立ち止まる人々

2016年7月20日(水) 緑茶カウント:4杯

遠目に見える人影は微動だにせず、パラパラと横一列に並んでいる。四人の人影は動かない。歩を進めるにつれ人影はだんだん大きくなり、一人二人と数を増やすが動かない。誰一人として動かない。

この光景を眺めるたびに己はいつも不思議に思う。何故だ。初めてこの道を通る人ならいざ知らず、何故毎日通っているであろう人々がいつもここで待ち続けるのか。立ち止まる人影はスマートフォンを見つめていたり、傍らの人とお喋りしていたり、ぼーっと中空を眺めていたりと思い思いの姿でそこにいるが、彼らの横まで来た己が、すぐそばにある押しボタンに指をつくや否や、弾かれたようにわらわらと動き出す。何故だ。

何故この人達は毎日この道を利用しているだろうに、押しボタン式の信号機の前で延々と信号を待ち続けるのか。ちなみにこの信号機は押しボタンさえ押せば三秒後には信号が青に変わるが、押しボタンを押さない限り永遠に赤のままである。待てども待てども信号が青になる日など来やしないのに、押しボタンは目につく場所に設置されているというのに、誰も押しボタンを押さずただひたすらその場に佇んでいるのである。夜中の十時や十一時に。延々と。

もしや己が知らないだけでこの押しボタンには何かしらのいわくでもついているのだろうか。そんなことがあるはずもなく。今日も己は道の先に滞留する人影を眺めるのである。



日記録4杯, 日常