通販番組の快感

2015年1月25日(日) 緑茶カウント:3杯

普段、あまりテレビを観ない生活をしているが、最近はドラマ「怪奇恋愛作戦」と、アニメ「暗殺教室」を観るために、週末の深夜にテレビをつけていることが多い。しかし残念なことに今週は暗殺教室が放送休止。情勢に配慮してとのことである。あぁ、楽しみにしていたのになぁ。

何となく、諦めきれない気持ちでテレビをつけっぱなしにしていた。暗殺教室はアニメでどこまでやるのだろう。鷹岡回まで観られるだろうか、観たいなぁ、と思ったり、まったく別のことをしたりしながら時間は過ぎ、視界の端に映る番組も移り変わっていった。

すると唐突にテレビから、妙に明るい歓声が聞こえた。興味を引かれて画面を見ると、フライパンで釘やプラスティックを炒めている。通販番組だった。どんなに手荒く扱ってもこのフライパンはびくともしないし、料理は焦げず、ヘルシーに美味しく出来るということを強くアピールしている。そして皆がこのフライパンを絶賛し、このフライパンを手にしたことでいかに生活が幸福になったか語るのだ。

気付くと、己はわくわくしながらその番組を視聴していた。すごい! 高温の釜に入れても壊れず、コールド・コンプレッションテクノロジーや、ゴールド・アウターコーティングという何やら格好良い名前の技術が駆使されて出来ており、油を使わなくても綺麗に焼け、余熱調理も思いのまま。そのうえ全額返金保証つきで、番組終了後三十分以内に電話をすれば五千円も安くなる!

皆このフライパンを手に入れて幸福になっていた。己もきっと幸福になれるに違いない。このフライパンを手にするだけで、何もかもが上手くいく! そう錯覚しそうになるほど、「すごさ」と「お得」が畳み掛けてくる。そう、この畳みかけが心地良いのだ。

「これはすごいんですよ!」と言った直後に、もったいぶらずにその「すごさ」を見せてくれるのが実に良い。バラエティ番組ではCMを挟んで、CM前に流したVTRを再度流して、さらにCMを挟んで、ともったいぶりまくるであろうところで、全くもったいぶらずにすぐに「いかにすごいか」を見せてくれる。これは通販番組という性質上、限られた時間の中に、いかに「すごさ」と「お得」を詰め込んで、視聴者に買ってもらうかが鍵となっているためだろう。もったいぶっている余裕なんか無いのである。

結果、番組を観てて感じるストレスが無い。望むものを望むままにストレートに享受出来る満足感と安心感。その番組は二十分か三十分あり、同じ内容が何度か繰り返していたが、それでも飽きずに観続け、プラスティックを炒めても全く焦げ付かないフライパンの丈夫さを堪能し、結局最後まで観てしまった。

テレビを観なくなったのは、単に新聞をとっていないため番組表が手元にないことと、生活スタイルの関係であまりテレビに縁が無いためだと認識していたが、あのやたらとCMを挟んでは引き伸ばす手口にストレスを感じていたことも原因かもしれない。引っ張って引っ張って焦らして焦らしてもったいぶるのなら、せめてフライパンでプラスティックを炒めるくらいのものは見せて欲しいものである。次回予告程度で焦らされちゃあ焦らされる甲斐が無いんだぜ。



日記録3杯, 日常