1月      

2011年1月1日 (土) 緑茶カウント:0杯
ついに明けたか。と、いうわけで明けましておめでとうございます。去年も今年も一昨年も、変わりなくマイペースでやってくつもりでありますので、お暇なときにでもお付き合いいただけたらと思います。


2011年1月3日 (月) 緑茶カウント:0杯
初詣にも行っていないのに初ライブに行ってきた。昨日幼馴染と遊んだとき、そいつは明日御祓いに行くと言っていたので、ついでにこちらの分も祓っといてもらえないかと頼んであっさりと却下されてしまったのだが、そうして御祓いもせず辿り着いた先が吉祥寺のSTAR PINE'S CAFE、ライブタイトルは「小畑ポンプ芸歴20周年記念興行第弐弾【電車セッション おかわりの回 フューチャリングただすけ】」だ。そして内容はと言うと、年の初めから死体に鳥葬に失恋に植物人間、御祓いどころか穢れも倍増な大変素晴らしい曲目であった。

以下、やや曖昧なセットリストである。


クレイジーケンバンドの「オレの話を聴け〜」という歌
アタイばっか

あのこが遊びにくる前に
喰らわれた女の歌
死体のこもれ火

パティー・サワディー

(ぽんすけ曲一曲目/空と雲と君と(?))
(ぽんすけ曲二曲目)

ヨロコビとカラスミ
夢見るショック!仏小僧

お別れの背景
OUTSIDERS

人間のバラード

〜アンコール〜

電車のヘイ・ユウ・ブルース
アザナエル


ところで今回、己は夜から予定があるため十八時にはライブハウスを出なければならなかった。しかし開場は十四時。開演は十五時。タイムリミットは十八時だが、三時間もあれば何とかなるだろう。せいぜい二時間半といったところではなかろうか、と読んでいた。読んでいたのだが、甘かった。

大変名残惜しかったがアンコール一曲目のヘイ・ユウ・ブルース途中で己は退場し、ライブハウスを後にした。最後までいたかったが仕方が無い。だが致し方の無いことだ。さしもの己もMCがこんなにたっぷりあるなんて予測することは不可能だ!

小畑ポンプさんがメインのイベントでこのようなことを言うのもいかがなことかと思うが、それでもあえて言うならば、MCならぬトークタイムはゲストが盛りだくさんののほほん学校を見ているようでもあった。今回セッションメンバーが五人だったのだが、うち三人が喋る喋る。そして二人も振られれば喋る喋る。演奏そのものよりもMCの時間の方が長かったのではないかと思うほどである。結局、ライブは三時間ちょっと行われたそうだが、その間演奏されたのは十五曲前後である。普段の筋少のライブは長くても二十曲やって二時間半といったところだ。筋少のMCも決して短くは無い。いかにMCが長かったかおわかりいただけるかと思う。

トークは抜群に面白く、わっはっはっはと笑いながら聴いてはいたが、今回ばかりはタイムリミットがあったので、後半は特に早く曲を! 早く曲を! と願いながら時計を見つつハラハラしていた。これでアンコールラストの曲がお別れの背景だったら己は涙を流していたかもしれない。

と、言うほどに楽しみにしていて、今日やってくれんかなやってくれんかなと期待して、イントロを聴いて大喜びしたのが「お別れの背景」なのである。お別れの背景が聴きたくてこのライブに来たと言っても過言では無い。筋少以外のオーケンの曲で、一、二を争うほど好きな曲なのだ。これを聴けて本当に良かった。一度生で聴きたいと思っていたのだ。嬉しかった。嬉しかったなぁ。

「お別れの背景」はとある恋人同士の二人組みが街へと出かけ、楽隊が歌い紙吹雪が舞い、ファンファーレが鳴り怒声が飛び交う華やかで騒々しい人ごみの中で、ひっそりと繋いだ手を離してお別れをするという曲だ。これの一番と二番の対比、称えられる英雄と怒声を浴びせられる罪人の描写が悲しい。そして何より切ないのは、英雄が昔人を殺したこと、罪人が昔人を愛したことを知っていながら、「だけどもういいじゃないか」と突き放すように、共に泣いたり笑ったりした恋人も、他人として思い出の中に消えていくことだ。「僕達」が「僕と元恋人」になる瞬間が描かれている曲なのである。

感無量の一曲だった。ここからOUTSIDERSに繋がるのがまた、切なくて良かったなぁ。OUTSIDERSを聴く度に感じるのはオーケンのマイノリティへの優しさだ。それは守ってあげようとしたり、権利をあげようとしたりするのとは違う、ただ存在を認識するという形の優しさだ。力強さは無く、やるせないばかりだが、やるせなさに同調してくれる。だからと言って慰めてはくれない距離感が実にオーケンらしいと思う。

今回初めて聴いたのは「あのこが遊びにくる前に」と「死体のこもれ火」である。初めてというのはライブで初めてでは無く、本当に初めてという意味だ。というのも自分は電車のアルバムはライブ盤である電車英雄しか聴いていないからである。では何故二枚のオリジナルアルバム「電車トーマソ」と「勉強」を聴いていないかと言えば、持っていないからである。持っていない理由はと言うと、廃盤になっているからである。

あぁ、思えば筋少が再結成する前のこと。まだ筋少のアルバムを集めきる前で、筋少以外のアルバムにはさして興味が無かった頃。あの頃、タワレコで、棚に刺さった電車のアルバムを手にとって「うーん筋少じゃないんじゃなぁ」とレジに持って行かずにそっと棚に戻した自分の行動を思い返すと、何てもったいないことをしているのだと説教してやりたくもなるが、出会いにはタイミングがあること、悔いたところで仕方が無いことも理解しており、それでも、あぁもったいないことをした、と思わずにはいられない複雑な心境。次の出会いはいつだろうか。

閑話休題。この初めて聴いた二曲だが、特に「死体のこもれ火」がすごかった。妖しい迫力のある曲で、キラキラしたキーボードの音が気味の悪さを強調し、それでいて優しく美しいのだ。これを聴いてますますオリジナルアルバムが欲しくなってしまった。中古屋を一所懸命回って探さなければならないな。

電車は筋少とも特撮ともまた一風変わった、オーケンが言うところの「ひねくれた」曲が多い。切なさともの悲しさと、やるせなさと妖しさと、優しさと気味の悪さが渾然一体となり、異様な迫力を持ってふらついている。言うまでもなく正月らしさは微塵も無い。が、紅白や正月特番バラエティの浮ついた華やかさにも少々飽きてきたのも事実。御節も良いけどカレーもね。一月三日に電車のライブを観るのはなかなかちょうど良いタイミングの毒の処方と言えるだろう。

MCの方でも毒の効いた発言があったなぁ。今年の正月、餅を食べて死んだ人間が東京都だけでも六人いるという話になったとき、オーケンが「正月に餅を食べるのは、昔からのそういう、人口の調節というか、正月に老人を殺そうみたいな」というような危ない発言をしていて笑えた。

そして今回、MCで大いに盛り上がったのがアルフィーの話題である。キーボードのただすけさんはアルフィーのキーボードもしており、そういった繋がりでアルフィーの話が出てきたのだが、アルフィーはライブ中に物販の販売を促進するためにコントをやるのだそうである。そうである、と言いつつ自分は妹がアルフィーファンであるため、そういった話は聞いたこともあったのだが、まさか一回のライブで二十分近くもコントの時間があるとは思わず、驚いた。ちなみに台本は高見沢さん作だそうである。

その流れで、アルフィーほどの大御所だってここまで物販に力を入れているんだから筋少も何かしなくてはいけない、筋少も最近ライブ中に物販のためのコーナーを作ったが、メンバー個人の物販を槍玉に挙げてネタにしたらそちらばかりが売れてしまって、筋少物販の売り上げは上がらなかった、なんて話をしていた。

あと、アルフィーがライブ中にコントをやる話を聞いたり、アニメの世界のライブを観たりしたことで、ライブってのは何をやっても良いのだと気付かされた、なんて話もしていたかな。その気付きが今後のライブに反映されることはあるのだろうか。コントが導入されたらどうしよう。

これもまたアルフィー関連で。ライブ中のコントの話から、オーケンが有頂天もライブ中に芝居があり、筋少のおいちゃんも有頂天に在籍していたのだが、いつの間にかギターを弾く時間よりも芝居の稽古をする時間の方が長くなり、それが嫌になって有頂天を辞めたという、一部で有名な話をしていた。そういえば有頂天もまだ聴いたことが無いんだよなぁ。

ライブの始まりはクレイジーケンバンドの「おれのはなしをきけ〜」という歌詞の歌を一人ステージに登場したポンプさんが歌い、曲が流れる中で他メンバーが登場、全員揃って配置につき、中央に立ったオーケンがまた「おれのはなしをきけ〜」と歌うという、ちょっと変わった演出だった。オーケンが今年最初にステージで歌った歌はクレイジーケンバンドだそうである。おれのはなしをきけ〜。

ライブハウスは一階と二階に分かれていて、一階にも二階にも丸いテーブルと椅子が置いてあり、食べたり飲んだりしながらライブを観られるようになっていた。カップに入ったコーヒーなどを飲めるのが普段のライブハウスと違ったところか。とはいえ己はいつものようにハイネケンを呑んでいたのだが。後ろの方の番号だったため、見えるかどうか心配だったが、段差があったおかげで見晴らしも良く、耳も目もしっかり満喫することが出来た。スタンディングも好きだが、こういうまったり楽しめるのも良いものだよな。楽しかった。


2011年1月4日 (火) 緑茶カウント:3杯
こんばんは、人間です。人間ではあるが、ここ一週間ほど顔を洗うごとに少しずつ脱皮が進行していて、今日も今日とて脱皮は進み、風呂上り、水気を拭こうと顔に触れたら何と驚き、皮膚がもちもちになっていて大笑いした。面の皮が数枚剥けて新しい皮膚が出てきたらしい。一時期は皮膚が剥けすぎて顔面がヒリヒリと痛んだがそれもどうやら落ち着いたようだ。洗顔中に石鹸と湯で溶けて丸まった皮膚の塊がボロボロと落ちてきたときは何事かと思ったものだが、何事も無くて良かったよ。あぁ一安心。良かった良かった。


2011年1月5日 (水) 緑茶カウント:1杯
静かに動揺している。父方の祖父が亡くなった。とりあえず、明日に備えてシャツにアイロンをかけ、身だしなみを整え、着る服を用意しながら、無闇にバタバタと一人部屋の中を動き回っていた。スピーカーから流れる音楽が耳障りだが、消す気にはなれず流れるままに放置している。今はまだ涙は出ない。ショックはある。動揺している。


2011年1月7日 (金) 緑茶カウント:1杯
生まれて初めて死人の顔を見た。生まれて初めて人間の骨を見た。生まれて初めて人間の骨を拾って骨壷に納めた。白文を読む知識も、シベリア抑留を生き抜いた知恵も、美術品を愛した心も、水曜日の夜にフッと消えてしまったのだと実感し、悲しくなったのは死に顔を見たときだった。涙が流れた。

昨日からずっと歯が痛む。虫歯は無いはずなのに、奥歯も犬歯も前歯も全てがズキズキと痛むのだ。熱いお茶が歯にしみてつらい。とはいえ、祖父は安らかな寝顔をしていた。眠るように亡くなったそうだ。九十五歳の大往生。たくさんの花々に囲まれて、大勢の人に見送られて出棺した。穏やかな空気が流れていた。

お疲れ様でした。ありがとうございました。


2011年1月8日 (土) 緑茶カウント:4杯
断続的に続く歯痛に耐えかねて歯科に行ってみたところ、親知らずが生えていることが判明した。しかもレントゲン写真を見せてもらうと、完全に横になった状態で生えていて、奥歯の寝そべり具合に思わず笑ってしまった。他の歯はきちんと居住まいを正しているというのにお前だけ横になりやがって、そのうえ手前の奥歯をぐんぐん押して痛みを生じさせるとはいったいどんな了見だ。この親知らずならぬ祖父知らずめが。けしからんにも程がある。

それにしても痛い。歯が痛むと食事一つも億劫になるから困りものだ。腹が減るから我慢して食事はとるが痛いものは痛い。口内で繰り広げられる痛みと旨味の共演に腹立たしさすら感じながら腹を満たすために飯を喰らう。立たせたり満たしたり。忙しいものだよ。あぁ痛い。痛いってんだよちくしょうめ。真っ直ぐ生えてきやがれよ。あぁ、痛い。痛いなぁ。痛いってば。もう。痛い。


2011年1月9日 (日) 緑茶カウント:4杯
本日は必要なものを買出しに出かけ、帰宅してからは音楽を聴きつつ絵を描いて過ごしていたのだが、絵を描く前に、買って来た衣類を収納ケースに仕舞うべく紙包みから取り出して思わず絶句してしまった。上着、下着、靴下、靴に至るまで、全てが黒一色なのである。しかも図柄も入っていない、本当に真っ黒なのである。無論、購入の段階で本日は黒しか買っていないことは把握していたが、こうして目の前に広げてみるとその迫力に圧倒される。実際に着用する際にはそれぞれを別の色の衣類と組み合わせて着るので黒尽くめになることはないが、それにしても黒ばかりって、何だこれ。己は平沢進にでもなるつもりか。いっそ次のライブでは全身を真っ黒に仕立て上げて参戦してやろうか。やめておこう。


2011年1月10日 (月) 緑茶カウント:5杯
何も文字が浮かばない夜もある。そんなときには寝るに限る。明日は歯科へと参る日だ。さて、このお騒がせ者の親知らずはどのような処置をとられるか。さらに、もしかしたら左下だけでなく、左上の親知らずも痛みの発生源ではないのか、と気付いてしまったことへの対応も明日には知れるかもしれない。痛むのは困る。よって痛みの原因は明らかにされねばならない。とはいえ同時に明らかにされたくない思いもあるのは、明らかにされた原因を取り除く処置が、痛そうなのが嫌だなぁ、と思うからで、だからと言ってずっと痛むのも困るのだけれど、以下ループ。寝られないほどには痛まないことがせめてもの救いか。あくまで今のところだが。


2011年1月11日 (火) 緑茶カウント:2杯
午年から始まり馬刺し、ジンギスカン、猿の脳みそ、鶏の丸焼き、ホットドッグ、牡丹鍋、鼠の唐揚げ、スキヤキ、虎のバターのパンケーキ、そして今年はうさぎの料理。残すは辰年と巳年だけ。その年の干支を調理した絵を描いて送りつける、年賀状という名のテロル。あぁ、己は十年間もこんなことをやっていたのか。あぁ、己は十年前から何も変わっちゃいねぇのだな。時の流れの中で流れない時に思いを馳せると感慨深い。

コンプリート手前ではあるが、辰年の絵は今年を飛ばして遥か先、十二年後に描くことになった。果たして十二年後の己は自重するだろうか。しないだろうか。いかがかな。


2011年1月12日 (水) 緑茶カウント:2杯
一時にパソコンの電源を落とし、布団に入れば翌朝の目覚めがすこぶる良いことに気付いたので、今後は一時には必ずパソコンを閉じようと決めたのに、現在一時四十四分。と、いうわけで急いで寝る。買ったばかりのあずきのチカラを装着して急いで寝る。急いで寝るんだったらって四十五分だおやすみなさい。


2011年1月13日 (木) 緑茶カウント:0杯
明日の平沢進のライブが楽しみなあまり、妙なテンションになってしまっている。初めての生平沢。略してナマサワ。別に略す必要は無い。と、いうわけで万全な姿勢で臨むのである。忘れ物は大丈夫かな。


2011年1月14日 (金) 緑茶カウント:0杯
行ってきた。平沢進のライブ、「東京異次弦空洞」二日目に。ライブが終わって既に何時間も経っているというのに未だぼうとしたままだ。しかし体内では神経が興奮し、心臓がドクドク動いていて落ち着かない。ライブの興奮と感動と、一年間に渡って続けられた還弦イベントが終わってしまったことを惜しむ寂しさと喪失感、これらがない交ぜとなるが故の作用である。

あぁ、終わってしまったんだなぁ。

思えば一年半ほど前か。Twitterで何やら騒がれている人がいるぞ、と知って興味を持ったのがきっかけだ。どんな人物かよくわからないままにフォローして、興味を持ち、氏の情報を調べて公式サイトに辿り着き、彼の書く文章に魅力を感じてSP-2本を購入。そうだ。音楽よりも先に文章を好きになったんだ。後にアルバムに手を出して、どこかで耳にした夢の島思念公園の歌声を思い出し、「あぁ、この人か」と気付きはしたが、最初は文章だったのだ。

まず平沢進という人の情報を得ようと検索をかけ、Wikipediaなどでざっと調べたときは、「師匠」「エコ」「反戦」「ベジタリアン」「メンバー変更が頻繁」といったキーワードのコンボから、若干引いたのも今となれば懐かしい。「どうしよう。変な人なのかもしれない…」とこれ以上深入りして良いものか迷ったが、結局変な人ではあるものの、大変好ましいタイプの変な人であることがわかった。今、自分にとって一番「興味深い人」は平沢進である。好奇心がそそられる。何て面白い人なのだろうか。

そうして平沢進という人物にはまり、アルバムを買い、DVDを買い、ついに念願のライブに参戦することが叶ったこの喜び。ライブハウスという一つの空間、同じ空間にこの興味深い人がいて、己の目の前で実在することを証明してくれている。何て素晴らしいことだろうか! そのうえ、大好きな音楽を、歌声を! 生で聴くことが出来るのだ!!

あぁ、だめだ。興奮が収まらない。サイン会で初めてオーケンを見た後も、こんな感じだったなぁ。あのときも数日体内で異常作用が働き続けていたなぁ。

そろそろライブの感想を書こうか。以下、公式サイトから持ってきたセットリストである。


「凝集する過去 還弦主義8760時間」フィナーレ

東京異次弦空洞

2011年1月14日(金) 18:00 開場 19:00 開演
会場: SHIBUYA-AX
ゲスト: Neng, Rang

01: アート・ブラインド (Neng & Rang) / 突弦変異
02: DUSToidよ歩行は快適か? / 突弦変異
03: CHEVRON / 突弦変異
04: MOTHER / 変弦自在
05: Another Day / 突弦変異
06: ミサイル / 突弦変異
07: サイレン*Siren* / 変弦自在
08: 金星 / 変弦自在
09: GOES ON GHOST / 突弦変異
10: 夢みる機械 (Neng & Rang) / 変弦自在
11: バンディリア旅行団 / 変弦自在
12: LEAK (Rang) / 突弦変異
13: Solid air / 突弦変異
14: ASHURA CLOCK / 突弦変異
15: 環太平洋擬装網 / 変弦自在
16: トビラ島(パラネシアン・サークル) (Neng) / 変弦自在

EN
17: WIRE SELF / 突弦変異
18: ルクトゥン OR DIE (Neng & Rang) / アルバム未収録 (2001)


FCの先行販売で入手したものの、番号は千より先の遅い方。それが己のチケットだったが、何だかんだで前から五列目に行くことが出来た。下手側の中央寄りで、特にASHURA CLOCKからは波が動いてびっくりするほど視界良好。それまでも平沢さんの胸から上や、ギターを弾く手元を見ることは出来ていたのだが、ASHURA CLOCK以降は常に頭から爪先、周辺の機材まで、ばっちり眺めることが出来た。感無量である。

ところで、今回はライブ慣れしていない人が非常に多かったように思う。平沢ライブに来たのはこれが初めてなので今までどうだっだかは知らないのだが、それにしても大荷物をスタンディングスペースに持ち込んで足元に置いたり、上着を抱えたまま立っている人が多かったなぁ。開演直後の押しでも、「ちょっとこれどういうことなの?」「信じられない!!」と憤慨している人がいた。自分も初めて筋少のライブに行ったときは波に飲み込まれて「何じゃこりゃ!?」と驚いて慌てたものだが、今日は「何じゃこりゃ!?」な人が大勢いたために、ライブ慣れした人々の波に乗せて何となく皆あわあわ移動とならずに、塊と塊が衝突してしまっていたように感じられた。動くことを前提としている人達としていない人達の衝突である。ちょっとした混乱が起きていたよな。

閑話休題。さて、「凝集する過去 還弦主義8760時間」のフィナーレを飾るこのライブ。当然8760時間中に作られた二枚のアルバムの曲が演奏されることになるわけだが、中でも己が一番期待していて、一番聴きたかったのは、「金星」である。

本当に嬉しかった。

椅子に座り、組んだ足の上にアコギを乗せ、爪弾きながら歌う平沢進を目の前にしたときの感動は並大抵のものでは無かった。一音ちょっとおかしかったな、と感じられたところもあったが、そんなことはどうでも良い。あのギター嫌いを自称する平沢が。泣きはしなかったが、泣くかと思った。愛らしい音色だ。優しい声だ。胸がいっぱいになった。

金星の他でも、アコギを爪弾くシーンはあった。「あの」平沢進が珍しいことである。さらには、トビラ島でアコギを爪弾いた後、機材が設置されたステージセットが退場し、スタンドマイク一本を前に歌い叫ぶ姿には、圧倒以外の言葉は出ない。様々な怪しい機材に囲まれ、それらを操る姿も格好良いが、だからこそのシンプルイズベストの演出。音楽使い平沢進が、ボーカリスト平沢進の面を曝け出した瞬間を見せ付けられたように感じた。この人の歌が素晴らしいことは知っている。知っているが、こうもまざまざと見せ付けられると、ついには、圧倒されるより他に無くなってしまうのか。

書きたいことはたくさんあるが、どこから手をつければ良いのかわからない。「DUSToidよ歩行は快適か?」「MOTHER」「Another Day」が前半に出てきたときには、「もうこれをやってしまうのか!」ともったいなくも感じたものだ。「夢みる機械」のイントロはライブ用にアレンジされていて、あのイントロがピアノの重低音で奏でられる中、NengさんとRangさん、そしてテスラコイルが登場する。そして同じテンポのまま機械的な音に変貌し、平沢進の語りが始まるのだ。ゲストであるNengさんとRangさんのパフォーマンスがまた面白く、平沢を見たり二人を見たり、しまいにはどっちを見れば良いのかわからなくなって楽しかったなぁ。

イントロが変わっていたものと言えば「LEAK」である。言葉で説明できないのがもどかしい。原曲よりもずっと長くなっていて、始まりは原曲とは違うものなのだが、だんだんと近付いてきて「LEAK」になるのである。このバージョンの音源も欲しいくらい、格好良いものだった。

「Solid air」のギタープレイは凄まじかった。一段高いステージからぴょんと飛び降り、客の近くにやってきてくるりと回ってくれたときには凄まじい大歓声が起こった。

ただちょいと残念だったのは、曲と曲の繋がりがあまり無いというか、一曲一曲が全て分断されているように感じたことだ。もうちょっと繋がりがあったらより燃えただろうなぁ。

それと、「あれ、ここも音源に歌わせてしまうのか」と感じる部分が結構あった。平沢さんの生の声で聴きたい部分が音源で流されるとやや、寂しい。とはいえ、もしかしたら体力的な問題なのかもしれない。五十六歳だものなぁ。無論、それにしたって十二分にすごいのだが。

そうそう、「DUSToidよ歩行は快適か?」のオリジナルの「でぃーやっでぃーやっでぃーやいやいやい」にあたる部分での、レーザーハープの手振りが優雅で非常に美しかった。舞っているような手の動きに思わず見惚れてしまったよ。あの動きはDUSToidだけだったなぁ。

レーザーハープを見るのは初めてだったので興味深く眺めていたのだが、あれには「切る」「握る」「はたく」「くすぐる」「すくう」動きがあるようだ。個人的には「切る」と「すくう」が好きである。

大合唱が起こったのは「Another Day」と「ルクトゥン OR DIE」。特に最後の「ルクトゥン OR DIE」では、タガが外れたかのように観客が大爆発。一曲中ずっと飛び跳ね、拳を振り上げての「ルクトゥン OR DIE!」の大合唱。それにしてもアルバム未収録曲がキラー・チューンってのもすごい話である。あんまり無いと思うのだが。

最後のMCはNengさんとRangさんの紹介から始まり、Twitter継続の嬉しい告知と、Twitterでの「唯じゃない」発言によりフォロワーが増えて開催するに至った今回のライブを「思わぬアクシデント」と称され、「マイナーなのにこんな大勢の前に引きずり出されて憤慨」といった素敵な発言をいただいた。ステージから一度下がりながらも、また戻ってきて客席に向かってサービスするRangさんと話すときには、大変珍しい笑顔なんてものも見られて嬉しくも驚いてしまった。平沢進の笑顔だ!

あと、今回のライブに隠されたメッセージを教えてくれもした。それは「使ったものは片付けましょう」であるとのこと。そうそう。ステージ上に、機材やアコギの設置された「動かせる」ステージがあり、それが曲に合わせて幕の中から出てきたり引っ込んだりしていたのだが、まさか平沢進本人がせっせとステージを引っ張ってくるなんて誰が予想するだろうか。特に、本編ラストのトビラ島でスタンドマイク一本のみとなったステージに、アンコール後せっせとでかいステージを運んできたときには笑ってしまった。あの灼熱の歌に圧倒された直後のことだから、特におかしかったんだな。全くサービス精神旺盛な人である。

このメッセージに歓声が上がり、「当たり前のことを言っただけですよ」としれっと答える平沢進。面白いなぁ。最後の最後には「帰りなさい」と帰宅を促し、「えーーーー!!」という声が起こる中、颯爽とステージから去っていった。ヒラサワさんがいなくなった後も拍手はしばらく鳴り止まず、ダブルアンコールを望む声が続いたが、終演のアナウンスが流れ、惜しまれながらライブは終了した。

あぁ、本当に楽しかった! 日記に吐き出して少々落ち着いたが、まだまだ余韻の中にいる。この人のライブを観ることが出来たことが心から嬉しい。平沢進は実在するんだなぁ、なんて言ったら笑われるかもしれないが。実感し体感出来たことがこの上なく嬉しいのだ。この様子ではなかなか平静に戻れそうにないな。


2011年1月16日 (日) 緑茶カウント:3杯
「昨日は何してたんだっけ」
「平沢進のライブを観に行ったんだよ。あ、その前に中野ブロードウェイにも行ったかな」
「いいなー。俺中野行ったことない。行ってみたい」
「じゃあ行く?」
「行く」

まさか二日連続で中野ブロードウェイに行くことになろうとは思わなんだが、一人の友人の希望によって、皆でぞろぞろと中野ブロードウェイを歩いて遊ぶことになった。おもちゃやフィギュア、古本を眺めて楽しみ、今度は一人で来たいねという誰かの言葉にそれぞれが納得し頷いたのは趣味が各々バラバラだから。その後、居酒屋へ行き、呑んだ後にはコンビニエンスストアーに寄って友人の家に上がりこみ、こたつに浸かって就寝した。一番先に寝たのは家主だが、己ともう一人、中野に行きたがった友人はまだ起きていて、天井を眺めながら馬鹿話をしていた。

「実はさ…」
「うん」
「この部屋には妖精がいるんだよ」
「マジでか」
「マジマジ。あのさー、棚の上に黴生えた餅が無造作に放置してあったじゃん」
「あったあった」
「あれ妖精の食い物。Mが飼ってんだよあれ」

Mとは家主のことであり、黴の生えた餅とは台所の脇にある棚の上に敷かれたタオルに剥きだしのまま放置されていたもので、カピカピになったそれを家主が寝た後に発見した我々は、これは捨てるつもりか食べるつもりかと悩みながら餅の処置に悩んでいたのである。そして信じられないことだが、翌朝その餅は食べるつもりで放置されていたことが判明した。余談だがMの家の急須は内部に黴が発生し、蓋を開けると糸を引いていた。恐ろしいことである。

「妖精って今どこにいるの」
「エアコンの上。ほら、Mがリモコンどこにあるかわかんないって言ってたじゃん」
「言ってた言ってた」
「あれはさー。エアコンを稼動させると妖精が困るからなんだよ。妖精のためにリモコン隠したんだよ」
「マジかー。じゃあしょうがないなー」

こたつはついているものの、部屋の中は極寒であったため、寝ている家主を起こしてエアコンのリモコンの所在を確認しようとしたのだが、ずっとエアコンを使っていないためわからない、と返答されてしまったのである。仕方無しに我々は、部屋の中でホッカイロを背中に貼り、ようやく暖を取ったのだった。

「妖精は今何してるの」
「怒り狂ってる」
「何で怒り狂ってるの」
「この部屋に妖精は三人いてー。マルさんバツさんサンカクさんって言うんだけど、エアコンの上にいるのがマルさんバツさんなんだ。で、サンカクさんは冷蔵庫の中にいる。さっきサンドイッチ入れるときに間違えて閉じ込めちゃったんだよね」
「何やってんだよ。出してやれよ!」
「それでサンカクさんが閉じ込められたから怒り狂っててさー」
「そりゃ怒るわ」
「だからさ、寝たら襲われるよ。刺されるから。この場にいる全員。妖精は我々のことをこたつから生えている一つの生物だと思ってるから全体攻撃してくるよ」
「ちょっと冷蔵庫開けてサンカクさん出してきてよー」
「寒いから無理だわー」

サンドイッチは翌日の朝食用にコンビニエンスストアーで購入したものだが、冷蔵庫の中には冷蔵庫に入れてはいけないものも入っていて、なかなかカオスな具合になっていた。

「妖精はー。足が三本あってー」
「うん」
「一本は腰の、側面の方から生えてるんだよね。で、腕は無いの」
「腕無いんだ」
「あ! でも指はあるよ。たくさんある。指だけがー、足の甲とかー、腹とかにうじゃうじゃ生えてて、イモムシみたいににじにじ捩って移動するんだ」
「ちょっと気持ち悪いんですけど。そんな妖精嫌なんですけど」
「あ、そんでこれは内緒の話なんだけど」
「うん」
「指毛がたまに生えてる」
「あー。でも生えてるでしょ、指毛は」
「いや、妖精は女の子だからね。抜いたりするから。でも残ってるのもあるの。ほーら今指毛のことばらしたからエアコンの上で怒り狂ってるー」
「やめろよーばらすなよーマルさん達怒り狂ってるじゃないかよー」
「そんでー。頭は四つでー。だんご三兄弟を縦にしたような感じに繋がっててー」
「トーテムポールみたいな感じ?」
「そうそう。でも顔があるのは一番下だけでー。けど指は全部生えてる。特におでこのあたりに」
「マジかー妖精気持ち悪いわー」
「髪は黒だけど上から二番目だけ茶色に染めてる。お洒落だから。あ、一番美人なのはマルさんな」
「マルさん美人なんだ。でも指生えてんだろー」
「あと羽も生えてるよ。五枚。四枚は昆虫の羽根でー」
「お前今趣味入れただろ」
「ばれたか」
「ばれるわ」
「そんでー、一枚は鳥の羽なんだけど、翼じゃなくって、翼を形成している羽のうちの一枚、あれがぴょいんって唐突に生えてる」
「マジでかー」
「マジでマジで。服は赤のワンピースな」
「お洒落じゃーん」
「そんで黴餅食べてー、エアコンが稼動するとー、エアコンの風に乗せて黴を部屋中にばら撒くんだー」
「何それ害虫じゃん」
「黴を媒介する妖精なんだよー」

驚いたことは、起床後も友人は己の話した妖精の設定を覚えていて、家主に事細かに説明していたことである。ちなみに、黴餅は捨てるようにと言いつけておいたが守られるかはわからない。


2011年1月17日 (月) 緑茶カウント:2杯
何故往来で己は後頭部の毛髪を掻き分けられているのだろう。傍から見れば猿の蚤取りにしか見えないそれは二人の人物によって行われていて、己は若干肩を丸めながら道の端で立ち尽くしている。

「あんま無い。っつーかわからない」
「これ白くない?」
「ワックスで光ってるだけじゃね?」
「あ、あったよ」
「こっちからは見えない」
「奥の方にある。意外とある」

一人の友人の興味から発した行動によって、己の後頭部の奥の方には意外と白髪が生えているらしいことが判明した。気は済んだか友人よ。それにしても何故唐突に人の白髪を探そうなどと思ったのか。そしてもう一人も何故それに乗ったのか、と思うが、常にこんなものである。己の体の特徴を一つ教えてくれてありがとう。そうか、白髪があるのだなぁ。


2011年1月18日 (火) 緑茶カウント:3杯
ちょっと驚くくらい机の上が汚い。雪崩の上に雪崩が重なり、一つのものを引っ張ると思いがけない連鎖が起こる。もはやこれは机の機能を有していない。ただの壁と天井の無い物置である。正面を向いていたはずの骨格標本のフィギュアがいつの間にか背中を向けていて、その足元ではギターのフィギュアが倒れている。シルバーチャリオッツさんはどこに行ったのだろう。恐ろしい。あぁ恐ろしい。

来月、友人が泊まりに来るその日までには、発掘作業を進めなければならないが。まだ一月あるなと余裕をかまして今日も手を付けられずに日付が変わってしまった。そういえばセロハンテープはどこに埋まっているのだろう。混沌とした机上のどこかで溶けていないことを祈る。


2011年1月19日 (水) 緑茶カウント:3杯
思うこと。あずきのチカラはパンチが足りない。もっとじわっと来てぐうぅ〜っと効いてむはーっとなってほしいのだが、じんわりじんわり温めてくれるだけで、これはこれで気持ちが良いのだが、熱々の蒸しタオルに慣れた己にとってはどうにもこの温さはもどかしい。

もどかしい、とまで書いて、未だあずきのチカラが何なのか説明していないことに気が付いたのでお話しするが、あずきの詰まったアイマスクを温めて目の上に乗せると眼精疲労が緩和される、というような商品である。熱しすぎると「キケン」の文字が浮かび上がるお茶目な奴だ。それにしてもこの程度の温度で「キケン」が表示されるなら、普段の蒸しタオルはどれほどキケンな代物なのだろう。しかしあれはよく効くぜ。気持ちが良いぜ。濡れているからそのまま放置して寝るには困るがな。濡れるからね。だからあずきのチカラを買ったんだがね。だいぶパンチが足りないね。


2011年1月20日 (木) 緑茶カウント:2杯
今は夜中の一時であるが、三時間ほど前から窓の外から笛の音が聴こえている。ぴょーぴょーぴょー、この単調な調べをひたすらひたすら繰り返していて、やや、気味が悪い。気味が悪いので外には妖怪がいるということにした。妖怪の方が安心出来る。人間の方が恐ろしい。

この寒空で笛を吹く、あいつは何かを呼んでいるのだろうか。どうか狙いの対象が己ではありませぬように。


2011年1月21日 (金) 緑茶カウント:2杯
誓います。

今週の土日、廃墟が瓦解したかのような机の上を片付け、日記を整理し、年賀イラストをきちんと収納し、更新報告をすることを。

誓います。

………ついでに布団も二組ほど干したいのだが。これは誓わないでおくか。


2011年1月22日 (土) 緑茶カウント:6杯
………。誓い撤回しても良いっすかね。


2011年1月23日 (日) 緑茶カウント:6杯
一度はやる気を失ったが、廃墟が瓦解したかのような机の上を片付け、日記を整理し、年賀イラストをきちんと収納し、更新報告をする誓いを守ることに成功した。うっかり九月分の日記を上書き保存の失敗によって全消去してしまったときは脱力したが、ネット上にアップされたデータを持ってくることで修復は実現した。しかし面倒くさかった。

こまめに整理しておけばさして労力もかからないはずだが、つい溜めてしまうからよろしくない。これからは、と、言ったところで無駄であるので、せっかく机が片付いたことだ。絵でも描いて遊ぶとしよう。手始めに白湯しか出ない緑茶の茶葉を代えるとしようか。


2011年1月24日 (月) 緑茶カウント:5杯
四十三度の温度の液体をなみなみと湛えた湯船に浸かり、ふうと一息。脱衣場に置いたスピーカーから流れる音楽を聴きながら、ゆうるりと過ごす二十分。半年ほど前から始めたことだが、気付けばあれほど厄介だった肩こりに苦しめられることも無くなった。今は快調この上ない。

ところで全く風呂とは関係の無い話なのだが、眼鏡がずり落ちまくって困っている。鼻あての部分が開いてしまっているらしく、油断をすると鼻の先まで眼鏡がずり落ちて、眼鏡としての機能を放棄してしまうのだ。困る。

困りつつ、そのことを眼鏡屋に勤める友人に話したところ、「じゃあ今度会ったら俺が直してやるよ」と、頼もしい声。何とも有難いことである。有難いことではあるが、声は何十キロ何百キロも離れた土地から電波に変えて飛ばされたもので、そのうえ自称引きこもりの彼、休日に外出したがらない彼と会えるのはいったいいつになるのか。鼻の先の眼鏡を押し上げつつ思う。


2011年1月25日 (火) 緑茶カウント:3杯
やさしいおねえさんの声だった。

幼子に絵本を読み聞かせる若い母親のような、毛布を差し出す客室乗務員のような、病状を尋ねる看護士のような、優しく、穏やかで、慈愛に満ちた声だった。

「何か女の声がしたんだけど」
「え、俺だよ」
「だよな。………だよなぁ!?」
「そんなに女みたいだったぁー?」
「女の中でもかなり女らしい声っつーか、女でもそんな声はなかなか…。他人に指摘されたことないんか」
「あー。お客さんから、低音が聞き取りづらいって言われたことはあるよぉ」
「低音…聞こえないっつーか全部耳に心地よい程度に高いっつーか…。すげぇな…」

外見も中身もれっきとした男性で、普段の声も立派な低音であるというのに、電話を通した途端に「やさしいおねえさん」の声に変貌してしまう友人の特殊性に驚きつつ、君はそれをうまく利用して動画サイトに投稿したら人気者になれるかもしれないよ、とアドバイスして寝た。


2011年1月26日 (水) 緑茶カウント:2杯
気さくで正直者なあなたは実に好ましい。しかし体の自由を奪われて、足にかけられた毛布を握るだけの無防備な姿勢で仰向けに寝そべる己の胸には、不安が渦巻き心許なく、握る毛布を跳ね除けて無理にでも立ち上がり逃げ出した方が良いのかと、頭をよぎってしまうのだ。

「昨日サッカー観ました?」
「PKだけをちょこっと」
「あー、やっぱ観ないよねー。昨日はすごかったんだよー」
「そうだったみたいですねぇ」
「もう興奮しすぎてね。疲れて体動かなくなっちゃった」
「えっ」
「朝まで興奮が続いてねー」
「はぁ…」
「じゃ、上の奥歯ですね、仮詰めとって先週型とったやつ埋めますから。口を大きく開けてくださーい」

二十一時、歯医者にて。本日最後の診療患者である己は、足にかけられた毛布の上で、両手の指を組んで姿勢正しく寝転んでいた。どうか興奮と疲労による誤作動が己の口中で起こりませんように、と願いながら。


2011年1月27日 (木) 緑茶カウント:3杯
一ヶ月前に髪を切りに行き、一ヵ月後にようやく「あ、これこれ」と思う、満足する形になった。

コミュニケーションが足りない。

自覚しつつ通い続けて数ヶ月。さて、ヘアカタログを見せるも見るのは最初の一度だけ、途中途中の確認は為されず、結局は毎度毎度美容師の頭の中で形成された、美容師の好みを真っ直ぐに反映させた頭になってしまう。良い加減己も別場所に移れば良いとは思うのだが、もしかしたら次は上手くコミュニケーションをとれるかもしれない、と思い、これは己に課せられた課題なのだと信じ込み、てくてくと通ってしまうのである。

足りないコミュニケーション。いかにして補足するか。正直なところだいぶ嫌気が差しているのだが、まだやるか。やったるか。はぁ。


2011年1月28日 (金) 緑茶カウント:3杯
何だかんだと言って毎夜愛用しているあずきのチカラ。二百回は繰り返し使えるとのことだが、中の小豆はともかく外側の袋は二百回も使用するまで持つのだろうか。あぁ、せっかくだから回数を記録しておけば良かったなぁ、この緑茶カウントのように。ただ己の興味によって始められた緑茶カウント。特に意味の無い緑茶カウント。今日も緑茶が美味しくて緑茶カウント。もうすぐ茶葉が無くなるから買い足さなければいけない緑茶カウント。緑茶カウント。


2011年1月29日 (土) 緑茶カウント:4杯
疲れきった脳みそにブランデー梅酒が染み渡る。あー、美味い。

今日は歯医者に行き、ゴリゴリと浅く削られ白いものを埋められて、三十分ジョギングをするつもりが道に迷って二時間走り、くたくたになって帰宅して三十分湯船に浸かり、カレーうどんを食べてお茶を飲み、あとはせっせと絵を描いて遊んでいた。疲れた。

疲れたのでこのまま眠ってしまいたいのだが、まだ、何かが足りない。何かパーッと刺激物を取り入れて疲れを昇華してから眠りたい。具体的に言うとライブDVDを観たい。観たいけれど体は疲れているので眠りたい。しかしお脳は満足しない。というようなことをぐだぐだ書き連ね、うだうだしているのが一番よろしくないのについうだうだしてしまうからよろしくない。さっさと観よう。そうしよう。

問題は観たいDVDが二枚あることだが。知ったことか。


2011年1月30日 (日) 緑茶カウント:3杯
運動をして、絵を描いて、料理を作ってしっかり休む。毎週このような土日を過ごせれば理想的だ。特に運動はなるべく土日にしておきたい。体育の時間が無くなった今、意識的に運動をしないことには筋力を保てないのだ。筋力を保てないことは体力を保てないことに繋がるのだ。それは困る。己は二十年後も三十年後も元気に活動したいのだ。

一応寝る前に軽い筋トレとストレッチは毎日続けている。すると体の方はと言うと、まぁ、多少は変わる。多少変わったところで、高校生の頃に比べれば随分鈍ってしまっただろうと思うのだが。と言っても美術部ゆえ、当時もさほど筋力体力があったわけではないのだが。

とりあえず最低限風邪を引きにくい体、でなければ風邪を引いてもすぐに回復出来る体になりたいので、来週は壁のぼりをしてくる。目指せヤモリ。よじよじと上ってくるよ。


2011年1月31日 (月) 緑茶カウント:1杯
外国語だと思って聴いていたものが日本語だったときの衝撃たるや。

本日、カラオケにて思いっきり平沢進とP-MODELを歌ってきた。そこでの衝撃である。そもそもその曲の入っているアルバムはまだ入手しておらず、ライブDVDにあるものを聴いて好きになったので、ライブDVDに歌詞カードがついていないために生じた驚きではあるが、あるのだが。オペラっぽく歌われていて歌詞が明瞭では無かったとはいえ。……螺旋状に夢を降り、裏口を探せと歌っていたのか…。CODE-COSTARICA…。

そしてふと思い出す。そういえば夏に祖父母の家で平沢をスピーカーから流していたら、じーさんに「この歌を歌っている人は何人だい?」と聞かれたのだった。祖父の耳には外国語に聴こえていたらしい。その時かかっていたのはアルバム「点呼する惑星」の中のどれかだったように。

きっと、他にもこういう驚きは眠っているのだろう。未だ気付いてないだけで。出会える時はいつになるかな。




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