ただ、人でありたかった。

サイボーグになってしまった、俺の手記です。



■顔色

「顔色が悪いね、入れ替える?」

風邪を心配してもらえた、あの日の頃が恋しいです。
今は人工血液を交換されるだけです。


2006/12/1


■オフ

俺の体には、電源をオフにする機能があります。
「不具合」で「暴走」したときのためにつけられたそうです。
これを知ったとき、人間扱いされていないな、と知って涙が出ました。

電源を切る機能は心臓の手術をするときに一緒につけられました。
遠隔操作で電源を切れます。リモコンは医者と母が持っています。


2006/11/19


■感謝

たくさんのコメントとメールをありがとうございます。
ちょっとびっくりしています。

いただいたいくつかの質問に答えたいと思います。


●サイボーグから元の体に戻ることはできないのですか?

残った肉体の細胞をもとに、クローンで肉体を作って、
機械と挿げ替えていけばできるかもしれないそうですが、
それはそれで、「自分のクローン人間」になるだけだと思います。

●どこかで止められなかったの?

わかりません。きっと、俺が強い意思を持てば止められたと思います。
でも、診療室で、2対1で説得されると何も言えなくなるんです。

●お母さんはどうして機械化に賛成するの?

わかりません。
ただ、俺が「便利な機械」になるのが嬉しいみたいです。

●お父さんは反対しなかったの?

父は四歳の頃に他界しました。
母子家庭ですが、母の実家が資産家なので苦労はしませんでした。

●アイロンは狙ってやったのか。

わかりません。事故だと信じたいですが………わかりません。

●好きなタイプは?

髪の長い子が好きです。

●今は何歳なのか。

19歳です。


メールは少しずつ返したいと思いますので、待っててください。


2006/11/17


■始まり

左足の手術の前に右足の機械化の話を持ち出されたとき、
俺は最初、医者の言っている意味がわかりませんでした。

どうして健康な右足を切断する必要があるのかわからなかったからです。
もちろん、「いやだ」と言いました。

でも、結局承諾してしまいました。

「右と左のバランスがとれないから」
「左右の足の重さが異なると、成長期の体に悪影響が生じるから」
「左足の性能が良すぎて、かえって歩きづらいから」
「リハビリがずっと楽になるから」

幼い子供を教え諭すように医者にそんなことを言われたら、
まるで自分が間違っているような気がしてしまって、
「いやだ」と言えなくなりました。
しかも、母も医者の意見に賛成していて、二人で説得するんです。
「はい」と言うしか、ありませんでした。

機械になった両足は確かに快適でした。
あのときは「医者と母の言うことは正しかった」と思い、
機械の足に満足していました。
何より、もう一度立って歩けることが嬉しかったんです。

「人の足と同じ重さの軽い機械の足もあること」
「性能をおさえることはいくらでも可能なこと」

この二つの事実を知ったのは、右肩にひどい火傷を負った後のことです。

火傷の原因は母の持っていたアイロンに誤って触れてしまったことでした。
そして、俺の両手両足は機械にされ、
ついには「きっかけ」もなしに機械化が進められるようになりました。


2006/11/3


■ブログ

初めまして、アキヒトと申します。
17歳のとき、交通事故で左足を失いました。

失くした左足のかわりに機械の足をつけられましたが、
無事だった右足も機械に挿げ替えられました。

今は、脳と生殖器と消化器系しか天然の部分が残っていません。

このブログは、俺自身を振り返るために始めました。
よろしくお願いいたします。


2006/11/1

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★プロフィール
 
名前
アキヒト
性別
都道府県
東京都
自己紹介
 
17歳のとき、交通事故で左足を失いました。新しく機械の左足をつけることになりましたが、無事な右足も機械にされました。以後、少しずつ体は機械化され、気付けば脳と生殖器以外は全て機械になってしまいました。どうして俺はサイボーグにされたのか。どこで間違えてしまったのか。このブログに書き連ねていこうと思います。