと重い色に染まる殻を眺めた。

今もつい、彼のへばりついていた定位置を確認してしまう。しかしそのうちその習慣も失われることを己は知っている。今はまだ見ている。そこには何も無い。今はまだ、ちょっと寂しい。



日記録0杯, 日常