未分類0杯, 橘高文彦&本城聡章, 非日常

何度も見かけたことはあるものの話したことはない人と、一緒にテーブルを囲んでご飯を食べるのは何とも不思議なものである。そうして己は違和感を楽しみながら真昼間からビールを傾けたのであった。

場所は埼玉県川口市のライブミュージック&レストランバー「ショックオン」。ここで橘高さんとおいちゃんの弾き語りライブが行われるということで電車にガタゴト揺られて目的の地へ。開場は昼の十二時で、開演は十三時。入ってすぐ右手側にステージがあり、ステージと向かい合うようにテーブルが並べられている縦長の構造だった。ちなみに椅子にまっすぐ座るとちょうどステージに体の側面を向ける形になるので、演奏中は体と首を斜めにする必要がある。でないと見えない。

番号が後ろの方だったので後方のテーブルにつき、食事と飲み物を注文して食べながら開演を待つ。テーブルがあるだけで随分待つのが楽だなぁ、と思った。

そして始まった今回の公演も……最高に楽しかった!

このツアーでとったチケットは三枚だ。前回が一回目、今回が二回目、最後の最後、ツアーファイナルで三回目。だが、二回目を終えまだあと一回残っているにも関わらず抱く欲求と言えば、まだ観たい、もっと観たいというものだった。

オーケンの歌詞をオーケン以外の人物が歌うことにより、歌詞から生じる新たな側面に出会える楽しさ。ニコニコしながら心底楽しそうにお喋りをする橘高さんとおいちゃんの微笑ましさ。聴き慣れた曲がアレンジされる新鮮さに、筋少のライブでもなかなか聴けないレアな曲を聴ける嬉しさ。そして、橘高さんとおいちゃんによるオーケンへのまっすぐなリスペクトとメンバー、バンドへの溢れる愛に、格好良いギターと歌声を間近で聴ける高揚感!

きっと楽しいに違いないとは思っていたが、思っていたが! こんなに楽しいなんて、軽々と期待を超えてくれることがたまらなく嬉しくて仕方がない。

今後に繋がることについて橘高さんもおいちゃんも前向きでいてくれることが嬉しい。このツアーの中でユニット名を決めましょうと初回の阿佐ヶ谷公演で話していて、各地でも様々な案が出てきたそうだ。有力候補としては「たちばなキャッスル」があり、本日はルースターズの伝説的MCから「てん」というユニット名が生まれ、橘高さんとおいちゃんのツボにはまったのかライブ中に散々ネタになっていた。ちなみにこれ、ピリオドを打って「てん」と読む。

曲の入れ替えも多くて嬉しい。今回初めて聴いたのは「トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く」「お散歩ネコちゃん若き二人の恋結ぶ」「サイコキラーズ・ラブ」「指」「愛のためいき」「パノラマ島失敗談」の六曲。中でもたまらなかったのは「お散歩ネコちゃん若き二人の恋結ぶ」と「パノラマ島失敗談」だ。この二つはどちらもおいちゃんのボーカルで、おいちゃんが歌うことにより甘酸っぱさが増していて素晴らしかった。「LIVE HOUSE」に見られるような、ちょっぴり照れてしまいそうな青春の甘酸っぱさをニコニコと正面から歌い上げるおいちゃんのボーカル。そのスタイルがガツンとはまっていて、妙な言い方だが筋少の曲ではないような、まるで街角で流れるお洒落なポップスのように感じられるのだ。そのうえでバラバラ死体なんて言葉が出てくるギャップがまた、良い。

もともと男性ボーカルによる女性一人称曲が大好きで、故に「パノラマ島失敗談」は好みのど真ん中なのだが……おいちゃんのボーカル、すごく良かったなぁ……。

「サイコキラーズ・ラブ」ではマイクから口を遠ざけ、ぐっと噛み締めるように地声で歌うシーンも。サビの部分ではおいちゃんと橘高さんの声が重なり、おいちゃんが低いパートを歌っていてそのハーモニーが実に美しかった。

橘高さんが歌うオーケンの歌詞も絶妙だ。「トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く」「レティクル座の花園」「愛のためいき」が特に好きだ。中でも「レティクル座の花園」「愛のためいき」ではコーラスパートがオーディエンスに委ねられ、知らない人々と声を揃えて桃子の悲しさを歌うのはしんみりと心地良かった。

トリフィドの後に聞いた意外な話も面白かった。歌詞に書かれないコーラス部分で何を歌うかはメンバーが決めているそうで、オーケンは作っていないそうなのだ。「大槻さんに頼んでも作ってくれないんだよね~」と話し、うんうん頷く二人が微笑ましい。同時に納得した。なるほど、いつかの筋少ライブで再殺部隊か何かの曲のコーラスが話題になったとき、オーケンが「そんなこと言ってたんだ、知らなかった!」というようなことを話していて、いやいやあなたが作った歌詞じゃあないですか、とその当時は思ったものだが、作ってなかったのか。合点がいった。

故に、トリフィドの「トリフィド! トリフィド! 流星! トリフィズ!」も、橘高さん曰く「まずトリフィドが来て、トリフィドが来て、流星があって、もう一体トリフィドが来るから複数形でトリフィズ!」とのことで、続々とトリフィドが襲来する様子を身振り手振りで表してくれて面白かった。

ここ以外でも何度もオーケンの話題が出て、随所にオーケンへのリスペクトが感じられて非常に嬉しかった。オーケンがギターの練習を始めたとき、当初橘高さんは一時的なものだろうと思ったそうだ。ところがしっかり続いて弾き語りツアーまで始め、そんな新しいことにチャレンジする姿勢に感銘を受けたらしい。また、少しずつ練習を積み重ねるオーケンを見て、かつてギターの練習を始めたばかりの自分を思い出し、今その過程を踏んでいることを羨ましく思ったそうだ。そこで、オーケンがギターを始めるなら、自分達はボーカルを頑張ってみようとチャレンジしたとのことである。

おいちゃんはオーケンのためにたくさんのタブ譜を書いたそうで、「Future!」の制作中にも「この曲を弾きたい」とリクエストされて「Future!」の曲のタブ譜を作ったそうだ。タブ譜も最初の頃は簡単に弾けるものだったが、最近は難しい要素も取り入れて作っているという。ニコニコしながらオーケンについて話す二人を見ていると、いやーなんかもう嬉しくなってしまうね。

後方の席だったためギターを奏でる手元が見えづらかったことは残念だったものの、相変わらず「ゾロ目」は圧巻の迫力で凄まじかった。これは……アコースティックギターでやる曲なのだろうか……? 

最後の「アデイインザライフ」ではパッと青空が開けるような開放感の中、気持ちよくライブは終了。そして……嬉しかったこと! 何と最後、演奏が終わってから橘高さんとおいちゃんがステージを下りて後方まで歩いて来てくれたのだ! 手に触れることこそできなかったものの、間近まで来てくれて嬉しかったなぁ……! ドキドキしてしまったよ!

次回参戦するのはツアーファイナル。終わってしまうのは寂しいがきっとまたその先があると信じて最終日の開催を待とう。楽しみだ!!



航海の日
機械(おいちゃんボーカル)
トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く(ふーみんボーカル)
ドナドナ(おいちゃんボーカル)
レディクル座の花園(ふーみんボーカル)
奇術師
Cheap Trickのカバーで「Surrender」

~ふーみん退場でおいちゃんソロコーナーへ~
お散歩ネコちゃん若き二人の恋結ぶ
サイコキラーズ・ラブ

~おいちゃん退場でふーみんソロコーナーへ

愛のためいき

~ステージに二人が戻る~
青ヒゲの兄弟の店
パノラマ島失敗談
蓮華畑(メンバーの曲を歌ってみよう)
世界中のラブソングが君を
ゾロ目
LIVE HOUSE
アデイインザライフ



180421_1138



未分類橘高文彦&本城聡章, 非日常

まだ名前のないおいちゃんと橘高さんによるアコースティック・ユニット。筋肉少女帯のデビュー三十周年を記念してか、突如開催が決定されたこのツアー。まさかこんな特別な催しをやってくれるとは夢にも思わず、喜び勇んでチケットの申込みをし、期待で胸をいっぱいにして阿佐ヶ谷ロフトに訪れた。

家を出る直前まで習慣の常備菜作りに奔走し、気付けば味見以外で腹に入れたものは何一つないまま電車に乗ってしまって、目的地に着いてから近くのパン屋で腹ごしらえをした。整理番号は四十番台で、まあまあの数字。わくわくしながら開場を待ち、中に入れば四列目に座ることができた。ステージは高く、視界良好。ステージの奥と袖にはズラリとギターが並べられていて、あぁ、ギタリストのライブなんだなぁと実感してニコニコしてしまう。

そうして始まったライブといえば、カロリー消費過多のエネルギー溢れるライブだった。それはもう、アコースティックというライブを勘違いしてしまいそうになるほどに。

そもそも自分がよく行くアコースティックライブが水戸さんの100曲ライブで、これがもう飛んで跳ねてシャウトして、汗だくになりながら歌うエネルギー消費の激しいライブ。そして今日観たそれはメタルアコースティックというか、アコースティックメタルというか。えっゾロ目ってアコースティックでやる曲か……? と激しくかき鳴らされる手元と歌唱に魅せられながら驚愕したのであった。そろそろ本当に、アコースティックライブを誤解しそうである。

名前のないユニットは今日がデビューライブということで、このツアーを通して名前が決まって、今後も続けていけたらという話もあった。もともと橘高さんのドリームキャッスルというイベントにおいちゃんをお招きしていて、その中の一コーナーでアコースティックライブもやっていて、それをメインにしてみても良いのでは、という思いつきが発端だった模様である。そしてその思いつきが生じたことに、己は深く深く感謝したのであった。

思ったこと。おいちゃんはテンプテーションの使い手なのかい……?

まず「航海の日」のインストゥルメンタルで始まり、基本的においちゃんと橘高さんが交代交代で歌っていく形式で、最初に歌われたのが「機械」。このとき、おいちゃんの囁くような歌声に魅せられながら、機械ってこんな曲だったっけか……? と驚きも感じた。

全体を通して見るとおいちゃんの曲はアコースティックで演奏するにあたりアレンジが利いていて、筋少を何度も何度も聴き続けた身でも、イントロだけでは何の曲か掴めず、歌声と共に聴いてもまるで別の曲のように捉えられることがあった。オーケン以外の人物がオーケンの歌詞を歌う不思議さと、オーケンの声ではないからこそ、改めて感じさせられる歌詞の美しさ。今まで隠れていた筋少の別の側面を見せられたような気がした。

それは独特なボーカルから離れると、もしかしてこれは、合唱曲にもなるんじゃないかと思うような。

「キーが高いから大変なんだ」と前置きの後に橘高さんの歌声によって歌われた「レティクル座の花園」では、「モルヒネの麻酔の幻さ」の箇所をオーディエンスが合唱した。客層は女性が多く、故に透き通った声が幾重にも重なり、それはかつて学生時代の音楽の時間を彷彿とさせながらも歌われるのは痛ましい歌詞。しかし、綺麗だなぁ、美しいなぁ……と声を重ねながら思った。同時に、こうして知らない人々と大好きな筋少の曲を共に歌えることに幸せを感じた。

ソロコーナーではおいちゃんによる「ザジ、あんまり殺しちゃだめだよ」が披露され、あまりの美しさに心臓が握りつぶされる思いがした。今日は筋少のライブではなかなか聴けない曲も多く演奏され、それだけでも嬉しかったが……このザジの美しさは一際素晴らしかった。

おいちゃんは歌いだしのとき、マイクから離れていることが多く、故に頭の歌詞がマイクに乗らないこともあったのだが、その強弱も良いと思わされた。

あとさぁ、当たり前っちゃ当たり前なんだが、ギタリストのユニットなんだから当たり前なんだが、ギターが素晴らしいんだよなぁ……!!

ギターってこんなにいろんな音が鳴るんだな、と改めて思い知らされる。この音がこの二人の指先によって奏でられていると思うと感嘆せざるを得ない。期待していたが、期待していたが、期待の百倍楽しかった。

オーケンがギターを勉強して弾き語りを行い、それから楽器演奏の大変さを知ったと言う。故に今回おいちゃんと橘高さんはボーカルの大変さを体感しようという試みとのことで、咽喉を温存するためMCは控えめにしたい……ようだったが、流れるような爆笑トークで笑わせてくれた。このサービス精神がありがたい。

前半は各自の作曲した曲を責任を持って歌っていたが、他のメンバーの曲も歌いましょうということで内田さん作曲の「蓮華畑」が披露された。

「3歳の花嫁」は当初、オーケン以外のメンバーが歌う曲があっても良いのでは、というオーケンの発想から作られ、キーもメンバーが歌うことを想定して作られたが、詩ができたところで「やっぱり僕が歌う」とオーケンが言い出し、今の形に作り直しになったと言う。そんなエピソードがあったんだなぁ。

「ゾロ目」の迫力に圧倒されつつ、最後は「アデイインザライフ」で多幸感に包まれながら終わりを迎えた。しかし、まだツアーは続く。今日披露した楽曲の二倍の数をおいちゃんと橘高さんは練習したそうで、故に各会場では楽曲の入れ替わりもあるだろうとのこと。わぁ、嬉しいなぁ! と思いつつ、あの曲をまた聴けたら良いなぁと願いつつ。この新たな活動のスタートに喜びを抱くのであった。

こちらはセットリストだが、楽しくて記憶がぐちゃぐちゃになっているので間違っている可能性が高い。こんな曲をやったんだなぁ、と参考程度に見て欲しい。ご容赦を。

航海の日
機械(おいちゃんボーカル)
僕の歌を総て君にやる(ふーみんボーカル)
ドナドナ(おいちゃんボーカル)
レティクル座の花園(ふーみんボーカル)
奇術師

KISSのカバー
~ふーみん退場でおいちゃんソロコーナーへ~
ザジ、あんまり殺しちゃだめだよ
生きてあげようかな

~おいちゃん退場でふーみんソロコーナーへ
傀儡のワルツ
リテイク

青ヒゲの兄弟の店
蓮華畑
世界中のラブソングが君を
3歳の花嫁
LIVE HOUSE
ゾロ目
アデイインザライフ



180408