2017年7月13日(木) 緑茶カウント:0杯

四十年ぶりに描かれた「ポーの一族」を傍らに置き、めくるページは角が丸くなった文庫本。四十年前に発表され、何度も読み返したそれをパラパラとめくりながら、時にじっくりと物語に耽り、思い出を反芻して世界に浸る。「わたしのことなぞ忘れたろうね」「覚えているよ 魔法使い」のやりとりは何度見てもこみ上げるものがある。

まさか新作が出ようとは夢にも思わなかった作品の新たなページに、物語。しかし買ったもののページを開かず、つい書棚に手を伸ばしてしまったのは、読みたい気持ちと半々に混ざるものの由縁だろうか。「ポーの一族」を教えてくれた人は新作の発表を知らずにこの世を去った。読むことで生まれる死者との相違が怖いのか、寂しいのか。死者の時間が進まないことを認識させられるのが悲しいのか。それとも、四十年を越えて動き出す物語の行く末が不安なのか。

時が止まった少年達の物語。描く筆致には四十年の歳月が滲み、表紙には流れる時と流れない時が同じように横たわっている。

もう少し経てば開けるだろう。それまではしばらく、このままで。



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