一泊二日で諏訪大社めぐり 4
朝食後チェックアウトの一時間前まで友人は布団に倒れていたが、目をつぶっていただけで眠れはしなかったらしい。昨日友人が買った林檎サワーは冷蔵庫で未開封のままだったが、まさか朝から酒をかっくらうわけにはいかないので「掃除のおばさんにプレゼント」と称してそのまま冷蔵庫に置いてホテルを出た。
目指す先は諏訪大社下社秋宮だ。友人曰く、神楽殿が見所で、上社よりも人気があるそうだ。少し寂れた温泉街を歩いていると昭和チックな男性の歌声が拡声器のようなものから放送されていた。自分も友人もそれがどういうジャンルかはわからなかったが、街の雰囲気にとてもよく合っていると思った。街のいたるところに風鈴が大量に吊るされていたので、きっと風鈴が流行っているんだねとふざけたことを話しつつ秋宮へと進む。空は晴れ渡っていて、午前中とはいえ少々日差しがきつい。

それにしても写真を撮るのが下手だなぁとこうして見るたびつくづく思う。携帯電話のカメラで撮っているのだからできあがったものをちゃんと確認して撮り直すなり何なりすれば良いものを、何故こうも傾いたままなのだ。
秋宮は友人の言うとおり、午前中にも関わらず人がわいわいしていて賑わっていた。鳥居をくぐってすぐのところにある大きな杉は根入りの杉と呼ばれるもので、丑三つ時には枝を下げてあたかも眠っているかのように見えるそうだ。オジギソウみたいだなと思った。

こちらが神楽殿。手前の狛犬は日本一大きなものだそうだ。入ってすぐの場所にどっしりと構えているので、ここを本殿と間違えて参拝していく人が多いのだと諏訪大社の人が話してくれた。本殿は神楽殿の奥にあったが、携帯電話のカメラの方では撮影しなかったのでここに載せる写真はない。旅行中自分は携帯電話のカメラと使い捨てカメラの両方を使って写真を撮っていたのである。

秋宮を出て、次は春宮を目指すことになった。春宮は一部修復工事中であるため全部は見られないが、せっかくなので見に行こうということだ。写真は秋宮から春宮に行く途中の道で撮ったもので、屋根が見えることからわかるとおりずっと高いところを歩いていた。桜並木になっていたので春に歩くとさぞかし美しいことだろう。桜の花を楽しむことはできなかったが、木にはセミやらナメクジやらがいたので自分はテンション高く楽しんでいた。虫嫌いの友人は少し呆れていた。

工事中ということもあって流石に春宮は秋宮より人が少なかった。シートで覆われた幣拝殿の隣に簡易な仮拝殿が作られていたので、一応そこでお参りをした。友人は結びの松や御柱の写真などを熱心に撮っていたが、自分はカミキリムシでも見られやしないかと期待して山の方を登って行った。だっていかにもいそうな雰囲気なんだもんよ。

うろうろと見て回ったがカミキリムシは見つからず、セミだけを飽きるほど見て友人のもとに下りていく。万治の石仏というものがあるという話なので、それを見に行くことになった。春宮を出ると川があり、橋を渡ってすぐのところにあるのだが、結局石仏まで到着するのに三十分以上はかかった。川で遊んでいたからである。
最初は橋の上から川を眺めているだけだったのだが、橋を渡って少し進むと川まで下りられるところがあった。カンカン照りの暑さの中目の前で流れる透明な水は大層涼しげで、手を突っ込んでみると思った以上にひんやりとしている。これは足でも入れたくなるなと冗談で話していると本気で入れたくなってきて、靴と靴下を脱いでしばらくの間休憩していくことになったのだ。友人は足を浸して座っているだけだったが自分は川の真ん中手前まで歩いていった。場所によっては流れが急なので足をとられて転びそうになる。もしここですっ転がってずぶ濡れになったら笑えるよなー、と口にはしたが、幸運にもそれは現実にならずにすんだ。
水切りをしたり、石に引っかかって動かない木の枝に小石を投げて川の流れに戻そうとしたり、さんざん遊んでから足を拭いて当初の目的へと戻る。石仏の手前にお祈りの仕方が書かれた看板があったのでそれに習ってお祈りをしたが、微妙に間違えていたことに終ってから気がついた。

土産物を買いに行くために春宮からまた秋宮へ向かう道はあの有名な中山道だった。しかし日差しが暑い。きつい。よりにもよって黒い帽子と黒いシャツという組み合わせで来てしまったために尚更暑く感じるが、むしろそんな真っ黒な格好をした奴を見なければならない友人の方が視覚的に暑苦しかったことだろう。ちょうど昼時だったので、秋宮近くの蕎麦屋で昼食をとることにした。
秋宮を軽く回り直した後、土産物屋で土産を買い、外のベンチでアイスを食べた。さてこれからどうしよう。帰りの電車までまだ時間はあるが、他に行くところも思いつかず、地図を見てもこれといったものが見当たらない。じゃあとりあえず駅に戻るかということで駅の待合室に入り、なんとなーくぐだぐだと二時間ほどそこで過ごして電車に乗った。
帰りの電車の中で、友人の撮った写真をスライドショーで見ながら旅のおさらいをした。最後はぐだぐだだったとはいえかなり密度の濃い一泊二日の旅だったので、たった一日前のことなのに「ああそういえば」という言葉が出てくる。最後の写真を見終わってからは、二人ともくたくたに疲れていたので座席を倒して眠り込んだ。電車が新宿駅に到着し、一泊二日の諏訪旅行は終了した。
そしてそんだけ疲れてくたくただったってのに、そのまま飛び入りでオフ会に参加したってんだから自分は本当馬鹿だよなぁ。しかもお土産は新宿駅で買った東京ばなな。どこが諏訪土産かとつっこまれたのは言うまでもない。どっとはらい。
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