本棚の前で
2016年7月7日(木) 緑茶カウント:2杯
少し前からブクログを始めた。読んだ本をメモする意味合いで使用しているのでレビューは特に書いていない。最近は昔読んだ本の再読が続いていて、日々青空文庫の便利さとkindleの使い勝手の良さを噛み締めている。
あぁ、でも太宰治の「女生徒」を読んだのは今日が初めてだ。電子のページをめくりながら思い出したのは高校生の頃、母が祖父の本棚を眺めながら話してくれたこと。母の父、即ち己の祖父は母が太宰を読まないよう隠していたらしい。それは多感な年頃に太宰を読んで影響を受けすぎてしまうことを危惧したためだそうだ。しかし、母は祖父の本棚から太宰を見つけ出してこっそり読んだ。そして祖父はそれを知ったが、止めることはしなかった。祖父は嬉しかったのだ。
ツルリとした画面に浮かぶ文字を追う。全くどうして、この人はこんなにも若い娘さんの内面をそのまますくい出したかのように書けるのだろう。確かあのとき、母も近いことを言っていた。言葉の仔細は忘れてしまったが、太宰という作家に対する何とも言えない気恥ずかしいような愛おしいような印象が乗せられていたことは覚えている。
あれからおよそ十五年。どうして当時「女生徒」を読もうと思わなかったのかは今では既にわからない。ただ、今読んでみて十五年越しに母の印象に納得する自分を確認している。そうして己は記憶の母に「確かに」と相槌を打ったのだった。