一泊二日で諏訪大社めぐり 2

そんなわけで腹ごしらえをすませた後、無事諏訪大社上社本宮に到着。左の写真は渡り廊下のような場所を内部から撮ったものだ。友人は「御柱(おんばしら)」という、神様の依り代のような結界のようなそんな感じの宗教的意味合いを持った巨大な木の柱を一所懸命探して写真を撮っていた。御柱は二十メートル近い高さがあるので全身を写真に収めるのは難しい。自分も何枚か撮影したが、だいぶ後ずさりしなければならなかった。
本宮には小さな川が流れており、そこをオニヤンマが悠々とパトロールしていて自分は大変テンションが上がった。大好きなのになかなか目にする機会がないので、その分会えたときの感動は一入だ。大粒の緑の目玉が日の光を反射してキラキラと光ってとても美しかった。
本宮を出ると土産物屋が並んでおり、せんべいの焼きたてを売っている店があったので一枚ずつ購入した。自分はわさび味。友人は唐辛子味。わさび味はほんのりとした辛さとツンとした香りがちょうど良く美味しかったが、友人の買った唐辛子味は生半可なものではなかったらしく、唇を赤くして大層苦労しながら食べていた。自分が食べ終わった頃にもまだ友人の方は半分残っていて、途中でカルピスの購入というミッションを命じられた。いったいどれほど辛かったのだろうか。ちなみにこの読みは「からかった」でも「つらかった」でもどちらでもいい。
友人は何とか食べ終えることに成功したが、コンビニエンスで購入したお茶も追加で買ったカルピスも見事に中身が無くなった。たかだかせんべいのくせに何て恐ろしいのだろうか。それから我々は前宮を目指すことになったが、途中に天然記念物の笠松が二キロ先にあるよ、という看板を見つけたので寄り道をすることになった。こいつがまた大変だった。
先に結果から言うと笠松は見られなかった。看板の目指す方角は一本道の坂道で迷う心配は無かったのだが、まず一つ。笠松がどんなものか知らなかった。さらに二つ。この坂道も結構な急勾配だった。駄目押しに三つ。絶対二キロ以上は歩いていたのにそれらしきものは見当たらず、途中で雨も降ってきた。よって残念ながら引き返さざるを得なかったのである。
この笠松までの坂も前述の石段レベルのものだった。石段のように腿上げは強制されなかったが、石段のようにゴールが見えてはいないので、字面から想像する「笠松っぽいもの」を探しながらひたすらひたすら山登りをしなければならなかったのだ。振り向くと何十階建てもあろうかというタワーのてっぺんと目の高さが同じになっていて、見下ろせばカラフルな家々の屋根が坂の向こうに広がっていた。わぁ良い景色。
雨が降り出したことをきっかけに我々は山を下りることに決めた。しかしすぐに雨は激しくなったので、道路沿いの木の下で雨宿りをすることになった。二人とも傘を持っていなかったのである。だが、雨はなかなか止まなかったので半ばやけっぱちになりながら我々は雨の中を歩き出して帽子と鞄と服とタオルを濡らしながら山を下りた。
運良く全身がぐっしょり濡れる前に雨は弱くなり、次第に天気も回復していった。きっと日頃の行いが良いおかげだろう、と虫のいいことを考えつつ再び前宮を目指して歩を進める。とはいえ何か見つければ寄り道をするのはお約束のようなものなので、お約束に従って道の脇に見えた小さな鳥居にも立ち寄った。鳥居の先は草がぼうぼうに茂っていてまるで蛇でも出そうな具合だ。長い草を踏みしめて祠の前に立つ。どんな神様がいらっしゃるのかわからないので、とりあえず手を合わせて「お邪魔しました」と挨拶した。鳥居をくぐりながらそのことを友人に報告すると、友人も同じことを言ったそうである。何だかおかしかった。
前宮は森の中にあった。獣道のような草の上を歩き、四本の御柱や水眼(すいが)川を探し回った。ここの御柱の二の柱が、旅行中に見た御柱全ての中で一番美しく、強く印象に残った。白い柱なのだが他よりも青く見え、夜はぼうと光るのではないかと思わされた。何故あの柱だけがずば抜けて美しかったのだろう。
前宮を出てからは駅に戻り、茅野から上諏訪まで移動して予約していたホテルに泊まった。ホテルまでの道のどこかでイヤーカフスを失くすというアクシデントはあったが、何とか一日目は無事に終了した。まだ温泉と食事と花火というお楽しみが残ってはいるが、もう足を酷使することはない。通された部屋は三階で、窓からは諏訪湖がよく見えた。

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